金の瞳と鉄の剣
こんなこといいな♪できたらいいな♪
レビュアー:ヨシマル
栄子:ファンタジー言うたらなあ――
ヨシマル:ん?
栄子:『創竜伝』とか『十二国記』とか有名やと思うねんけど。
ヨシマル:まあ、長いシリーズといえばこの二つだよね。現代伝奇と異世界ファンタジーじゃ金字塔と言える作品ではあると思うよ。
栄子:せやろ。代表作やんか。その二作品に共通してることってさあ――
ヨシマル:共通してること? 何かあったっけ?
栄子:まあ特に意味はないんやけどな。どちらも最新刊が最新刊といってええんかなって感じだとか、そういえば次回更新まだなんかなあとか、そんなこと考えてへんよ。
ヨシマル:……充分何が言いたいか伝わってきたよ。
栄子:あたしは何も言うてないけどな!
ヨシマル:ということで今回は『金の瞳と鉄の剣』(以下『金鉄』)のレビューだよ。
栄子:『金鉄』に関しては通算三回目のレビューやな。
ヨシマル:以前はそれぞれの回に分けてきたけど、今回は全体を通してのレビューをしてみようと思う。
栄子:三回目か。星の鼓動が愛だったり、宇宙とめぐりあったりせなあかんのやな。
ヨシマル:しないよ。三部作のつもりじゃないんだから。あと、永遠への回帰とか裁かれし者とかでもないからね。
栄子:くっ。さすがにネタがマイナーすぎや。
ヨシマル:先手必勝。てことで『金鉄』レビューするよ。
栄子:しゃあなしやな。
ヨシマル:……しっかりやってよ。
栄子:まあまあ。
ヨシマル:本書は戦士・タウと「本物」の魔術師・キアによる冒険ファンタジーだね。以前にも言ったけれど人間タウと「ヒトならざる者」キアの友情が注目どころになってる。
栄子:第一回でそんなこと言うてたやんな。
ヨシマル:もちろんそれだけじゃないんだけどね。
栄子:魔術シーンなんか格好良いし。
ヨシマル:数少ないながら戦闘シーンは気合入ってて、盛り上がるというよりは臨場感たっぷりに仕上がってると思う。
栄子:パッと見バトルものっぽいのに戦闘シーン本当に少ないんやな。
ヨシマル:実はそこが全体の雰囲気作りとかにも影響してて、人間関係を掘り下げようとしていることにもつながってるんだろうね。戦闘が行われたことは書くけれど、戦闘そのものを書かないことで全体に独特のタメみたいなものができてる。一回一回が短編であることにも関係するかもしれないけれど、そうすることでクライマックスがどこかって分かりやすくなって、緊張感持って読んでいけるんだよね。
栄子:キアが魔術を使うタイミングとかやな。
ヨシマル:そうだね。
栄子:なるほどねえ。あ、戦闘といえば、重要なこと気づいてしまったんやけど、言うていい?
ヨシマル:ええけど。何なの?
栄子:いやあ、よくよく考えてみたら――
ヨシマル:みたら?
栄子:タウって弱ない?
ヨシマル:…………。えっ?
栄子:いやだから、タウって弱ない?
ヨシマル:そ、そ、そんなことないんじゃ――
栄子:せやって。第一回は竜に瞬殺やろ。第二回はいいとこなしやし、それ以降だって活躍してるの第四回の奥様相手くらいやんか。たまの戦闘でも倒してる相手ってそんなに強敵いいひんかったし。
ヨシマル:いや、でも戦った相手ってのが強いのばかりだったんじゃ。
栄子:そら、人外系の相手もいたやろうけど、太刀打ちできないのって第一回の竜くらいやん。他の人外系の敵って圧倒的に強い感じの描かれ方してなかったし、人間相手ならほぼ全敗なんやない?
ヨシマル:うーん。
栄子:まあ全敗は言い過ぎなんかもしれへんけど、数人相手でこられたら逃げているか、キアに助けてもらってるかしてるわけやし。なんか、こう、威勢の良い割にはヘタレってるんよね。
ヨシマル:まあ、そう言われればそうかもしれない気もしてきた。
栄子:かもしれないやなくて、実際ヘタレなんよ。そのくせ言うことだけは大きなこと言うんやから、余計にたち悪いし。
ヨシマル:なにも、そこまで言わなくても。
栄子:いーや、言わしてもらうよ。タウはヘタレでその上、ピンチにいなったらいっつもキアに助けてもらう「のび太」キャラなんや!
ヨシマル:うわあ……。
栄子:つまりはキアが「ドラえもん」なんや!
ヨシマル:うわあ…………。
栄子:呆れすぎやろ!
