ここから本文です。

読者レビュー

銅

人に薦めたくなる物語

レビュアー:牛島 Adept

 大切な人を亡くしたとき、あなたはどんな行動に出ますか。
 喪失の悲しみに打ちひしがれる?
 残されたものとして強く生きる?
 この物語の主人公・塩津がとった行動はどちらでもなく、その死を「保留」するというものでした。

 急逝した彼女の死体を葬儀会場から盗み出し、自室に用意した巨大冷凍庫の中にそのままの姿で保存する。死体の保存を第一に考える彼は、人としての道を次々に踏み外していく――という筋書きはいかにも猟奇的で異常めいているのですが、そこで食わず嫌いせずに苦手な方にも是非読んでほしいです。

 常軌を逸した彼の行動は、当然誰も幸せにはしなかったけれど、しかし読了後にはなぜか感動してしまいました。
 自分を慕う女子中学生や心配する家族を裏切り、御世辞にもまともとは言えないこの青年になぜ親身になってしまうのか。それはやはり、彼が貫いた衝動が誰もが思ったことがあることだからでしょう。

「もっと一緒にいたい」
「大切な人を喪いたくない」
「このまま死別するなんて冗談じゃない」

 あるいはそれは子どもが駄々をこねているだけなのかもしれません。そうした行動は迷惑にしかならないし、いい歳なんだからそもそも納得しなければいけないのかも。
 けれどだからこそ彼の行動は心に響くのだと思います。見て見ぬふりをしていた部分で真っすぐに行動されると、読者としては揺さぶられずにはいれません。

 まだまだ寒く長い夜が続くことですし、宵のともには是非『死体泥棒』を。

2012.01.30

のぞみ
レビューを読んだ人が、本の内容が気になるんじゃないかなって思いましたわ~(´ω`)
さやわか
たしかにこのレビューは導入がうまいです。『死体泥棒』という作品の、センセーショナルな部分をうまくつかまえて見せつけることで、読者が気になるように仕向けている。結末についても、ほぼ触れていないにもかかわらず、何か気になるような書き方ができていますな。ただ、残念ながら最後の一文は蛇足というか、あまり本文全体にかかわっては来ていないように思いました。作品を読めば、冷凍庫なんかが登場して「寒く長い夜」という言葉と関連するように思えますが、だったらなおさらここはしっかり書いてあげた方が、塩津の切なさを今一度語ることができたように思いますぞ。ということで「銅」にさせていただきました! では、以上かな? レビュアー騎士団、第三場の終結です。序盤戦ながらも激しい順位争いが続いていますな。しかし! 実は下位はもたついてますので新規投稿者でも一瞬でランキングにエントリーされうるのではないでしょうか。というわけで次回は。
のぞみ
次回の投稿締め切りは2012年2月9日です!
さやわか
次回で早くも全十二場のうち三分の一が終わることになるぞ! 乗り遅れないように! では、第三場はこれにて幕である! どどん!

本文はここまでです。