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読者レビュー

銅

エトランゼのすべて

大学一年生という春夏秋冬

レビュアー:keypad Novice

あたりを見回すと新入生を勧誘する部活やサークルの人々であふれ、新入生に一年前の自分を投影しつつ、今一度『エトランゼのすべて』を思い返した。

大学生になって初めての一人暮らし、初めての友人、初めての先輩、初めての後輩、初めてのバイト。そして初めてのサークル。自分の一年間を主人公針塚圭介と重ね合わせ、はるか昔のことのように思い出していた。自分やこの主人公に限らず、誰しも初めてのことに対して期待と同じくらい不安も大きいだろう。一人ぼっちにならないだろうか、浮かないだろうか、うまくデビューできるだろうか、「エトランゼ」にならないだろうか。

主人公がぎりぎりで駆け込んだ京都観察会。そこで出会った個性的な先輩方。同時に入った中道さん。ほかにもバイト先のドルさんをはじめとする人たち。うまく大学生活をスタートできた主人公に対し、会長の大学生活は失敗に終わってしまった。慣れない環境の中で一人ぼっち。結果、傘を盗られたとき、雨の中濡れながら帰ることになっても声をかけてくれる人のいない寂しさ。自分の大学生活を思っても、大学という場所は、勉強やサークル以上に人との関わりが大きな比重を占めるところだと感じた。

誰にとっても新しい環境なのが大学生活である。親友ができた人はもちろん、うまくスタートできなかった人は積極的に声をかけていけばいいと思う。みんながみんな多少なりとも不安を抱えているのである。そこから始まるのが人と人とのつながりであり、本当のキャンパスライフだろう。桜咲く中、勧誘のビラを片手にそう思った一日だ。

2012.05.18

のぞみ
自分の大学生活を重ねて振り返るっていいですわね~。
さやわか
うむ。自身のことに関連させながら書くのはレビューとしてはとても効果的なやり方だと思います。なぜかというと、未読の読者にとっては作品の内容ばかり語られるよりも理解しやすくなるからですな。結論としてこのレビューは作品についてよりも大学をめぐる自分の実感で筆を置いているのですが、それはそれでいいと思います。きれいな終わり方だと思います。ただ、もう少しだけその実生活と作品への思いが交錯するところがあればよかったかなと思います。レビューの書き手が作品から何を感じて、それが現在の実感にどう影響しているかを出すといい。「自分の大学生活を思っても、」という部分で作品と実生活を対比しようとしているのは注意して読むとわかるのですが、ここをもう少し強く書くのがいいと思います。そうすると、作品と実生活がうまく絡んだ、もっといいレビューになるでしょうね。ということで「銅」にしました!

本文はここまでです。