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読者レビュー

鉄

星海社朗読館『銀河鉄道の夜』

未来をこの手に

レビュアー:yagi_pon Novice

朗読館シリーズの第一弾である「銀河鉄道の夜」を購入した。講談社BOXと同じサイズのボックスには「CD+BOOK」の文字。これには、坂本真綾さんの朗読CDと竹さんのイラスト付きの本が入っている。本に関して言えば、それはただの本というよりも絵本に近い。たくさんのページにイラストが入り、イラストが入っていないページでさえ背景があって、本といわれてイメージするような白い紙と黒い文字だけのページは存在しない。文字のみで創られた「銀河鉄道の夜」の世界が、真綾さんの声と竹さんのイラストでより広がっていくようだ。
この本を出している星海社というところは、すべての出版物のイラストをオールカラーで出している。それを星海社の中の人である編集者の一人はこんなふうに言っている。「モノクロの挿絵が描かれた文芸作品を、直截的な言い方をすれば“古い”ものだと感じるようになってしまいました。カラーの挿絵による目新しさは、僕らを未来に推し進めてしまった――あるいは過去に戻れなくしてしまった、パンドラの箱だったのでは、と思うことがしばしばあります。」と。
オールカラーのイラストはたしかに未来を感じさせるものだったけれど、私にとってはこの朗読館の本が、より未来を感じさせてくれるものだと思う。一ページごとに違う背景があって、たくさんのイラストがあって、それはもう贅沢極まりない。そんな本が、この世にたくさんあるだろうか。少なくとも私は、この朗読館の本で、初めてそんな贅沢な本に出会った。CDが付いている、それ自体も贅沢ではあるが、なによりもこの本が贅沢だ。
いつか、未来のたくさんの本がこんなふうに贅沢になる日がくるかもしれない(ただ、創る側が大変すぎて実現は難しいとは思うけれども)。そんな未来が来たら、本を読むのがもっと楽しくなるような気がする。そんな未来を想像して楽しくなる。この朗読館の本は、未来の本を創造したんだと、そんな気さえする。
そして私は、そんな楽しい未来が今この手の中にある気がして、無性にうれしい。

2011.08.17

のぞみ
オールカラーの本に対して前向きな感想が聞けて、嬉しいですね。
さやわか
うむ。ここはよいですな。編集者の台詞を用いながら、オールカラーの本に期待が抱けるような書き方ができています
のぞみ
本の未来に対して色んな可能性が広がる気がしますもんね!
さやわか
そういうことです。ただ、このレビューにとっての本題である朗読館については説得性が少々目減りするように感じました。なんというかですね、自信がないのですな。「この世にたくさんあるだろうか」「少なくとも私は」「くるかもしれない」「実現は難しいとは思うけれども」「そんな未来が来たら」「気がする」「そんな気さえする」「気がして」という感じで、ここに未来があると言い切らずに主張を読者に通そうとしているのです。だから、結局ここに未来があるのかないのか、書き手がそれを信じているのか、よくわからない。前半の編集者の台詞があまりに堂々と言い切っているので、余計にそのコントラストが際立ってしまっているように思います。これはちょっと惜しかったかな。ここでは「鉄」にさせてください。さて、ということでさやわかの星海社レビュアー騎士団、長かった第九場も終了です。
のぞみ
ついに大和さんが領主になりました!
さやわか
彼には名誉ある二つ名を授けよう。では命名する! 領主・大和はこれより「無比の長槍」ロンゲンロジカランスを名乗ることが許される! その名に恥じぬよう努めるべし。そして、レビュアー騎士団、残りはあと三場!
のぞみ
次回の投稿締め切りは2011年8月25日です!
さやわか
もちろん、残る騎士の座はあと二席のみです。いよいよ全十二場も佳境。果たして誰が騎士になるのか! いかなるレビュー投稿でも待つ! では、では、第九場はこれにて幕である! どどん!

本文はここまでです。