ブレイク君コア
青春について本気出して考えてみた
レビュアー:ヨシマル
栄子:また君に~♪ 恋してる♪ いままでよ~りも深~うかく♪
ヨシマル:うわっ、今度は何歌ってるの?
栄子:坂本冬美が歌ってヒットした『また君に恋してる』やんか。
ヨシマル:いや、それは知ってるよ。
栄子:ブレイク君恋!
ヨシマル:ダジャレか!
栄子:次の『不都合な真実』の公開は広島の造船の街やで。
ヨシマル:?
栄子:呉行くアル・ゴア!
ヨシマル:もう、意味分かんないよ。
栄子:アンタ! 自分もシャーマンだからって本気で占ってないんでしょ!
ヨシマル:は?
栄子:フレイが卑弥呼か!
ヨシマル:そんなボケ誰が分かるんだよ!
栄子:そのくらい突っ込んでえな。こっちは久しぶりで溜まってるんやから。
ヨシマル:知らないよ。しかもボケが無理やり過ぎるんだよ。
栄子:それ行け! 栄子や!
ヨシマル:もう全く原型ないじゃないか!!!!
栄子:まったく。久々のレビューなのに相変わらず変なボケばっかりして。突っ込むこっちの身にもなってくれよ。今回が『ブレイク君コア』のレビューだからって適当なボケで許して貰えると思ったら大間違いなのに。そろそろあらすじ紹介行くよ。ってあれ? 栄子が喋ってることになってる。あれあたしの体が目の前に……。――まさか、さっきの突っ込みのせいで栄子とヨシマルの心と体が入れ替わってしまっ――
ヨシマル:てないよ! 文章だけなんだからボケなのか本当なのか分かりづらいんだよ。
栄子:うぅ。少しくらい乗ってくれてもええやんか。
ヨシマル:いや、本当に一回でも乗っかってしまうと訳が分からなくなってしまうから。第三者から見た説明がないと入れ替わりが起こったかなんて分からないし、だいたい会話だけなんだから入れ替わっても問題ないでしょ。
栄子:いやいや、問題大有りやろ。なんかこう大事な何かが。
ヨシマル:細かいことは気にしない。もう六百文字以上浪費してるんだから。じゃあ、あらためてあらすじ紹介お願い。
栄子:はいはい。主人公/語り部の入山はある日の下校中偶然目撃した自転車を蹴り続ける少女・飯田に恋をする。なんとか飯田と仲良くなって一緒に下校するようになったけれど、突然飯田が車に撥ねられてしまって――。ていう話やね。
ヨシマル:冒頭はそんなストーリーだね。ただ、飯田が車に撥ねられてからの展開が全く予想できなくて印象強いから、このあらすじではあまりあらすじ紹介にはなってないのが実際なんだよね。
栄子:最後まで二転三転しながらテンポ良く進むやんな。
ヨシマル:そうだね。切れ目なく話が進むから一気に読んでしまった人も多いんじゃないかな。
栄子:季節は書いてへんけど、夏ってことなんかな。イラストじゃ夏服着てるし。
ヨシマル:確か明記はなかったとは思うけど、梅雨だろうね。雨降って地固まる。青春のもやもや感から出発して爽快なラストを迎える本書っぽい季節だと思うよ。
栄子:まさに青春って話やからなあ。高校生が恋してエロくてグロくて……。
ヨシマル:そういった要素をごちゃまぜにして一つの物語になってるところがタイトルにも反映されてる訳だし、青春ってものに対してかなり自覚的な印象を覚えたんだ。
栄子:青春なあ。言(ゆ)うても普通は特別大事件に遭ったりしないんちゃうかなあ。
ヨシマル:そりゃ、高校生全員が何かしらの事件に巻き込まれてたら日本は大変なことになってしまうよ。でもまあ、小さな事でも感傷的な気分になってしまうことはあるしね。
栄子:ヨシマルもそんな時期があったん?
ヨシマル:まあね。もう古い話になるけど。それで改めてそのときの気分になって読んでみたら、昔に感じていた停滞感を思い出したんだ。
栄子:停滞感?
