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読者レビュー

銀

ひぐらしのなく頃に

表紙絵とその流れ

レビュアー:yagi_pon Novice

表紙の絵に意味を自分なりに見つけられたとき、私はなんだかものすごくうれしい気持ちになる。

星海社文庫版の表紙絵は、罪滅し編の上巻までずっとキャラクターの立ち絵だった。変化の前兆となったのは、罪滅し編の上巻。それまでは基本的に笑顔が向けられていた表紙だったのに対し、この巻の表紙のレナの表情は、崩壊していた。そして罪滅ぼし編の下巻では、キャラクター一人の立ち絵ではなくなり、レナを除く部活メンバーの集合絵になる。
個人的には、ここまでの表紙絵の流れがすごく好きだ。
原作者の竜騎士07さんは、「『ひぐらしのなく頃に』っていう作品は、すごくシンプルにやりたかったんです。はっきり言っちゃうと、『友達と仲良くしましょうね』っていうのがテーマなんです。」と言っている。
ここまでの表紙絵の流れもすごくシンプルで、一人一人の立ち絵が続き、それが唐突に壊れ、けれども仲間が手を差しのべる。巻数が多く、一見複雑に見えるこの物語は、その中に潜むテーマがシンプルなので、こうして表紙絵に凝縮することができる。たとえ一人一人では壊れてしまうようなことでも、仲間がいれば大丈夫、そう思える。

実は講談社BOX版でも罪滅ぼし編の上下巻の表紙絵も、同じく壊れたレナと部活メンバーという構造をしているのだけれど、私は文庫版の方が好き。BOX版も文庫版も夕暮れどきの同じような場面なのだけれども、文庫版は圭一が差しのべる手がちょうどイラストの中心にきている。登場人物たちとともにたくさんのつらい想いを重ねてきた一読者としては、すぐにでも手を掴んでしまいたくなる、そんな絵なのだ。文字通り「仲間が手を差しのべる」様子が中心となっている、そのシンプルさがいい。

2011.12.20

のぞみ
表紙の意味はこうなんじゃないかと、発見した時の喜びが伝わってきて、良いなぁと思いましたわ。
さやわか
うむ、このレビューはうまいと思います! 自分の気になったことを発端にして読者に新しい視点を提供しつつ、作者自身の言葉で補いながらそれを解説している。しかもコンパクトにまとまっている。レビューというか、批評的な文章の書き方の一つの模範のようなものだと思います。だから「銀」には値すると思いますし、このレビューはかなり「金」に近いものだと思います。ではこれを「金」にするにはどうしたらいいのか、ということを語る必要がありそうですね。このシンプルさを失わないように心がけながら、もう少しだけ物語の内部、『罪滅し編』の具体的な記述にまで配慮して書くのがいいかなと思います。そうすれば、『ひぐらし』という作品全体、小説というジャンル全体に対する視野が広げられるのではないでしょうか。しかし、今のままでもかなりいいレビューですぞ!

本文はここまでです。