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読者レビュー

銅

レッドドラゴン

世界を創造する数多の冒険者たち

レビュアー:またれよ Novice

「うわあああ、音楽鳴ってる……なんか映画っぽい……!」

『レッドドラゴン』のプレイヤーの一人はそう言った。
そこに鳴る音楽。それがプレイヤーを、読者を物語の中へ誘う。新しい未知の世界へと旅立たせる。

映画の開幕、無音から音が鳴り出す時のあの静かな興奮。あるいは新作RPGを初める時。オープニングの音楽から、これから始まる冒険へ想いを馳せるあの高揚感。

音楽が鳴る瞬間に現実は背後に退き、眼前に立ち現れるのはまだ見ぬ世界。そこでは作家たちが物語を紡いでいる。選択の先、決断の末に物語が生み出されていく。読者はそれを追っていく。その先に何が起こるのかを想像する。あるいは選ばれなかった世界を夢見る。

例えば、ただぼんやりとその世界に鳴る音楽を聴いているだけでもいい。目の前にある文字はプレイヤーたちが辿った軌跡である。描かれた物語である。しかしその時、他の場所で他の人物は何をしていたのだろう。あの山の向こうには何があるのだろう。この事件の過去には何があったのだろう。くり返し流れ続ける音楽に身を包まれながら、物語を進めることををすこしばかり止めて、想像の世界に浸る。そんなこともできるかもしれない。

物語を繰り広げ、創造していくプレイヤー。その刺激にあてられて、読む方も何かを創りたくなるのかもしれない。それが読者に様々な想像を許すのか。無数の、あったかもしれない世界。これからありうるかもしれない世界。
音楽が鳴っていることに感動したプレイヤー。音楽が鳴りだしたことに惹きこまれた読者。どちらも同じ事を思う、同じ冒険者であるようだ。

この先にどんな世界が広がっているのだろうか。どんな世界に広げることが出来るだろうか。読むことで、世界は創られていく。

2012.02.18

のぞみ
音が鳴っていたり、気になる作家さんたちばかりで、期待度も高いですわよね! そして、作り込まれた世界は、現実にあるみたいで……って、私も興奮してきてしまいましたわ!
さやわか
「音楽が鳴った」ということに対する驚きがプレイヤーと読者で重なることによって、双方が冒険者として物語世界に参加しているという見方はすごいですね。つまり、この作品には「プレイヤー」という、読者でも作者でも登場人物でもない者が紛れ込んでいる。この見方は面白いと思います。だから個人的にはそこはもうちょっと膨らませてあってもよかったかなと思いました。全体としてその話題のレビューにはなってるのですが、前半の「音楽が鳴る」ということへの説明じたいがちょっと重視されていますな。なので、今回は「銅」としたい!

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