ヨシマル:うん。青春って停滞の時期だとヨシマルは思ってるんだ。さっきも言ったけど青春時代、特に高校生の時分に特別な経験ができる人なんて限られているし、それで劇的な変化が起こる人なんて滅多にいないよね。
栄子:まあ、せやなあ。
ヨシマル:それで本書なんだけど、入山にしても飯田にしても物語が始まったときと終わったときを比べてみてどれだけ変わったかってことになるとそんなに変化はないと思うんだ。
栄子:そうなん? いろいろ変わっていった部分てあると思うねんけど。
ヨシマル:もちろん、飯田がムツミと友達になったり、入山とムツミが両思いになったりと変化してる部分はあるけれど、それって特別な事件に巻き込まれたからこそ起きたことなんかではなくて、普通に高校生活送ってたらいつかは巡り会える類のことだと思うんだ。
栄子:うーん。でもこの事故が起こってなかったらムツミとは出会えてなかったんよね。
ヨシマル:そうなんだけど、ムツミと出会っていなかったら、ムツミの場所は丁度入山と飯田が入っていたんじゃないかな。
栄子:なんにもなかったら、入山と飯田が付き合ってたってこと?
ヨシマル:そうだね。中盤の展開をまとめて飛ばして考えてみるといいかもしれない。入山は恋をして、恋に向かって突き進んでる。飯田は自分のことを分かってくれるかもしれない人を探し続けている。ムツミは兄のことで引け目を感じながら、だれかと普通に恋愛もしてるだろうし、墓無は単に仕事をしてただけ。ムツムは結局アレだし。
栄子:関係する人が変わっても生き方の根本は変わらないってことなんかな。
ヨシマル:そういうこと。結局入山と飯田たちが大きな事件を乗り越えたことになるかは分からないけれど、大きな経験した上でのエピローグになってるはずなんだ。けれども、そこには大きな経験にこそ由来するものってない気がするんだよね。
栄子:あたしは色々あって入山も飯田も新しい出会いができて成長していったんやなって思ったけど?
ヨシマル:実際その通りではあると思ってるよ。でも、そうして発生するような成長は特別な何かによってだけもたらされるものだけではなくて、もっと日常的なことでも充分に代替可能なんだと思えてしかたがないんだ。
栄子:んーと、だからどういうことなん?
ヨシマル:そこで最初に言ってた停滞感って話になるんだけど、平ったく言えば飯田がトラックに轢かれてから起こる事件なんて彼ら彼女らにとって無意味な時間だったんじゃないかってこと。
栄子:む、無意味!?
ヨシマル:うん。例え飯田がトラックに轢かれなくてもエピローグのような展開にはきっとなっていただろうし、誰の人生にもあまり影響しないものだったんじゃないかなって思えるんだ。だから進んでいるように見てて実は全く進んでない停滞感なんだ。
栄子:うーん。分かったような分からんような……。停滞感なんて読んでて感じなかったし、むしろ爽快感みたいなん感じたよ。
ヨシマル:文章自体は垢抜けてないけど、読みやすいしスピード感もしっかり出てるから、読んでて気持ちの良いものだし、爽快感はヨシマルも感じたよ。
栄子:せやったら――
ヨシマル:だからこそなんだよね。この停滞感は青春の象徴の一つなんだよ。たぶん著者はこんな停滞感なんて全く考えてなんかいないだろうし、こんなふうに捉えるのも単なるひねくれ思考でしかないのかもしれないけれど、そこには確実に青春して停滞してる高校生が描かれてるんだ。
栄子:知らず知らずのうちに青春に停滞を覚えてるんやな。
ヨシマル:でも、その停滞っていうのは決して否定されるようなものではないと思うし、停滞しているからこそ疾走感とか勢いっていうものが際立ってくるんだと思うんだ。
栄子:共存してるんやね。
ヨシマル:そこが興味深いところなんだよね。疾走感を感じるにせよ、停滞感を覚えるにせよ、本書が青春の話であることには変わりはないし、どんな人が読んでも青春の日々に思いを馳せることができるんじゃないかな。
栄子:なるほどやなあ。青春にも色々な見方があるんやなあ。それにしてもヨシマルって――
ヨシマル:ん?
栄子:青春時代になんか辛いことあったん?
ヨシマル:え?
栄子:青春って単語に拘ってるし、なんか考えひねくれてるし。辛いことあったんなら相談のろか?
ヨシマル:そんなんじゃないって。
栄子:みんな初めはそう言うんやって。きっと辛いことがあったんやろ。恥ずかしがることないて、お姉さんに任せなさい。
ヨシマル:だから違うって。
栄子:はっ。まさか高校生にもなって先生に「お母さん!」なんて言ってまったん?
