『レッドドラゴン』
可能性の最果てに、
レビュアー:ユキムラ
大型連休を費やして、『死神と少女』という乙女ゲームをプレイした。
幻想に包まれ 甘い隠し味を盛大にまぶされた、少女と死神たちの美しくも儚い物語だった。
特に、【兄】である遠野十夜のさいご――【黒の章】における死神の死に、私はこの上無く嘆き悲しんだ。
それは、私が【兄】という存在に特別な感情を抱いているからなのかもしれない。
かつて存在したとされる、私の兄。
その命と触れ合った記憶も記録も事実でさえも、私には残されていないけれど。
それでも私は【兄】という存在に心惹かれ、同時に、この上無く憬れた。
『死神と少女』における【兄】は――その祈りの死と終末は、まさしく、私の心を打ったのだ。
自らが選択したことで辿り着いた物語の果て。それは、小説とは少し違った味と雰囲気を醸し出している。
――嗚呼、そうだ。
私は物語を読むように、ゲームをするのが好きなのだ。
私は物語を読むような、ゲームが好きなのだ。
だから本当は、『レッドドラゴン』の更新がつらい。
物語が進むごとに、読むことのできない物語が上積みされてゆく。
この、赤き竜を廻る狂騒の物語は、私の手元には無いゲームだから。
過去をめくり戻って、やり直すことは赦されない。
そのことが、どうしようもなく つらいのだ。切ないのだ。
私の知らない物語。知らずに通り過ぎてしまった物語たち。
それは阿ギトの死亡シナリオだったり、ハイガでの戦争だったりする。
私もプレイしたいとは言わない。ただ、通り過ぎていった可能性を拾っていきたいだけなのだ。
もしこうなっていた場合、プレーヤー達はどう動いたのか… そんなifを集めてゆきたいだけなのだ。
ああ、分かっているさ 分かってる。
そんな願いもまた我侭だと。
これはTRPGという形式。私の望みは叶えられぬ定めの、高望みに過ぎない。
それでも――
読みたかった。読んでみたかったのだ。
あらゆる可能性たちに目を向けたとき、私はTRPGという形式がこの上無く憎たらしくなる。
だが、その想いの重さに比例して、『レッドドラゴン』が愛しいのだ。
最前線で『レッドドラゴン』を読む
幻想に包まれ 甘い隠し味を盛大にまぶされた、少女と死神たちの美しくも儚い物語だった。
特に、【兄】である遠野十夜のさいご――【黒の章】における死神の死に、私はこの上無く嘆き悲しんだ。
それは、私が【兄】という存在に特別な感情を抱いているからなのかもしれない。
かつて存在したとされる、私の兄。
その命と触れ合った記憶も記録も事実でさえも、私には残されていないけれど。
それでも私は【兄】という存在に心惹かれ、同時に、この上無く憬れた。
『死神と少女』における【兄】は――その祈りの死と終末は、まさしく、私の心を打ったのだ。
自らが選択したことで辿り着いた物語の果て。それは、小説とは少し違った味と雰囲気を醸し出している。
――嗚呼、そうだ。
私は物語を読むように、ゲームをするのが好きなのだ。
私は物語を読むような、ゲームが好きなのだ。
だから本当は、『レッドドラゴン』の更新がつらい。
物語が進むごとに、読むことのできない物語が上積みされてゆく。
この、赤き竜を廻る狂騒の物語は、私の手元には無いゲームだから。
過去をめくり戻って、やり直すことは赦されない。
そのことが、どうしようもなく つらいのだ。切ないのだ。
私の知らない物語。知らずに通り過ぎてしまった物語たち。
それは阿ギトの死亡シナリオだったり、ハイガでの戦争だったりする。
私もプレイしたいとは言わない。ただ、通り過ぎていった可能性を拾っていきたいだけなのだ。
もしこうなっていた場合、プレーヤー達はどう動いたのか… そんなifを集めてゆきたいだけなのだ。
ああ、分かっているさ 分かってる。
そんな願いもまた我侭だと。
これはTRPGという形式。私の望みは叶えられぬ定めの、高望みに過ぎない。
それでも――
読みたかった。読んでみたかったのだ。
あらゆる可能性たちに目を向けたとき、私はTRPGという形式がこの上無く憎たらしくなる。
だが、その想いの重さに比例して、『レッドドラゴン』が愛しいのだ。
最前線で『レッドドラゴン』を読む