ここから本文です。

読者レビュー

銅

マージナル・オペレーション01

リセット/コンティニュー

レビュアー:牛島 Adept

 たとえば「人生はゲームじゃない」「リセットボタンは現実には存在しない」なんて言説はコンピューターゲームにのめりこむ子どもに対して親や教師が繰り返す説教の定型ですが、さて、本当に人生にリセットボタンはないのでしょうか?

 物語の主人公であるアラタは「三〇歳・ニート」という一見ゲームオーバーの状態から民間軍事企業に再就職するという「リセットボタン」を押しました。彼が物語の最後に子どもたちに示した希望も、いわゆるひとつのリセットボタンです。マージナル・オペレーションは、そうしたリセットの肯定の物語でもあるのです。

 人生にはリセットボタンがある。一からやり直す覚悟さえあればなんだってできる。三〇歳はまだやり直せる時期である――そうした思想が物語の根底に流れているようにさえ感じられます。

 リセットしたその先――それは物語に委ねられています。アラタたちはこれからどのようなコンティニューを生きていくのか。きっとこの物語はあなたを満足させてくれるでしょう。

最前線で『マージナル・オペレーション』を読む

2012.04.02

のぞみ
人生のリセットボタン。深いですわ!
さやわか
うーむ! すっきりとして、しかも何かいいことを言っている。よいレビューだと思います! ただ、「そうした思想が物語の根底に流れているようにさえ感じられます」という部分は「さえ」という副助詞によって事実を曖昧にするレトリックが試みられているだけあって、いくぶん飛躍のきらいがあるかなと思いました。ただし作品が本当にそうした思想に基づいて書かれていなくてもかまいません。「そうした思想が物語の根底に流れている」ということを読者に半ば信じさせることができれば、レビューとしては十分です。したがってこのレビューにはあと、それを信じさせるための論理性、論拠をもう少し足してやればいいと思いました。ともあれ「銅」ということにいたしましょう!

本文はここまでです。