ここから本文です。

読者レビュー

銀

「夜跳ぶジャンクガール」

「お前が死んだら俺は悲しい」

レビュアー:USB農民 Adept

『日本の難点』という本に、中学生の教育に自殺のロールプレイングを扱う話があります。二人一組で行い、一人は自殺者役、もう一人はそれを止める役です。どのような言葉なら、自殺を思いとどまらせることができるか。この本の中では、実に端的な答えが出ていて、それは「お前が死んだら俺は悲しい」という言葉です。しかし、これは相手との間に関係性の履歴がなければ、空っぽの言葉にしかなりません。
 私はこの話の本質は、「相手にとって自分の生(あるいは死)はどの程度の重みがあるのか」を問うている部分にあると思っています。
 そして、『夜跳ぶジャンクガール』はまさにこのことを物語化した作品だと思います。
 作中では繰り返し、「貴方にとって私の死(あるいは生)はどの程度の重みがあるのか」という問いかけが(問う人、問われる人が入れ替わりつつ)出てきます。そしてその回答は、やはり上述したような「お前が死んだら俺は悲しい」というような言葉に結実していきます。

 その言葉は、確かな重みを感じさせるものでした。
 誰かの心を動かすに足る重みをもった言葉でした。

『夜跳ぶジャンクガール』は、衒いのない切実な言葉と言葉のやりとりの中にだけ現れる、そんな重みをこそ描いた小説なのだと私は思います。

2011.12.20

さやわか
うむむ、これも短くて、しかもよくできたレビューですなあ。短いと論理的な破綻は起こしにくい代わりに、飛躍なく話を進めなければならなくて難しいのですが、このレビューはお手本のようにうまくできていますね。宮台真司の本の出し方もすごくさりげなくて、でも論旨の一番重要な部分を支えていて、実に好ましいです。「銀」ということにいたしましょう。作品を読んだ人にも、読んでいない人にも等しくものを考えさせるような文章になっているのもいいですなあ。

本文はここまでです。