ここから本文です。

読者レビュー

銅

下界のヒカリ

暦は巡るのだから、カレンダー小説も巡るべきではないのか

レビュアー:USB農民 Adept

 2011年大晦日から、翌年2012年の年初にかけて公開された、泉和良によるカレンダー小説「下界のヒカリ」は、これまでのカレンダー小説の中で私がもっとも楽しく読めた作品だった。
 何が良かったかといえば、読後感がとても良かったことと、もう一つ、この小説を年初に読めたことが挙げられる。

 大晦日の夜に、誰かのために、自分のために、来年こそがんばることを決意し、そして来年が今年になった瞬間、決意のもとに行動を始める主人公。
 私は正月にこの作品を読んだが、とても感情移入しやすくて良い読後感を得ることができた。たぶん、これを4月とか8月とか、年越しと離れた時期に読んだら、こんなに楽しむことはできなかったと思う。カレンダー小説の期間限定公開という発表方法は、だからとても良いと思う。

 しかし、あの小説がもう二度と読めないのは少々残念だ。
 今までのカレンダー小説も二度と読めないかもしれないというのも同じように残念だ。
 かといって、夏に「下界のヒカリ」を読みたいとは思わない。節分の季節に「星の海にむけての夜想曲」(七夕に公開されたカレンダー小説)を読みたいとは思わない。やはり「下界のヒカリ」は年末年始に、「星の海にむけての夜想曲」は七夕に読みたい。

 暦のように、どれだけ年を重ねても、また大晦日がやってくるように、また七夕がやってくるように、カレンダー小説もそのような作品であってほしい。
 暦が巡るように、カレンダー小説も同じ日を繰り返し巡ってほしい。
 今年は、大晦日に「下界のヒカリ」を読んでみたい。

2012.01.30

のぞみ
季節感って大事ですわよね! その季節に読みたいものだからこそ良い!
さやわか
うむ! カレンダー小説という企画に感じた魅力をよく伝えてくれていますな。
のぞみ
もう読めないっていう儚い感じとか! 共感出来ましたわ~!
さやわか
ただ、ちょっとだけ気になるのは、この作品がよかった理由として「読後感がよかった」「年初に読めたこと」の二つを挙げつつ、その直後に「年初に読めたから読後感がよかった」と言ってしまっているのが、明らかにまずいですな。前半ではAとBの2つの理由があるように書きながら、後半でAの理由がBであると言うわけです。同時にこれは「これこれの理由で読後感がよかった」という同じ話題を反復させてしまっているのです。このへんをもう少し整理するともっとよくなると思いますぞ。しかしまあ、レビュアー騎士団としては「銅」を授与するのに十分なレビューではあります!

本文はここまでです。