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読者レビュー

銅

ミリオンセラータイトルズ

心ひかれるにつれて、僕はやるせない

レビュアー:横浜県 Adept

これはひどいコーナーだ!
「ミリオンセラータイトルズ」
星海社新書の編集長である柿内さんが、思いついた新書のタイトルを毎日更新するコーナーである。
色んなタイトルが並んでいて、その種類も様々だ。いくつか紹介しよう。

まずは共感したくなるタイトル。
「それ分かる分かる!」と思わず身を乗り出してしまうようなものだ。
たとえば『寝てない自慢』
柿内さんは「SO WHAT? という感じ。あなたの努力なんて知ったこっちゃないですよ」とつけたしている。
どこに行っても「昨日ぜんぜん寝てないわー」と頼んでもいない報告をしたがる人はいるわけで。柿内さんみたいに「SO WHAT? (それがどうしたっていうんだい?)」と訊いてみたくなる。なぜそんな自慢をしたがるのか。
このように「それ分かる分かる!」でも「どうして?」という、日常で出会う疑問にクローズアップしてくれるのだ。

次に新しい視点を与えてくれるタイトル。
「え? そうなの?」と今まで思いもしなかった切り口にみえるものだ。
たとえば『編集者は自分でつくった本を実践できない』なんて言われたら、「そんなぁ」と失望したくなる。『哲学を知ってはいけない』と忠告されたあかつきには、「なんでやねん!」とツッコミを入れたくなる。(そんな僕は大学で哲学がしたいのであるからして……)
このように「え? そうなの?」それは「どうして?」という、今まで自分の中にはなかった疑問を生んでくれるのだ。

3つ目に僕らの欲求を満たしてくれそうなタイトル。
「どうすればいいの?」と縋りつきたくなるようなものだ。
たとえば僕は、苦手な『子供とうまく話したい!』と思っているし、上手なスケジュール管理をするために、『手帳に予定を入れる技術』を身につけたいと思っている。
このように「どうすればいいの?」自分にそんな技術がないのは「どうして?」とご教授ねがいたくなるのだ。

いま僕は3つの例を上げたけれど、もちろん他にも分類の仕方はあると思うし、どれにも当てはまらないタイトルだってある。
ただ確かなことが1つだけある。全てが新書の敏腕編集者である柿内さん渾身のタイトルということだ。
どのタイトルにも、色んな好奇心をそそられてしまう。
柿内さんの新書タイトルにおけるあらゆるノウハウを、僕たちはそこに見てとることができるのだ。
「タイトルには1億円の価値がある」とおっしゃるだけのことはある。参りました。

だからこそ僕は、1行目で述べた通り「これはひどいコーナーだ!」と思う。
だって僕らの好奇心をこれだけ煽っておいて、いくつもの「どうして?」を作り出しておいて、そこにはあるのはタイトルだけ、本文はないのだから!
湧き上がった知的欲求を鎮めるべくもあらず!
まぁコーナー概要には、一応「マジ企画」のタイトルもあると書いてありますけれど。早くこのコーナーから新書が誕生することを祈っています。
そんな文句を垂れながら、僕は今日もまた1つ、また1つと好奇心をかきたてられるのだ。
なんてこったい!

ジセダイで『ミリオンセラータイトルズ』を読む

2012.05.18

のぞみ
本当に、なんてこったいですわね! むしろ、柿内さんに本文を書いてもらうのがいいのではないでしょうか!
さやわか
柿内さんのタイトルの付け方を三つに分類したのは面白いですな! 発想としてうまいと思います。ただ、だからこそ惜しいのは「新書タイトルにおけるあらゆるノウハウを、僕たちはそこに見てとることができる」という部分です。ここで「そこ」が指しているのは「タイトル」だと思いますが、そうすると「タイトルを読むだけで柿内さんのノウハウがわかる」と言っていることになる。それは理屈としてはちょっと具体性に乏しく、曖昧かなと思います。たぶんこの文章は、前半の三分類こそが「タイトルの付け方のノウハウ」だと言いたかったのではないかと思います。でも文章の順序が少し混乱してしまって、そういうふうに読めない内容になっている。ちょっと残念でした。ということで「銅」にしましょう!

本文はここまでです。