ここから本文です。

読者レビュー

銅

竹画廊

竹というよりむしろ松

レビュアー:よ・よ・よ Initiate

ガキの頃、お絵かきチャットが流行ってた。
俺は絵が上手くないから邪魔してばっかだった。人が描いたものを消して、消して、消して。

就活に嫌気がさして、星海社のHPを眺めていると、竹画廊のページを見つける。
戯言シリーズで出会って以来、竹氏の絵は何度も見てきたつもりだった。
ここで世界で一番クールな探偵、シャーロックホームズの言葉を引用したい。助手であるワトソンに向かって一言、「きみは見ているだけで、観察していないんだ」。その通りだよ、ホームズ。俺は竹氏の絵を見ているだけで、全然観察していなかったようだ。
竹氏の絵を改めて観察すると、その絵の水々しさに驚いた。平面から水が滴り落ちてくるんじゃないかと思うぐらい潤っている。
AIの技術がいくら進んでも、AIには書くことの出来ないであろう絶妙な曲線が独特の色で塗られている。少なくとも俺には世界はこんな風に見えないし、おそらく誰にも見えないだろう。これが竹氏の世界なのだ。

その後、興味を持って竹氏について調べてみると、かつてお絵かきチャットで遊んでいたという。もしかしたら俺ともインターネットを介して同じ場所にいたのかもしれない、そう思うと少しだけ顔がほころんだ。

最前線で『星海社竹画廊』を見る

2012.04.23

のぞみ
自分の好きな人と、自分が少し交わっていたのかもって思うと、ほっこりしますわよね!
さやわか
しかしもうちょっと文章としてのインパクトを出すなら、やっぱり「俺は絵が上手くないから邪魔してばっかだった」「戯言シリーズで出会って以来、竹氏の絵は何度も見てきたつもりだった」「もしかしたら俺ともインターネットを介して同じ場所にいたのかもしれない」という三つの箇所で作られる落差を大きくしてあげるべきだと思います。つまり「邪魔してばっかだった」というちょっとショッキングな告白から始まって、その疎外感がのちのちの今となって救われる、という構成はなかなかいいのでそこを強めてあげると読み味が上がると思います。何度も見たことのある絵を描いている人が、実は自分と同じ場所にいたかもしれない、そのことの驚きとか感動を、なるべく強調して書くといい感じになるといいのではないですかね。ほか、シャーロックホームズの台詞を出すタイミングはわりと格好がつけられています。「みずみずしい」というのをそのまま水の比喩で語るのも何となく面白い。「銅」にさせていただきました!

本文はここまでです。