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読者レビュー

鉄

iKILL

抑止力という力

レビュアー:ひかけ Novice

この世界には抑止力というものが存在している。らしい。

空の境界でも抑止力について触れているところがある。アラヤは抑止力に知覚されないように行動し、式の体を手に入れ、根源というものに至ろうとしていた。失敗に終わったけれど。
これは抑止力ではなく巴という人物のくだらない家族愛に負けたという結果だったとトウコはアラヤを諭すのであるが。

MGS(メタルギアソリッド)でもPW(ピースウォーカー)とか言って核抑止を目指したりしている。核が撃ち込まれたら報復として自動で撃ち返すシステム。核を撃てば自分にも跳ね返ってくるというような体系を作り上げようとしていた。そうすれば核が撃てない。相手が核で死のうが自動で撃ち返すのだから、そりゃ撃てない。自殺志願者なら知らないが。

iKILLでも抑止力めいたものが存在している。凶悪犯罪者を「裁く」という名目で殺していくことで犯罪自体に怯えさせること、犯罪者の場所をなくすことを成し遂げた。ここでは殺人抑止とでも言おうか。相手を殺すことはすなはち自分も殺されるという体系。そりゃ殺せないわ。

てかそもそも抑止力って何。正直わからねぇ。「悪い人には天罰が」みたいなもんじゃないの?でも上記のものだと天罰とは少し言いにくいし…やってるのは人だからね…うーん。。
人類というグループが持つ「ひとつの方向性」に持っていこうとする力を抑止力というものとしてみたらどうだろう。
例えば、誰かひとりが周りと違った行動をする。するとそれを周りが是正していこうとする。そんな力。ひとりの暴走を止めるようなそんな感じ。その周りと違った行動がとてつもなく大きいものであるとき、人類全体としてはそれに匹敵するものを持たねばならないが。だって同程度の力を持たないと是正できないしね。言うなれば核とかが該当するだろう。

この考えには利点がある。それはひとつの方向性しか人類は持ちえないということだ。
人類にひとつの方向性しかないと考えた場合、別の方向に進んでいく人を特定しやすい。普通、人は人を殺さない。ならそれに背く殺人鬼が別の方向へと進んでいく人物だ。というふうに。でもiKILLの世界の場合方向性がズレてる。しかもひとつの方向性のほうがズレてる。
人を殺す者を是とし、それを妨げようとするもの非だとしている。そしてそれがひとつの方向性へとなってしまっている。

抑止力って武力なんじゃないかという想いが沸いてきた。核抑止って言ってもやはり武力であるのに変わりはないし、抑止ってものは押さえつけるようなイメージが強い。勝ったものが正義の武力とも似ている気がする。

ここまで言っておいてなんだが抑止力について私はイマイチよくわからなかった。いろいろ考えてたらあれやこれやといろいろ浮かんで決定できなかった。
それくらいに抑止力というモノがわからない。iKILLは今のふわふわした抑止力というものの怖さを伝えているのかもと思ったりもした。今を取り巻き、守ってくれている抑止力はそのうち自分たちに災いとして降りかかってくるのではないかというような問題を提起しているかのように。

2011.09.30

さやわか
このレビューはなかなかよい視点を持っているのですが、それでも「鉄」とさせていただきました。なぜか。まず『空の境界』や『MGS』などの作品と比較しながら「抑止力」ということについて考えるのはとてもいいと思うのです。しかし、それらの他作品がどのような内容を持ったものなのか、あまりに読者に対する説明が欠けている。ほとんど自分の思考の流れをだーっと記述したような感じで、それぞれの作品名をカギカッコでくくる労すら怠っているわけです。他人に見せる文章である以上、これはまずい。次に、結論が曖昧です。思考の流れをだーっと記述したがゆえに、最後に考えがまとまらなくて、考えるのを単にやめてしまう。文章を「イマイチよくわからなかった」と放り投げてしまうんですね。書き手の思考の流れに付き合った読者にとってみれば、これは読むべき文章ではなかったということになってしまいます。書き手は文章として何らかの結構をつけなければならないとは理解していて、「KILLは今のふわふわした抑止力というものの怖さを伝えているのかもと思ったりもした。今を取り巻き、守ってくれている抑止力はそのうち自分たちに災いとして降りかかってくるのではないかというような問題を提起しているかのように」という結論めいたものが提示されるのですが、特に深く考える必要を感じていないせいで、どれも「思ったりもした」「かのように」という、実に曖昧な形で終わっている。小説の読み方に正解はないので、正しいか間違っているかは問題ではありません。「抑止力」について理解しきれてなくてもいいんです。自信がないことを隠そうとせずにお茶を濁して書くのがよくないのですぞ!

本文はここまでです。