死体泥棒
身体で伝えられること
レビュアー:ややせ
わたしが死んだら、この身体を恋人に盗んでほしいと思うだろうか。
わたしの好きなひとが死んだら、その身体を盗みだしてでも一緒に過ごそうとするだろうか。
好きになったのは内面性、こころ、だ。
だからこそ、この小説の主人公の彼は恋人が性風俗の仕事をしていても安易に反対はしなかった。
心で思いあっているから、それをよすがにできたから、あんなにありふれていて、だからこそ実現の難しい夢を真摯に見ることができたのだ。
彼は作中で言う。臓器を提供してあちこちがすかすかになってしまった恋人の死体に対して、内面性なんか全然ない、と。肉体的にも空っぽだと。
「生きている時だって、僕たちはお互い何も持っていなかったから、一番大事なものを分かち合えたんだ。あの時より更に失った今なら、もっと大事なものに触れることが出来るような気もする。きっと、何もない方が良いんだよ」
わたしはこの言葉に反発する。
どんなときに笑ったり、不安そうになったか。何に夢中になり、何が得意で、何が苦手なのか。ものの考え方、価値の見出し方……
なるほど、好きになるのは心かもしれない。
でも、心と繋がっていてこその、身体。身体があってこそ、表現されるのが心ではないだろうか。
わたしが死んだ恋人なら、もっと気づいてほしかったことがあったよ、と、恨みごとの一つ二つ言ってやりたい。
あなたの子供の頃の話をもっと知りたかった、と。
けれど、恋人はそんなことは言わない。死んでしまったから。
空っぽの身体をどれだけ覗きこんでも、そこに彼女はもういない。
この長い長いとむらいの儀式のような小説。
恋人の身体がちゃんと無くなって、ようやく身体的にも悼むことができた「僕」
彼をずっと見守っていると、私が恋人の幸であるかのような気持ちになった。
呆気なく、清々しい。なんて寂しいラストだろう。
私は、誰かに手を伸ばしたくなった。
生きて、身体のあるうちに。
わたしの好きなひとが死んだら、その身体を盗みだしてでも一緒に過ごそうとするだろうか。
好きになったのは内面性、こころ、だ。
だからこそ、この小説の主人公の彼は恋人が性風俗の仕事をしていても安易に反対はしなかった。
心で思いあっているから、それをよすがにできたから、あんなにありふれていて、だからこそ実現の難しい夢を真摯に見ることができたのだ。
彼は作中で言う。臓器を提供してあちこちがすかすかになってしまった恋人の死体に対して、内面性なんか全然ない、と。肉体的にも空っぽだと。
「生きている時だって、僕たちはお互い何も持っていなかったから、一番大事なものを分かち合えたんだ。あの時より更に失った今なら、もっと大事なものに触れることが出来るような気もする。きっと、何もない方が良いんだよ」
わたしはこの言葉に反発する。
どんなときに笑ったり、不安そうになったか。何に夢中になり、何が得意で、何が苦手なのか。ものの考え方、価値の見出し方……
なるほど、好きになるのは心かもしれない。
でも、心と繋がっていてこその、身体。身体があってこそ、表現されるのが心ではないだろうか。
わたしが死んだ恋人なら、もっと気づいてほしかったことがあったよ、と、恨みごとの一つ二つ言ってやりたい。
あなたの子供の頃の話をもっと知りたかった、と。
けれど、恋人はそんなことは言わない。死んでしまったから。
空っぽの身体をどれだけ覗きこんでも、そこに彼女はもういない。
この長い長いとむらいの儀式のような小説。
恋人の身体がちゃんと無くなって、ようやく身体的にも悼むことができた「僕」
彼をずっと見守っていると、私が恋人の幸であるかのような気持ちになった。
呆気なく、清々しい。なんて寂しいラストだろう。
私は、誰かに手を伸ばしたくなった。
生きて、身体のあるうちに。