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読者レビュー

銅

睦月影郎『欲情の文法』

官能小説というファンタジー

レビュアー:ユキムラ Adept

 生理という存在の一時否定――

 睦月氏が掲げる原則に、「うん なるほど」って思った。確かに、小説における濡れ場の多くが当てはまる。あまりにも不条理で一方的な行為の濡れ場を除けば、該当はほとんどだろう。

 ところで。
 とあるゲームの主人公。こやつ、痴漢である。官能小説でこそないものの、この痴漢主人公もまた、睦月氏の信念に合致した世界の下、生きている。
 痴漢相手の双子の片割れが男の娘だった!ってコトはあっても、痴漢相手が生理中なことはない。
「オイオイ、確率論で考えてみろよ…」なんてツッコミはナンセンスだ。
 それもこれも、ひいては官能を愉しむためのファンタジー性なのだから。

 媒体がゲームだとしても小説だとしても、根っこは同じ。
 物語の形を整える上で、余計な現実など拭い去ったファンタジー。それは確かに、現実性には乏しいのかもしれない。
 でもでもそれでも、やっぱり心惹かれちゃう!

ジセダイで『欲情の文法』を読む

2012.04.23

のぞみ
睦月先生のエロへの姿勢は本当に素敵ですわね!
さやわか
官能小説のファンタジーを積極的に肯定するレビュー、ということになるでしょう。しかし、全体的に少し説明不足気味になっているように思いました。たとえば「生理という存在の一時否定」という言い方では、「官能小説には生理の女性が描かれない」という意味だと、実際にこの本を読んでいない読者には伝わりにくいように思います。また、唐突に登場する「とあるゲームの主人公。」などの書き方も、いきなり小説のように登場人物が現れてしまう感じを避けて、「以前やったことのあるあるゲームでは、こういう事例があった」みたいに、書き手が主であるような書き方をしてあげたほうがいいように思いました。官能小説のファンタジーを楽しもうとする意気は伝わるので、短くてもいいので読みやすさを心がけてみるともっとずっとよくなると思いますぞ! 今回は「銅」でいきましょうか!

本文はここまでです。