きみを守るためにぼくは夢をみる
ありえないけど普通のこと
レビュアー:ヨシマル
栄子:体は子供、頭脳は大人! その名は……
ヨシマル:名探偵――――
栄子:エイコ!!
ヨシマル:って、なんでだよ!
栄子:体は大人、頭脳は子供! の方がええって?
ヨシマル:そういう意味じゃないよ!
栄子:けっ! このロリコンが!
ヨシマル:なんで切れられなきゃいけないんだよ!
栄子:まあまあ、ええやんか。今回は『きみを守るためにぼくは夢を見る』のレビューなんやし。
ヨシマル:確かに今回のレビュー対象の『きみを守るためにぼくは夢を見る』も若返りではないけれど、同い年なのに肉体年齢が大きく離れてしまった二人の話だ。本書は2003年に講談社から児童向けとして出版された白倉由美著『きみを守るためにぼくは夢を見る』の文庫版第一巻だね。主人公の小学四年生・朔が夏休みのある日、ガールフレンドの砂緒と一緒にプールに行く。楽しい一日が終わり、これからも二人でいることを約束した夜、朔が気がつくと七年の月日が経っていた。
栄子:十歳のままのさくと十七歳に成長した砂緒が送る切ないラブストーリーやな。
ヨシマル:児童文学といのがどんなものを指すのかはヨシマルには分からないけれど、十歳の少年が周囲と葛藤しながらヒロインとの関係を考えることで成長していくストーリーは、主人公と同年代のときに読んでみたいと思わされたよ。
栄子:そうやなあ。今読むのと、子供んとき読むのじゃ感じ方は違いそうやし。あ、けど、ヨシマル小学生のときなんか本読むような子供やなかったやん。十歳なんて虫取りばっかやってた頃やろ。
ヨシマル:書を捨てよ山へ出よう。
栄子:それ町や町!
ヨシマル:まあ、ヨシマルが当時住んでいたのは田舎だったから、本書の冒頭と同年代でも電車なんて一時間に一本走ってるかどうかだったし、遠出するときはもっぱら自転車だったからなあ。こんな素敵な夏休みなんて想像もできなかったよ。
栄子:……それは、ヨシマルに限ったことなんじゃ。
ヨシマル:そこ、うるさい!
栄子:はいはい。まあ、でも主人公の朔もかなり精神年齢高めな感じやんな。
ヨシマル:そうだね。朔の年齢は十歳のまま変わっていないはずなんだけれど、年上になった砂緒や弟の公彦との会話ではその実年齢を感じさせないほど大人びている。読んでてそこが気になった人も多かったんじゃないかな。
栄子:著者が意識してるんかは分からへんけどね。
ヨシマル:他の著作をあまり読んだことがないから比較はできないけれど、大人びで描くことで十七歳に成長した砂緒との関係をしっかりと恋愛関係にできているとは感じられたね。
栄子:ほんまやな。普通の十歳と十七歳なら恋愛にはなりづらそうやし。
ヨシマル:うん。だからこそ、朔は葛藤することになるんだね。
栄子:朔自身が砂緒との溝を理解できるくらいには大人なんやな。
ヨシマル:作中でも何度も砂緒が大人みたいだって言っているしね。逆に同じ十歳の阿草苺には子供っぽさを感じている。
栄子:子供なんか大人なんか微妙な関係やなあ。十歳なんか十七歳なんか曖昧って言うか。
ヨシマル:うん。そんな朔の曖昧な状況っていうのを七年間の空白が作っているんだね。十代の頃の七年って今からは想像できないほどの年月なんだから。
栄子:そうやなあ、一年戦争終わってから『Z』始まるくらいやし。
ヨシマル:その例え分かりづらいって。
栄子:えっ、アムロが地球の重力に骨抜きにされるくらいってことやん。
ヨシマル:余計分かりづらいよ!
栄子:女子七年会わざれば刮目して見よ!
ヨシマル:もう意味分からないよ。
栄子:小学校卒業してから、成人式で七年ぶりくらいに会うと女子は誰か分からなくなるくらい変わってるから気をつけろって意味やで。
ヨシマル:それ単なる体験談だから。
栄子:まあまあ、七年でそれくらい人は成長するってことやし、それが十歳ならなおさらってことやん。
ヨシマル:まあね、でもだから、朔って十代の葛藤の象徴ってことも言えるんじゃないかな。
栄子:どういうことなん?
ヨシマル:十代前半って成長が早い時期でもあるんだけど、それだけ人によって成長のバラつきがある時期でもあるんだよね。同い年でも大人びた人がいたり、子どもっぽい人がいたり。
栄子:内面にしても外見にしてもなんやな。
ヨシマル:そうなんだ。小学校の高学年くらいのクラスを思い出してみても、同い年ではあるけれど、大人びてるから近づきづらいとか、子どもっぽいから話が合わないなんて経験は多くの人はあると思うし。この前まで自分より子供だと思っていたのに、いつの間にか自分を追い越していった友人なんていくらでもいる。
栄子:それが、砂緒だったり阿草苺だったり公彦だったりってこと?