ヨシマル:いや、だって……。
栄子:今までさんざん変な例えしといてのび太で呆れるとかないやんか。
ヨシマル:それ言われると言い返せないけど。
栄子:実際ドラえもんのひみつ道具はキアの魔術を引き合いに出せるし。
ヨシマル:進みすぎた技術はなんとかってことだね。
栄子:わざわざそんな格言持ってこんくてもええねんけど。とにかくタウは生き残るためにキアの力を使ってる。のび太がジャイアンに代表されてる脅威から身を守るためにドラえもんのひみつ道具の力を借りるのと似たようなものなんやないんかな。それに、実力のありなしは置いといて、二人とも夢語っちゃうタイプやしね。付き合うのは疲れそうやわ。
ヨシマル:うーん、なるほどね。
栄子:まあ、のび太の場合は自分からひみつ道具に頼りにいってるのに対して、タウの場合は自分でなんとかしようって計画立ててるところが違いっちゃ違いなんやけど。
ヨシマル:のび太はもとからドラえもんに助けてもらうことを前提にしてジャイアンやスネオに対して大口をたたくことが多いんだね。それに比べると『金鉄』のタウはあくまでも自分が考えた計画が失敗して、不可抗力的にキアのひみつ道具=魔術に救ってもらうっていう図式になるんかな。
栄子:そやな。
ヨシマル:うん。けど、それって大きな違いなんじゃないかな。
栄子:どういうことなん?
ヨシマル:『ドラえもん』の作中の場合、往々にしてのび太がドラえもんを当てにして大口をたたくときって最終的に失敗してると思う。それはのび太の計画性のなさや、『ドラえもん』ていう作品の道徳性みたいなものによってるんだろうね。対してタウはというと、前にも言ったようにキアの魔術は最終手段、というより最終手段がどうしようもなかった場合に発動する裏技的な扱いなんだ。だから、キアの魔術っていうのを必殺技的に使ってもそこにタウが成功しても許される不自然さがなくなっているんじゃないかな。
栄子:ごちゃごちゃ言うてるけど、平ったく言うと真面目に努力したから良かったってことやろ。
ヨシマル:まとめるとそういうことになるのかな。自分にできることをコツコツ努力してるところに惹かれる人も多いのかもしれない。
栄子:そうやって真面目に努力したところで、やっぱり失敗しちゃってるところが可愛いんやけどな。
ヨシマル:結局ヘタレのままか!
栄子:ヘタレ男子は大好物や!
ヨシマル:ん?
栄子:『創竜伝』とか『十二国記』とか有名やと思うねんけど。
ヨシマル:まあ、長いシリーズといえばこの二つだよね。現代伝奇と異世界ファンタジーじゃ金字塔と言える作品ではあると思うよ。
栄子:せやろ。代表作やんか。その二作品に共通してることってさあ――
ヨシマル:共通してること? 何かあったっけ?
栄子:まあ特に意味はないんやけどな。どちらも最新刊が最新刊といってええんかなって感じだとか、そういえば次回更新まだなんかなあとか、そんなこと考えてへんよ。
ヨシマル:……充分何が言いたいか伝わってきたよ。
栄子:あたしは何も言うてないけどな!
ヨシマル:ということで今回は『金の瞳と鉄の剣』(以下『金鉄』)のレビューだよ。
栄子:『金鉄』に関しては通算三回目のレビューやな。
ヨシマル:以前はそれぞれの回に分けてきたけど、今回は全体を通してのレビューをしてみようと思う。
栄子:三回目か。星の鼓動が愛だったり、宇宙とめぐりあったりせなあかんのやな。
ヨシマル:しないよ。三部作のつもりじゃないんだから。あと、永遠への回帰とか裁かれし者とかでもないからね。
栄子:くっ。さすがにネタがマイナーすぎや。
ヨシマル:先手必勝。てことで『金鉄』レビューするよ。
栄子:しゃあなしやな。
ヨシマル:……しっかりやってよ。
栄子:まあまあ。
ヨシマル:本書は戦士・タウと「本物」の魔術師・キアによる冒険ファンタジーだね。以前にも言ったけれど人間タウと「ヒトならざる者」キアの友情が注目どころになってる。
栄子:第一回でそんなこと言うてたやんな。
ヨシマル:もちろんそれだけじゃないんだけどね。
栄子:魔術シーンなんか格好良いし。
ヨシマル:数少ないながら戦闘シーンは気合入ってて、盛り上がるというよりは臨場感たっぷりに仕上がってると思う。
栄子:パッと見バトルものっぽいのに戦闘シーン本当に少ないんやな。
ヨシマル:実はそこが全体の雰囲気作りとかにも影響してて、人間関係を掘り下げようとしていることにもつながってるんだろうね。戦闘が行われたことは書くけれど、戦闘そのものを書かないことで全体に独特のタメみたいなものができてる。一回一回が短編であることにも関係するかもしれないけれど、そうすることでクライマックスがどこかって分かりやすくなって、緊張感持って読んでいけるんだよね。
栄子:キアが魔術を使うタイミングとかやな。
ヨシマル:そうだね。
栄子:なるほどねえ。あ、戦闘といえば、重要なこと気づいてしまったんやけど、言うていい?
