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読者レビュー

銀

Fate/Zero

頑張りすぎる娘さんを見守る近所のおじさんの気分

レビュアー:またれよ Novice

西洋風の鎧を身にまとい剣を振るう少女、セイバー。
現代に召喚された伝説の英霊。
なるほどつまりジャンヌ・ダルクか。
と思ったら違った。違う英霊さんだった。

ジル・ド・レェという英霊が召喚される。かつてジャンヌ・ダルクと共に戦い救国の英雄となった貴族。こやつもセイバーのことをジャンヌだと間違える。やあ同志よ。最初見たらそう思うよね。

そうではないとわかってはいてもセイバー=ジャンヌ・ダルクという最初の思い込みが頭を離れない。生真面目で騎士道に誇りを持ち故国のために身を捧げる孤高の王、セイバー。理想に忠実たらんとする姿は人間味が薄い。と言って全くないわけでもない。少女は苦悩もする。
どうもその姿に悲劇的な結末を思い描いてしまう。フランス軍を勝利に導いた英雄ジャンヌ・ダルク。信仰に生き、どこか人間離れした少女。しかし彼女は最後には人々に見放され火刑に処せられる。
セイバーとジャンヌを重ねてしまう。その未来も、その最期も同じようになってしまうのではないかと。見ていて危うい感じがする子だ。

ジル・ド・レェはセイバーのことをジャンヌだとずっと勘違いしたままだった。本物か否かは関係なく、彼によって盲目的に象徴的に崇拝されていたこともセイバーの危うさを表していたように思える。
彼女はシンボルなのか人間なのか。どっちにもなりきれないものだから見ていてはらはらする。
「お嬢ちゃん、まあちょいと肩の力を抜きなさいよ」と言ってあげたいところながら、そう言って
しまうのも無責任であんまり彼女に失礼なので黙っている。なんにもできないのだけど、どうもこの子は見守っていてあげないといけない気がするのだ。どうだろうか。

2012.01.17

のぞみ
またれよさんのレビューを読んで、セイバーがジャンヌダルクのように見えてきましたわ!
さやわか
この文章、うまいですなあ。セイバーをジャンヌだと最初に勘違いしたわけですけど、それを利用して、その考えを押し通すことでセイバー像に新たな視点を提供する。いいと思います。「銀」にしましょうか。しかしまとまっているだけに、これ以上どうのばすかというのはアドバイスしあぐねるところもあります。そうですなー。これは筆者の読み、筆者の気持ちを書いたものとしてかなり質が高いのですが、レビューとして書くのであれば未読の人を作品に向かわせる力を持たせてみるのはどうでしょうか。今の状態は、レビューというより、あるいは書評というより、エッセイとかコラム的であると思います。それが悪いわけではないのですが、いかがでしょう。

本文はここまでです。