ヨシマル:違うわ!
ヨシマル:うわっ、今度は何歌ってるの?
栄子:坂本冬美が歌ってヒットした『また君に恋してる』やんか。
ヨシマル:いや、それは知ってるよ。
栄子:ブレイク君恋!
ヨシマル:ダジャレか!
栄子:次の『不都合な真実』の公開は広島の造船の街やで。
ヨシマル:?
栄子:呉行くアル・ゴア!
ヨシマル:もう、意味分かんないよ。
栄子:アンタ! 自分もシャーマンだからって本気で占ってないんでしょ!
ヨシマル:は?
栄子:フレイが卑弥呼か!
ヨシマル:そんなボケ誰が分かるんだよ!
栄子:そのくらい突っ込んでえな。こっちは久しぶりで溜まってるんやから。
ヨシマル:知らないよ。しかもボケが無理やり過ぎるんだよ。
栄子:それ行け! 栄子や!
ヨシマル:もう全く原型ないじゃないか!!!!
栄子:まったく。久々のレビューなのに相変わらず変なボケばっかりして。突っ込むこっちの身にもなってくれよ。今回が『ブレイク君コア』のレビューだからって適当なボケで許して貰えると思ったら大間違いなのに。そろそろあらすじ紹介行くよ。ってあれ? 栄子が喋ってることになってる。あれあたしの体が目の前に……。――まさか、さっきの突っ込みのせいで栄子とヨシマルの心と体が入れ替わってしまっ――
ヨシマル:てないよ! 文章だけなんだからボケなのか本当なのか分かりづらいんだよ。
栄子:うぅ。少しくらい乗ってくれてもええやんか。
ヨシマル:いや、本当に一回でも乗っかってしまうと訳が分からなくなってしまうから。第三者から見た説明がないと入れ替わりが起こったかなんて分からないし、だいたい会話だけなんだから入れ替わっても問題ないでしょ。
栄子:いやいや、問題大有りやろ。なんかこう大事な何かが。
ヨシマル:細かいことは気にしない。もう六百文字以上浪費してるんだから。じゃあ、あらためてあらすじ紹介お願い。
栄子:はいはい。主人公/語り部の入山はある日の下校中偶然目撃した自転車を蹴り続ける少女・飯田に恋をする。なんとか飯田と仲良くなって一緒に下校するようになったけれど、突然飯田が車に撥ねられてしまって――。ていう話やね。
ヨシマル:冒頭はそんなストーリーだね。ただ、飯田が車に撥ねられてからの展開が全く予想できなくて印象強いから、このあらすじではあまりあらすじ紹介にはなってないのが実際なんだよね。
栄子:最後まで二転三転しながらテンポ良く進むやんな。
ヨシマル:そうだね。切れ目なく話が進むから一気に読んでしまった人も多いんじゃないかな。
栄子:季節は書いてへんけど、夏ってことなんかな。イラストじゃ夏服着てるし。
ヨシマル:確か明記はなかったとは思うけど、梅雨だろうね。雨降って地固まる。青春のもやもや感から出発して爽快なラストを迎える本書っぽい季節だと思うよ。
栄子:まさに青春って話やからなあ。高校生が恋してエロくてグロくて……。
ヨシマル:そういった要素をごちゃまぜにして一つの物語になってるところがタイトルにも反映されてる訳だし、青春ってものに対してかなり自覚的な印象を覚えたんだ。
栄子:青春なあ。言(ゆ)うても普通は特別大事件に遭ったりしないんちゃうかなあ。
ヨシマル:そりゃ、高校生全員が何かしらの事件に巻き込まれてたら日本は大変なことになってしまうよ。でもまあ、小さな事でも感傷的な気分になってしまうことはあるしね。
栄子:ヨシマルもそんな時期があったん?
ヨシマル:まあね。もう古い話になるけど。それで改めてそのときの気分になって読んでみたら、昔に感じていた停滞感を思い出したんだ。
栄子:停滞感?
