人に薦めたくなる物語
レビュアー:牛島
大切な人を亡くしたとき、あなたはどんな行動に出ますか。
喪失の悲しみに打ちひしがれる?
残されたものとして強く生きる?
この物語の主人公・塩津がとった行動はどちらでもなく、その死を「保留」するというものでした。
急逝した彼女の死体を葬儀会場から盗み出し、自室に用意した巨大冷凍庫の中にそのままの姿で保存する。死体の保存を第一に考える彼は、人としての道を次々に踏み外していく――という筋書きはいかにも猟奇的で異常めいているのですが、そこで食わず嫌いせずに苦手な方にも是非読んでほしいです。
常軌を逸した彼の行動は、当然誰も幸せにはしなかったけれど、しかし読了後にはなぜか感動してしまいました。
自分を慕う女子中学生や心配する家族を裏切り、御世辞にもまともとは言えないこの青年になぜ親身になってしまうのか。それはやはり、彼が貫いた衝動が誰もが思ったことがあることだからでしょう。
「もっと一緒にいたい」
「大切な人を喪いたくない」
「このまま死別するなんて冗談じゃない」
あるいはそれは子どもが駄々をこねているだけなのかもしれません。そうした行動は迷惑にしかならないし、いい歳なんだからそもそも納得しなければいけないのかも。
けれどだからこそ彼の行動は心に響くのだと思います。見て見ぬふりをしていた部分で真っすぐに行動されると、読者としては揺さぶられずにはいれません。
まだまだ寒く長い夜が続くことですし、宵のともには是非『死体泥棒』を。
喪失の悲しみに打ちひしがれる?
残されたものとして強く生きる?
この物語の主人公・塩津がとった行動はどちらでもなく、その死を「保留」するというものでした。
急逝した彼女の死体を葬儀会場から盗み出し、自室に用意した巨大冷凍庫の中にそのままの姿で保存する。死体の保存を第一に考える彼は、人としての道を次々に踏み外していく――という筋書きはいかにも猟奇的で異常めいているのですが、そこで食わず嫌いせずに苦手な方にも是非読んでほしいです。
常軌を逸した彼の行動は、当然誰も幸せにはしなかったけれど、しかし読了後にはなぜか感動してしまいました。
自分を慕う女子中学生や心配する家族を裏切り、御世辞にもまともとは言えないこの青年になぜ親身になってしまうのか。それはやはり、彼が貫いた衝動が誰もが思ったことがあることだからでしょう。
「もっと一緒にいたい」
「大切な人を喪いたくない」
「このまま死別するなんて冗談じゃない」
あるいはそれは子どもが駄々をこねているだけなのかもしれません。そうした行動は迷惑にしかならないし、いい歳なんだからそもそも納得しなければいけないのかも。
けれどだからこそ彼の行動は心に響くのだと思います。見て見ぬふりをしていた部分で真っすぐに行動されると、読者としては揺さぶられずにはいれません。
まだまだ寒く長い夜が続くことですし、宵のともには是非『死体泥棒』を。