ヨシマル:そうだね。作中で朔が悩んでいることっていうのは、実はこの年代なら誰でもが多少なりとも感じてしまうことなんじゃないかって思うんだ。自分とは釣り合わないとか、何か変わってしまった人たちとどう接したらいいのかって、おそらく十歳から十七歳くらいまでの歳の子にとって重大な問題だと思うし。この小説ではそこに実際の時間を経過させることでその悩みを鮮明に描いているってことだね。だから朔がどう考え、行動するのかってところに共感もしやすいと思う。
栄子:なるほどなあ。時間経過って本来ありえへんことを描くことで、普通にあるものを印象的にしてるんやな。
ヨシマル:そういうこと。周囲の人の変化を丁寧に書いてあるから余計にそう思ってしまうのかもしれないしね。時間が経過したことによる変化が人物描写に多く割かれているのもそんな意味があるのかなって思ったよ。
栄子:確かにそうかもしれへんな。人物描写以外で時間経過を印象づけてるのはサッカーを巡る状況の変化くらいな気はするなあ。
ヨシマル:そのサッカーも公彦との間にできてしまった差をを描くために使われているしね。
栄子:なるほどやなあ。
ヨシマル:そういえばサッカーって言ったらさ。
栄子:ん?
ヨシマル:「ワールドカップのために、高校生のころから選手にくわえられたりすることもある」って書いてあるんだけど、もともと単行本として発行されたのが2003年だからその七年前って考えると1996年だよね。てことはその間のワールドカップといったらフランス大会か日韓大会ってことになるよね。
栄子:う、うん……。
ヨシマル:問題です。このワールドカップのために高校生の頃から代表に選ばれていたのは誰でしょう?
栄子:なんや、いきなり。
ヨシマル:誰でしょう?
栄子:え、続けんねや。そうやなあ、若くて代表に選ばれてたんは小野伸――
ヨシマル:違ーう!!!!
栄子:え!?
ヨシマル:今まで高校生でサッカー日本代表として試合に出たのは市川大祐選手しかないだろ!!!
栄子:え!? え!?
ヨシマル:17歳と322日で出場という記録を持った右サイドのスペシャリスト市川大祐選手だろ!!!
栄子:え、えー!?
ヨシマル:ヨシマルは今年も市川大祐選手を応援します!
栄子:え、何この終わり方。
ヨシマル:名探偵――――
栄子:エイコ!!
ヨシマル:って、なんでだよ!
栄子:体は大人、頭脳は子供! の方がええって?
ヨシマル:そういう意味じゃないよ!
栄子:けっ! このロリコンが!
ヨシマル:なんで切れられなきゃいけないんだよ!
栄子:まあまあ、ええやんか。今回は『きみを守るためにぼくは夢を見る』のレビューなんやし。
ヨシマル:確かに今回のレビュー対象の『きみを守るためにぼくは夢を見る』も若返りではないけれど、同い年なのに肉体年齢が大きく離れてしまった二人の話だ。本書は2003年に講談社から児童向けとして出版された白倉由美著『きみを守るためにぼくは夢を見る』の文庫版第一巻だね。主人公の小学四年生・朔が夏休みのある日、ガールフレンドの砂緒と一緒にプールに行く。楽しい一日が終わり、これからも二人でいることを約束した夜、朔が気がつくと七年の月日が経っていた。
栄子:十歳のままのさくと十七歳に成長した砂緒が送る切ないラブストーリーやな。
ヨシマル:児童文学といのがどんなものを指すのかはヨシマルには分からないけれど、十歳の少年が周囲と葛藤しながらヒロインとの関係を考えることで成長していくストーリーは、主人公と同年代のときに読んでみたいと思わされたよ。
栄子:そうやなあ。今読むのと、子供んとき読むのじゃ感じ方は違いそうやし。あ、けど、ヨシマル小学生のときなんか本読むような子供やなかったやん。十歳なんて虫取りばっかやってた頃やろ。
ヨシマル:書を捨てよ山へ出よう。
栄子:それ町や町!
ヨシマル:まあ、ヨシマルが当時住んでいたのは田舎だったから、本書の冒頭と同年代でも電車なんて一時間に一本走ってるかどうかだったし、遠出するときはもっぱら自転車だったからなあ。こんな素敵な夏休みなんて想像もできなかったよ。
栄子:……それは、ヨシマルに限ったことなんじゃ。
ヨシマル:そこ、うるさい!