ヨシマル:うん。青春って停滞の時期だとヨシマルは思ってるんだ。さっきも言ったけど青春時代、特に高校生の時分に特別な経験ができる人なんて限られているし、それで劇的な変化が起こる人なんて滅多にいないよね。
栄子:まあ、せやなあ。
ヨシマル:それで本書なんだけど、入山にしても飯田にしても物語が始まったときと終わったときを比べてみてどれだけ変わったかってことになるとそんなに変化はないと思うんだ。
栄子:そうなん? いろいろ変わっていった部分てあると思うねんけど。
ヨシマル:もちろん、飯田がムツミと友達になったり、入山とムツミが両思いになったりと変化してる部分はあるけれど、それって特別な事件に巻き込まれたからこそ起きたことなんかではなくて、普通に高校生活送ってたらいつかは巡り会える類のことだと思うんだ。
栄子:うーん。でもこの事故が起こってなかったらムツミとは出会えてなかったんよね。
ヨシマル:そうなんだけど、ムツミと出会っていなかったら、ムツミの場所は丁度入山と飯田が入っていたんじゃないかな。
栄子:なんにもなかったら、入山と飯田が付き合ってたってこと?
ヨシマル:そうだね。中盤の展開をまとめて飛ばして考えてみるといいかもしれない。入山は恋をして、恋に向かって突き進んでる。飯田は自分のことを分かってくれるかもしれない人を探し続けている。ムツミは兄のことで引け目を感じながら、だれかと普通に恋愛もしてるだろうし、墓無は単に仕事をしてただけ。ムツムは結局アレだし。
栄子:関係する人が変わっても生き方の根本は変わらないってことなんかな。
ヨシマル:そういうこと。結局入山と飯田たちが大きな事件を乗り越えたことになるかは分からないけれど、大きな経験した上でのエピローグになってるはずなんだ。けれども、そこには大きな経験にこそ由来するものってない気がするんだよね。
栄子:あたしは色々あって入山も飯田も新しい出会いができて成長していったんやなって思ったけど?
ヨシマル:実際その通りではあると思ってるよ。でも、そうして発生するような成長は特別な何かによってだけもたらされるものだけではなくて、もっと日常的なことでも充分に代替可能なんだと思えてしかたがないんだ。
栄子:んーと、だからどういうことなん?
ヨシマル:そこで最初に言ってた停滞感って話になるんだけど、平ったく言えば飯田がトラックに轢かれてから起こる事件なんて彼ら彼女らにとって無意味な時間だったんじゃないかってこと。
栄子:む、無意味!?
ヨシマル:うん。例え飯田がトラックに轢かれなくてもエピローグのような展開にはきっとなっていただろうし、誰の人生にもあまり影響しないものだったんじゃないかなって思えるんだ。だから進んでいるように見てて実は全く進んでない停滞感なんだ。
栄子:うーん。分かったような分からんような……。停滞感なんて読んでて感じなかったし、むしろ爽快感みたいなん感じたよ。
ヨシマル:文章自体は垢抜けてないけど、読みやすいしスピード感もしっかり出てるから、読んでて気持ちの良いものだし、爽快感はヨシマルも感じたよ。
栄子:せやったら――
ヨシマル:だからこそなんだよね。この停滞感は青春の象徴の一つなんだよ。たぶん著者はこんな停滞感なんて全く考えてなんかいないだろうし、こんなふうに捉えるのも単なるひねくれ思考でしかないのかもしれないけれど、そこには確実に青春して停滞してる高校生が描かれてるんだ。
栄子:知らず知らずのうちに青春に停滞を覚えてるんやな。
ヨシマル:でも、その停滞っていうのは決して否定されるようなものではないと思うし、停滞しているからこそ疾走感とか勢いっていうものが際立ってくるんだと思うんだ。
栄子:共存してるんやね。
ヨシマル:そこが興味深いところなんだよね。疾走感を感じるにせよ、停滞感を覚えるにせよ、本書が青春の話であることには変わりはないし、どんな人が読んでも青春の日々に思いを馳せることができるんじゃないかな。
栄子:なるほどやなあ。青春にも色々な見方があるんやなあ。それにしてもヨシマルって――
ヨシマル:ん?
栄子:青春時代になんか辛いことあったん?
ヨシマル:え?
栄子:青春って単語に拘ってるし、なんか考えひねくれてるし。辛いことあったんなら相談のろか?
ヨシマル:そんなんじゃないって。
栄子:みんな初めはそう言うんやって。きっと辛いことがあったんやろ。恥ずかしがることないて、お姉さんに任せなさい。
ヨシマル:だから違うって。
栄子:はっ。まさか高校生にもなって先生に「お母さん!」なんて言ってまったん?
ヨシマル:違うわ!