アイディ。
ただ純粋に、素敵だなって
レビュアー:横浜県
坂本真綾のファーストエッセイ集『アイディ。』を読む。
清々しい感覚に浸る一方で、どこか羨ましさみたいなものが、ふつふつと湧きあがってくる。
それは決して、坂本真綾が女優だからでも、歌手だからでも、声優だからでもないんだ。
彼女はたしかに、僕みたいな人間には、想像もつかないような、テレビやラジオ、舞台の向こう側に住んでいる。
だけど、このエッセイ集につづられている彼女の姿は、そんな遠い存在ではなくて、むしろ僕に親近感すら抱かせてくれる。
例えば子役時代のことを語る彼女。
子役の仕事なんて、本当なら別次元の話にすら思えるのだけれど。
子供なんて、目の前には数えきれないほどたくさんの選択肢や興味をそそるものがあって、そのいくつもに同時に手を出していいものだ。そしてどれも本気で、どれも適当にやっているはずだ。
そんな数ある選択肢の中から、彼女の選んだものが子役だった。
それは一般的な習い事をする僕のような子供と、本質的には変わらない。
だから彼女の努力を感じさせる文章に、僕はどこか懐かしい、自分の本気を重ねる。
坂本真綾が子役として経験した緊張や苦悩、その他ありとあらゆるものが、『アイディ。』の文章にはこめられている。それらは、昔の僕が抱いた感情と、まったく別物のはずなんだけれど、その根本は、どこか似ているんだ。
そう考えたら、彼女の文章が、どんどんと僕に近づいてくるように感じられた。
祖母の家を訪ねる話、旅行の話。そういった誰にでもあるようなエピソードだけじゃなくて。
舞台の話、ラジオの話。そんな僕とは何の関係もない、遠い世界のことだって。
そこで起きていることや、感じとれることは、僕のいる世界と一緒なんだって、そう思える。
じゃあ僕の感じた、あの心地よい憧憬って、一体なんだったんだろう。
文庫版のあとがきを読んだら、その答えはすぐに見つかった。
どんなことも、ひとつ残らず、今の私に繋がっていた。さっきこの本を読み返して顔を上げたとき本当にそう思ったので、ここから先も信じて進めそうです。サンキュー過去の自分、です。
あぁ、この感覚が、僕には足りなかったんだ。
坂本真綾という人は、過去の自分が今に繋がっていることを、今の自分が未来の自分に繋がっていることを、信じているし、実感しているんだ。
昔を振り返り、たまには後悔もするけれど、それすらも含めた、全ての過去があるからこそ、今の自分がいるんだって、そんな感覚。
それってすごく前向きで、かっこいい。
僕って結構ネガティヴだから、受け入れたくないような過去から、すぐ目を逸らしてしまうんだよね。
いつの日か彼女みたいに、笑顔で「サンキュー過去の自分」と言えるような、そんな広い心とポジティヴさを持った、素敵な人に成長したいな。
そうして僕は『アイディ。』を閉じる。
坂本真綾の晴れやかな過去と、輝かしいであろう未来を、祝福しながら。そして、まぶしいと感じながら。
背表紙にはこう書かれている。
現在、そして未来へとつながる坂本真綾の足あと。
清々しい感覚に浸る一方で、どこか羨ましさみたいなものが、ふつふつと湧きあがってくる。
それは決して、坂本真綾が女優だからでも、歌手だからでも、声優だからでもないんだ。
彼女はたしかに、僕みたいな人間には、想像もつかないような、テレビやラジオ、舞台の向こう側に住んでいる。
だけど、このエッセイ集につづられている彼女の姿は、そんな遠い存在ではなくて、むしろ僕に親近感すら抱かせてくれる。
例えば子役時代のことを語る彼女。
子役の仕事なんて、本当なら別次元の話にすら思えるのだけれど。
子供なんて、目の前には数えきれないほどたくさんの選択肢や興味をそそるものがあって、そのいくつもに同時に手を出していいものだ。そしてどれも本気で、どれも適当にやっているはずだ。
そんな数ある選択肢の中から、彼女の選んだものが子役だった。
それは一般的な習い事をする僕のような子供と、本質的には変わらない。
だから彼女の努力を感じさせる文章に、僕はどこか懐かしい、自分の本気を重ねる。
坂本真綾が子役として経験した緊張や苦悩、その他ありとあらゆるものが、『アイディ。』の文章にはこめられている。それらは、昔の僕が抱いた感情と、まったく別物のはずなんだけれど、その根本は、どこか似ているんだ。
そう考えたら、彼女の文章が、どんどんと僕に近づいてくるように感じられた。
祖母の家を訪ねる話、旅行の話。そういった誰にでもあるようなエピソードだけじゃなくて。
舞台の話、ラジオの話。そんな僕とは何の関係もない、遠い世界のことだって。
そこで起きていることや、感じとれることは、僕のいる世界と一緒なんだって、そう思える。
じゃあ僕の感じた、あの心地よい憧憬って、一体なんだったんだろう。
文庫版のあとがきを読んだら、その答えはすぐに見つかった。
どんなことも、ひとつ残らず、今の私に繋がっていた。さっきこの本を読み返して顔を上げたとき本当にそう思ったので、ここから先も信じて進めそうです。サンキュー過去の自分、です。
あぁ、この感覚が、僕には足りなかったんだ。
坂本真綾という人は、過去の自分が今に繋がっていることを、今の自分が未来の自分に繋がっていることを、信じているし、実感しているんだ。
昔を振り返り、たまには後悔もするけれど、それすらも含めた、全ての過去があるからこそ、今の自分がいるんだって、そんな感覚。
それってすごく前向きで、かっこいい。
僕って結構ネガティヴだから、受け入れたくないような過去から、すぐ目を逸らしてしまうんだよね。
いつの日か彼女みたいに、笑顔で「サンキュー過去の自分」と言えるような、そんな広い心とポジティヴさを持った、素敵な人に成長したいな。
そうして僕は『アイディ。』を閉じる。
坂本真綾の晴れやかな過去と、輝かしいであろう未来を、祝福しながら。そして、まぶしいと感じながら。
背表紙にはこう書かれている。
現在、そして未来へとつながる坂本真綾の足あと。