ヨシマル:ええけど。何なの?
栄子:いやあ、よくよく考えてみたら――
ヨシマル:みたら?
栄子:タウって弱ない?
ヨシマル:…………。えっ?
栄子:いやだから、タウって弱ない?
ヨシマル:そ、そ、そんなことないんじゃ――
栄子:せやって。第一回は竜に瞬殺やろ。第二回はいいとこなしやし、それ以降だって活躍してるの第四回の奥様相手くらいやんか。たまの戦闘でも倒してる相手ってそんなに強敵いいひんかったし。
ヨシマル:いや、でも戦った相手ってのが強いのばかりだったんじゃ。
栄子:そら、人外系の相手もいたやろうけど、太刀打ちできないのって第一回の竜くらいやん。他の人外系の敵って圧倒的に強い感じの描かれ方してなかったし、人間相手ならほぼ全敗なんやない?
ヨシマル:うーん。
栄子:まあ全敗は言い過ぎなんかもしれへんけど、数人相手でこられたら逃げているか、キアに助けてもらってるかしてるわけやし。なんか、こう、威勢の良い割にはヘタレってるんよね。
ヨシマル:まあ、そう言われればそうかもしれない気もしてきた。
栄子:かもしれないやなくて、実際ヘタレなんよ。そのくせ言うことだけは大きなこと言うんやから、余計にたち悪いし。
ヨシマル:なにも、そこまで言わなくても。
栄子:いーや、言わしてもらうよ。タウはヘタレでその上、ピンチにいなったらいっつもキアに助けてもらう「のび太」キャラなんや!
ヨシマル:うわあ……。
栄子:つまりはキアが「ドラえもん」なんや!
ヨシマル:うわあ…………。
栄子:呆れすぎやろ!
ヨシマル:いや、だって……。
栄子:今までさんざん変な例えしといてのび太で呆れるとかないやんか。
ヨシマル:それ言われると言い返せないけど。
栄子:実際ドラえもんのひみつ道具はキアの魔術を引き合いに出せるし。
ヨシマル:進みすぎた技術はなんとかってことだね。
栄子:わざわざそんな格言持ってこんくてもええねんけど。とにかくタウは生き残るためにキアの力を使ってる。のび太がジャイアンに代表されてる脅威から身を守るためにドラえもんのひみつ道具の力を借りるのと似たようなものなんやないんかな。それに、実力のありなしは置いといて、二人とも夢語っちゃうタイプやしね。付き合うのは疲れそうやわ。
ヨシマル:うーん、なるほどね。
栄子:まあ、のび太の場合は自分からひみつ道具に頼りにいってるのに対して、タウの場合は自分でなんとかしようって計画立ててるところが違いっちゃ違いなんやけど。
ヨシマル:のび太はもとからドラえもんに助けてもらうことを前提にしてジャイアンやスネオに対して大口をたたくことが多いんだね。それに比べると『金鉄』のタウはあくまでも自分が考えた計画が失敗して、不可抗力的にキアのひみつ道具=魔術に救ってもらうっていう図式になるんかな。
栄子:そやな。
ヨシマル:うん。けど、それって大きな違いなんじゃないかな。
栄子:どういうことなん?
ヨシマル:『ドラえもん』の作中の場合、往々にしてのび太がドラえもんを当てにして大口をたたくときって最終的に失敗してると思う。それはのび太の計画性のなさや、『ドラえもん』ていう作品の道徳性みたいなものによってるんだろうね。対してタウはというと、前にも言ったようにキアの魔術は最終手段、というより最終手段がどうしようもなかった場合に発動する裏技的な扱いなんだ。だから、キアの魔術っていうのを必殺技的に使ってもそこにタウが成功しても許される不自然さがなくなっているんじゃないかな。
栄子:ごちゃごちゃ言うてるけど、平ったく言うと真面目に努力したから良かったってことやろ。
ヨシマル:まとめるとそういうことになるのかな。自分にできることをコツコツ努力してるところに惹かれる人も多いのかもしれない。
栄子:そうやって真面目に努力したところで、やっぱり失敗しちゃってるところが可愛いんやけどな。
ヨシマル:結局ヘタレのままか!
栄子:ヘタレ男子は大好物や!