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読者レビュー

銀

ブレイク君コア

新人賞らしい疾走感ある傑作!

レビュアー:USB農民 Adept

この本を手に取った理由は、この作品が第一回星海社FICTIONS新人賞受賞作であるからだ。
だから、期待していたのは新人賞受賞作らしい、この作者にしかない魅力だ。物語なりアイディアなり、これまでに見たことのない何かを期待せざるをえない。

果たして、この作品にはその魅力があった。
しかし、それは物語でもアイディアでもなかった。
それは青春の狂騒的スピードを感じさせる、登場人物の感情の変化と、それを描写する勢いある語り口だった。

主人公・入山優太の語りは、大雑把で、論理的な精密性はあまり感じられない。
しかし、作中で事件が進展するたびに、彼は「過去」の自分の感情よりも、「今」の自分の感情を優先させる。そうやって、停滞せずに前へ前へと進んでいく。
「好きな人」が「好きだった人」になってしまったことに戸惑いつつも、「今、好きな人」に対する気持ちこそ一番大事なのだと信じる。
ここに私は青春を感じた。

青春時代に、誰かを好きになった後で、他の人を好きになることは誰にでもあると思う。それは何も特別なことではない。
ただ、入山優太は、その感情が一日とか数時間とか、異様な速度で変化していく。
入山優太の青春は、その速度こそが特別だった。
青春の過ぎていく速度が速ければ速いほど、一瞬一瞬の感情が失われていくのも速い。だが、彼は自分の過去の感情が失われていくことを、感情の変化を恐れない。「今」ここにいる自分の感情こそを、常に大切にしようとする。
その語り手の意識こそ、この作品特有の勢いを生みだす原動力となっている。

この勢い、疾走感は、今までの青春小説にありそうでなかった、新しい語り口だと思う。
だから私は、この小説を評価するし、この小説が好きだ。

2011.08.17

のぞみ
作品の好きな部分を伝えたいんだっていう感じが伝わってきました!
さやわか
うむうむ、自分が好きなもののことをどうにかして読み手に理解させたいという思い、これぞまさにレビュアー騎士団の言う「愛情」というやつです。だからこのレビューは「銅」に値します。
のぞみ
読みたくなりますよね。「青春小説にありそうでなかった、新しい語り口だと思う。」って辺りが、気になって、読んでみようかなって思う気がします。
さやわか
そうです。いいレビューというのは読む人に「読みたいな」と思わせるような読み物なのです。しかし「受賞作だから読んでみてよ」と書いても、誰も読みはしない。そこで「面白いから読んでほしい」でもいいし「あっちの作品の方が面白い」でもいいから、書き手にレビューを書かせるだけの熱意を読み手に届かせるのです。「この作品には何かそこまでさせるような価値があるのだ」と思わせる。これが、レビュアー騎士団が第一に「愛情」を重視している理由です。加えて、このレビューは『ブレイク君コア』のレビューとしてもなかなか着眼点が良く、論理性もあります。なので今回は「銀」にしたいと思いますぞ!

本文はここまでです。