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読者レビュー

銀

最前線セレクションズ

西島さんのセレクションが、私に与えた影響について

レビュアー:USB農民 Adept

 2011年5月16日の最前線セレクションズのお題は『人生を変えた「教科書」』。
 セレクターは西島大介さん。
 西島さんが選んだ「教科書」の内、私の興味を強く引いたのは、一冊目に紹介されていた『理科系の文学誌』でした。
 その本は、私の読書における視野を大きく広げてくれました。

 荒俣宏さんのSF小説に対する、深い熱意と愛情に支えられた奇抜で奇想の評論がぎっしりと詰まったこの一冊を、私はそれまで書名すら知りませんでした。
 たまたまSF小説を数冊続けて読んでいた時期だったので、「狂気に満ちたSF作品をぶっ飛んだ思考で読み解き、結果そこで取り上げた作品以上の壮大なヴィジョンを感じさせてくれる本」という西島さんの文章にえらく好奇心を刺激され、その後しばらく古書店などを回るときはこの本のタイトルを頭の片隅に起きながら書棚を巡るようになりました。
 ようやく実物と出会えたのは、西島さんの文章を読んでから一ヶ月弱ほど経った後でした。購入後、すぐに読み始めて、西島さんの紹介は嘘偽りない内容だったことにうれしさを覚えました。
 そして読了後、『想像力の地球旅行』『知識人99人の死に方』『決戦下のユートピア』『パラノイア創造史』『別世界通信』などの荒俣さんの本を書店や古書店で探し求め、今は『知識人~』からの関連で山田風太郎の『人間臨終図鑑』を読んでいます。『パラノイア~』で紹介されていた科学者のエピソードにも興味が出て、科学関連の書も以前より興味をもって読めるようになりました。

 他にも、『理科系の文学誌』の効果が私の中で波及した例はありますが、それはみな西島さんのナイスなセレクションに拠るものです。
 きっと私以外にも、このような経験をした読者がいるのではないでしょうか。
 最前線セレクションは、2011年でひとまず終了とのことですが、またいつか復活してほしいです。
 この企画は、読者の興味や関心を広げ、また趣味の楽しみを掘り下げてくる良い企画であったと思います。

2012.01.30

さやわか
僕の10年来の友人でもある西島大介くんの書いた文章についてのレビューを読む日が来るとは……。まあしかしジャッジには特に影響ありませんが! レビューとしては「最前線セレクションズ」をきっかけに興味の幅が広がったという話になっています。
のぞみ
作品を知るきっかけになるって、素敵ですわよね! この作品に出会わせてくれた!って感動が伝わってきて、良いな~と思いましたわ!
さやわか
うむ! 「作品が何を書いているか」をレビューで書くことにこだわっている人は、「最前線セレクションズ」みたいなコンテンツはたぶんレビューが書きにくいと感じているのではないですかな。しかし「自分がどう読んで、どう影響を受けたか」という話を書くのだという前提に立ってみれば、特に書きにくいということはない、という好例のようなレビューでした。結末がややあっさりしていて、とりあえず筆を置いたというような印象になっているのはちょっと残念ですが、しかし質の高いレビューではあります。ここでは「銀」といたしましょう。

本文はここまでです。