ブレイク君コア
仕掛けよりも描写を
レビュアー:koji
真っ白のパレットに原色の絵具をバケツでぶちまけたような作品。衝撃だけはあるけれど人物の様子もクリアに見えてこなければ、場面場面の絵も鮮明に浮かび上がってこない。
あらすじそのものはとても上手く出来ているようには感じた。
冒頭、主人公は自分の自転車をボコボコに蹴っ飛ばす風変わりのヒロインと出会う。次第に仲良くなり恋愛に向かうのかなと思いきや、事故により展開がサスペンスホラーに一転していく。そして、また新たなヒロインが現れて三角関係の恋愛が見え始めて……。
「プロットポイント」、「ミッドポイント」、「プロットポイント2」を上手に満たした展開は惹き付けられるものがあった。
だけど、どうしても登場人物たちの顔が浮かんでこなかった。
「この子たちと同じクラスだったら自分とはどんな関係だっただろうか?」
そういうのが上手く想像できない。
読んでいてもどうしてそういう行動を取るのか、頭を傾げる場面がたくさんあった。
病院で武藤はいきなり主人公に性行為をし始めるけど、彼女の一体何がそんな行動に駆り立てたのか、私には理解できなかった。あんな状況でも彼氏と知れば性的な奉仕をしないといけないと思ったのだろうか? その後、説得力のある行動原理を求めて読み続けたが結局、最後まで何も説明はなかった。
これは推測するしかないのだけど、あの行動は後の三角関係を形成するのに必要だったり、主人公が武藤が男だと勘違いしてショックを受けるために必要な伏線だったのだろう。
要するに作者の都合で、武藤の意思はない。
多分、作者にとって小説はなによりも仕掛けが大事で、息もつかせないストーリーで二転三転をして読者を飽きさせないことを第一に作ったのだろう。そして、それは成功している。
だけど、それでは登場人物はただの駒に過ぎない。登場人物が生き生きしていないと読んでいても面白くない。
私たちが読んでいるのは、登場人物たちが過ごしている生活氷山の一角であり、海面の下では、退屈で膨大な量の”日常”があるはずなのにそういう所が見えてこない。食べ物は何が好きだとか、トイレに入るときはどんな本を持っていくか、とか。そういうどうでもいいけど登場人物を彩るには欠かせない細部がスッポリ抜けている。
だから、壊れた兄貴を持った武藤の葛藤や、霊能力者探偵が抱えている苦悩も、まるで伝わってこない。
私たちがある小説に説得力を感じたり、ある種のリアリティを感じるのは、プロットや観念的なテーマではなく、生活世界に他ならないのだから、こういう所で手を抜く、あるいはそういうのを軽視する作家はどうも信用したくない。
あらすじそのものはとても上手く出来ているようには感じた。
冒頭、主人公は自分の自転車をボコボコに蹴っ飛ばす風変わりのヒロインと出会う。次第に仲良くなり恋愛に向かうのかなと思いきや、事故により展開がサスペンスホラーに一転していく。そして、また新たなヒロインが現れて三角関係の恋愛が見え始めて……。
「プロットポイント」、「ミッドポイント」、「プロットポイント2」を上手に満たした展開は惹き付けられるものがあった。
だけど、どうしても登場人物たちの顔が浮かんでこなかった。
「この子たちと同じクラスだったら自分とはどんな関係だっただろうか?」
そういうのが上手く想像できない。
読んでいてもどうしてそういう行動を取るのか、頭を傾げる場面がたくさんあった。
病院で武藤はいきなり主人公に性行為をし始めるけど、彼女の一体何がそんな行動に駆り立てたのか、私には理解できなかった。あんな状況でも彼氏と知れば性的な奉仕をしないといけないと思ったのだろうか? その後、説得力のある行動原理を求めて読み続けたが結局、最後まで何も説明はなかった。
これは推測するしかないのだけど、あの行動は後の三角関係を形成するのに必要だったり、主人公が武藤が男だと勘違いしてショックを受けるために必要な伏線だったのだろう。
要するに作者の都合で、武藤の意思はない。
多分、作者にとって小説はなによりも仕掛けが大事で、息もつかせないストーリーで二転三転をして読者を飽きさせないことを第一に作ったのだろう。そして、それは成功している。
だけど、それでは登場人物はただの駒に過ぎない。登場人物が生き生きしていないと読んでいても面白くない。
私たちが読んでいるのは、登場人物たちが過ごしている生活氷山の一角であり、海面の下では、退屈で膨大な量の”日常”があるはずなのにそういう所が見えてこない。食べ物は何が好きだとか、トイレに入るときはどんな本を持っていくか、とか。そういうどうでもいいけど登場人物を彩るには欠かせない細部がスッポリ抜けている。
だから、壊れた兄貴を持った武藤の葛藤や、霊能力者探偵が抱えている苦悩も、まるで伝わってこない。
私たちがある小説に説得力を感じたり、ある種のリアリティを感じるのは、プロットや観念的なテーマではなく、生活世界に他ならないのだから、こういう所で手を抜く、あるいはそういうのを軽視する作家はどうも信用したくない。