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読者レビュー

鉄

ブレイク君コア

加速させられる心

レビュアー:くまくま

 一目ぼれした女の子が目の前でトラックにはねられる。しかも目覚めた女の子は別人格に変わっていた。でもその別人格にひかれている自分がいる。彼の気持ちの移り変わりは、激しく、そして早い。
 こんな奇妙な現象に巻き込まれなければ、入山優太は飯田いくみと段々仲良くなり、告白したらどうなっていたかは分からないが、ゆっくりと時間をかけて気持ちを整理していくことが出来ただろう。しかし、彼らが遭遇した出来事のつながりは、超高速の心の流れを生み出すことになってしまった。

、もし入山優太がこの心のビートに乗り切れなかったとしたら、彼はただの傍観者のまま、自分の知らない所で事件に決着がついてしまい、淡い気持ちも行き場をなくしたまま漂うことになっただろう。
 だが、実際に彼はビートに乗った。すごいスピードで移り変わっていく自分の気持ちに折り合いをつけ、自分が望む解決をその決断で選び取った。だからこの物語のビートを刻んだのは、飯田いくみでも武藤でもなく、やはり入山優太なのだと思う。

2011.08.17

のぞみ
ざっくりと書かれたあらすじが、良いな~と思いました。
さやわか
うむ、いい! くまくまさんはわかりやすい文体で過不足なくそういったことを書ける人ですな。
のぞみ
短い中でも作品の魅力が伝わるようにしているように感じました~。
さやわか
そうですな。ただ、これもまたくまくまさんの文章の課題ではないかと思うのですが、実にうまく作品について整理された先で、やっぱりどうしても「それで、結局どうなの?」という感じのまま終わってしまいがちなのですね。「だからこの物語のビートを刻んだのは、飯田いくみでも武藤でもなく、やはり入山優太なのだと思う」というのは、物語の構造を指摘しているのに近いのです。そうした構造分析は面白いものなのですが、それがゴールになってしまうと、この本を読んだことがない人に訴えかけるものにはなりにくい。そのことがどんな価値を持っていて、だからこの作品自体がなんなのか、それをなぜレビュアーが伝えたいのか、それを記述することがレビュアー騎士団における「愛情」につながると思いますよ。

本文はここまでです。