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読者レビュー

銅

星の海に向けての夜想曲

待ってた、待ってる

レビュアー:ラム Adept

アニバーサリーノベル第一弾。星海社一周年。佐藤友哉十周年。
発表があったときから楽しみにしていた。
七夕にうってつけの小説。
そう、空に花の咲いた世界で、唯一星がみえる日。
閉ざされた世界の中で、見ることを許されない星空を君と。
ロマンチックではあるだろう。奇跡的でもあるだろう。

でも読み終わってから思い出した。
太田さんはユヤタンに泣ける話をオーダーしていなかったか。ユヤタンは快諾していなかったか。

泣けなかったよ!
泣く要素なんてなかったよ!
むしろ前向きな良い話だった。
記念日に泣ける話をリクエストした方にも問題がある気がしないでもないが、記念日を涙で迎えるのも趣があると言われたら否定はできない。
果たしてユヤタンはどこが「泣ける」つもりだったのだろう?
星のない1人きりの天文部、が泣けるところ?
昔、彼女が星をみて死んだところ?
その妹がいずれ花粉病で死ぬかもしれないところ?
恋が始まる前に話が終わるところ?
それとも、悔し泣きとか嬉し泣きかな。
何度読みなおしても分からない。

ねぇ私怒ってるんです。
主人公が、彼女の死を悲しんでいるというより彼女を死なせてしまった自分の不幸に酔ってるような気がしたから。
それでは泣いたりできない。
私が男だったら、共感できて悲しめたのだろうか。
そんなのズルイ。不公平。

じゃあどんな内容なら泣けるのかって?
私は、ユヤタンが泣きながら書きあげたような熱量のある作品が読みたい。小手先じゃなく、一途な感情で感動させてほしい。
これが佐藤友哉の3.11に対するアンサーだとかどうでもいい。私にとっては。

どんな佐藤友哉でも愛しているけど。
佐藤友哉の泣ける話を読んで私も泣きたいな。
ただそれだけ。

親愛なる佐藤友哉様。また泣けるカレンダー小説を書いてくださいね。待ちます。ずっと待っています。

2011.08.17

さやわか
なかなか熱っぽいレビューですな。どうでしょう。
のぞみ
短めの文章で構成されていて、さっぱりしているように感じました。あと、語りかける感じが、良いですね。
さやわか
いや、語りかける口調だからこそさっぱりして感じるのかもしれないですぞ。やっぱりさっきも書いたけど、佐藤友哉は愛される作家だなあ……。というのも、『星の海に向けての夜想曲』に対してうまい具合に両義的な評価ができていると思うのですな。「けなすレビューを書きたいけど難しい」みたいなことを言う人がたまにいるのですが、僕はまずレビュアー騎士団にとっては何らかの事物に対する愛情の量によるのですから、レビュー対象の作品を「けなす」も「ほめる」も関係ないと思っています。しかしその上で言うなら、このレビューはきちんと作品に批判的で、でも同時に何か(この場合は佐藤友哉)に対する愛情に満ちているからこその言葉であることがわかります。これはいいと思う。問題は、論拠が「自分が泣けなかった」ということだけに少し偏っているように思うのですね。たぶん「主人公が、彼女の死を悲しんでいるというより彼女を死なせてしまった自分の不幸に酔ってるような気がした」という部分をもう少し具体的に書くと締まったレビューになったかなと思います。ということで「銅」で!

本文はここまでです。