栄子:はいはい。まあ、でも主人公の朔もかなり精神年齢高めな感じやんな。
ヨシマル:そうだね。朔の年齢は十歳のまま変わっていないはずなんだけれど、年上になった砂緒や弟の公彦との会話ではその実年齢を感じさせないほど大人びている。読んでてそこが気になった人も多かったんじゃないかな。
栄子:著者が意識してるんかは分からへんけどね。
ヨシマル:他の著作をあまり読んだことがないから比較はできないけれど、大人びで描くことで十七歳に成長した砂緒との関係をしっかりと恋愛関係にできているとは感じられたね。
栄子:ほんまやな。普通の十歳と十七歳なら恋愛にはなりづらそうやし。
ヨシマル:うん。だからこそ、朔は葛藤することになるんだね。
栄子:朔自身が砂緒との溝を理解できるくらいには大人なんやな。
ヨシマル:作中でも何度も砂緒が大人みたいだって言っているしね。逆に同じ十歳の阿草苺には子供っぽさを感じている。
栄子:子供なんか大人なんか微妙な関係やなあ。十歳なんか十七歳なんか曖昧って言うか。
ヨシマル:うん。そんな朔の曖昧な状況っていうのを七年間の空白が作っているんだね。十代の頃の七年って今からは想像できないほどの年月なんだから。
栄子:そうやなあ、一年戦争終わってから『Z』始まるくらいやし。
ヨシマル:その例え分かりづらいって。
栄子:えっ、アムロが地球の重力に骨抜きにされるくらいってことやん。
ヨシマル:余計分かりづらいよ!
栄子:女子七年会わざれば刮目して見よ!
ヨシマル:もう意味分からないよ。
栄子:小学校卒業してから、成人式で七年ぶりくらいに会うと女子は誰か分からなくなるくらい変わってるから気をつけろって意味やで。
ヨシマル:それ単なる体験談だから。
栄子:まあまあ、七年でそれくらい人は成長するってことやし、それが十歳ならなおさらってことやん。
ヨシマル:まあね、でもだから、朔って十代の葛藤の象徴ってことも言えるんじゃないかな。
栄子:どういうことなん?
ヨシマル:十代前半って成長が早い時期でもあるんだけど、それだけ人によって成長のバラつきがある時期でもあるんだよね。同い年でも大人びた人がいたり、子どもっぽい人がいたり。
栄子:内面にしても外見にしてもなんやな。
ヨシマル:そうなんだ。小学校の高学年くらいのクラスを思い出してみても、同い年ではあるけれど、大人びてるから近づきづらいとか、子どもっぽいから話が合わないなんて経験は多くの人はあると思うし。この前まで自分より子供だと思っていたのに、いつの間にか自分を追い越していった友人なんていくらでもいる。
栄子:それが、砂緒だったり阿草苺だったり公彦だったりってこと?
ヨシマル:そうだね。作中で朔が悩んでいることっていうのは、実はこの年代なら誰でもが多少なりとも感じてしまうことなんじゃないかって思うんだ。自分とは釣り合わないとか、何か変わってしまった人たちとどう接したらいいのかって、おそらく十歳から十七歳くらいまでの歳の子にとって重大な問題だと思うし。この小説ではそこに実際の時間を経過させることでその悩みを鮮明に描いているってことだね。だから朔がどう考え、行動するのかってところに共感もしやすいと思う。
栄子:なるほどなあ。時間経過って本来ありえへんことを描くことで、普通にあるものを印象的にしてるんやな。
ヨシマル:そういうこと。周囲の人の変化を丁寧に書いてあるから余計にそう思ってしまうのかもしれないしね。時間が経過したことによる変化が人物描写に多く割かれているのもそんな意味があるのかなって思ったよ。
栄子:確かにそうかもしれへんな。人物描写以外で時間経過を印象づけてるのはサッカーを巡る状況の変化くらいな気はするなあ。
ヨシマル:そのサッカーも公彦との間にできてしまった差をを描くために使われているしね。
栄子:なるほどやなあ。
ヨシマル:そういえばサッカーって言ったらさ。
栄子:ん?
ヨシマル:「ワールドカップのために、高校生のころから選手にくわえられたりすることもある」って書いてあるんだけど、もともと単行本として発行されたのが2003年だからその七年前って考えると1996年だよね。てことはその間のワールドカップといったらフランス大会か日韓大会ってことになるよね。
栄子:う、うん……。
ヨシマル:問題です。このワールドカップのために高校生の頃から代表に選ばれていたのは誰でしょう?
栄子:なんや、いきなり。
ヨシマル:誰でしょう?
栄子:え、続けんねや。そうやなあ、若くて代表に選ばれてたんは小野伸――
ヨシマル:違ーう!!!!
栄子:え!?
ヨシマル:今まで高校生でサッカー日本代表として試合に出たのは市川大祐選手しかないだろ!!!
栄子:え!? え!?
ヨシマル:17歳と322日で出場という記録を持った右サイドのスペシャリスト市川大祐選手だろ!!!
栄子:え、えー!?
ヨシマル:ヨシマルは今年も市川大祐選手を応援します!
栄子:え、何この終わり方。