Fate/Zero
すべての冒険者に捧ぐ
レビュアー:牛島
ライダーこと征服王イスカンダル。
その最後の臣、ウェイバー。
あらゆるキャラクターを悲劇が襲う悪辣な物語である「Fate/zero」において、一抹の清涼剤として胸踊る冒険譚を届けてくれた名コンビ。
彼らが私に与えた影響は計り知れません。
前へ前へ、ただ前に。
胸の中にあるこの情熱は、確かに彼らに貰ったものです。
白状しておくと。
「Fate/Zero」を初めて読んだとき、私は切嗣の最後に涙するでもなく、セイバーの末路に同情するでもなく、ただウェイバーに嫉妬しました。
……だって羨ましいじゃないですか。
ウェイバー・ベルベット。自己を(彼にとって)正しく評価してくれる場を求め鬱窟した日常を送り、己の価値を信じようと必死なのに実は自分が矮小な存在だと思っている――その姿は紛れもなく等身大の少年そのものです。
そんな少年が伝説の英雄に導かれ、世界制服へと乗り出していく。
振り回されながらいやいや言いながらも王道の冒険物語を突き進む。
パッと見それはご都合主義の物語で、まあ、言ってしまえば「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョンの立場に対して中学生男子が抱く羨ましさと似通ったものを感じてしまったわけです。
初めて読んだとき、私はウェイバーよりも更に幼く未熟でした。みっともなくも思ったものです。「なぜ自分は臣下の誉れに与れないのか」と。……今思うと、恥ずかしい限り、汗顔の至りですが。
ウェイバーはただ幸運に与っただけの少年ではありません。「パワフルなキャラクターの相棒」という立場に終わらず、彼は大きく成長します。
「世界を征服する」という大望に誘うイスカンダル。
彼の言葉を受けて忠誠を誓うウェイバー。
聖杯戦争が終結した後も、ウェイバーは己の中にイスカンダルが遺した言葉が永遠のものであると確認します。イスカンダルに恥じない男になることを一人誓います。ただ、彼の言葉と笑顔だけを支えとして。
それはひょっとしたら、それは一時の思い込みかもしれません。あるいはどこかで死後「王の軍勢」に召し抱えられることを望んでいるのかもしれません。
しかし、それでもウェイバーの決意は美しい。イスカンダルと過ごすうちに彼が手に入れたものは、まさしくどんな聖杯よりも価値あるものです。
ドラえもんから離れたのび太よろしく、ウェイバーもまたイスカンダルから自立します。その姿は実はイスカンダルに憧れたすべての読者の範となるものです。
イスカンダルという規格外の男に憧れた――だったら、私もただ憧れている場合ではありません。己の道を進むのみです。
信じる道を突き進むことの爽快さを、私は彼らに教わりました。憧れるだけだったそうした生き方は「偉大な、選ばれた英雄」だけに許されたものではないと、他ならぬウェイバーが教えてくれたのです。
イスカンダルは最後まで心行くままに生き、ウェイバーはその姿を魂に焼き付け前を向いた。
では読者は? もっと言えば私は?
とるべき道はすでに彼らが示してくれました。あとは突き進むだけです。
すべての冒険者に言いたい。
ただ気の向くまま、血の滾るまま、存分に駆け抜けろ!
その最後の臣、ウェイバー。
あらゆるキャラクターを悲劇が襲う悪辣な物語である「Fate/zero」において、一抹の清涼剤として胸踊る冒険譚を届けてくれた名コンビ。
彼らが私に与えた影響は計り知れません。
前へ前へ、ただ前に。
胸の中にあるこの情熱は、確かに彼らに貰ったものです。
白状しておくと。
「Fate/Zero」を初めて読んだとき、私は切嗣の最後に涙するでもなく、セイバーの末路に同情するでもなく、ただウェイバーに嫉妬しました。
……だって羨ましいじゃないですか。
ウェイバー・ベルベット。自己を(彼にとって)正しく評価してくれる場を求め鬱窟した日常を送り、己の価値を信じようと必死なのに実は自分が矮小な存在だと思っている――その姿は紛れもなく等身大の少年そのものです。
そんな少年が伝説の英雄に導かれ、世界制服へと乗り出していく。
振り回されながらいやいや言いながらも王道の冒険物語を突き進む。
パッと見それはご都合主義の物語で、まあ、言ってしまえば「涼宮ハルヒの憂鬱」のキョンの立場に対して中学生男子が抱く羨ましさと似通ったものを感じてしまったわけです。
初めて読んだとき、私はウェイバーよりも更に幼く未熟でした。みっともなくも思ったものです。「なぜ自分は臣下の誉れに与れないのか」と。……今思うと、恥ずかしい限り、汗顔の至りですが。
ウェイバーはただ幸運に与っただけの少年ではありません。「パワフルなキャラクターの相棒」という立場に終わらず、彼は大きく成長します。
「世界を征服する」という大望に誘うイスカンダル。
彼の言葉を受けて忠誠を誓うウェイバー。
聖杯戦争が終結した後も、ウェイバーは己の中にイスカンダルが遺した言葉が永遠のものであると確認します。イスカンダルに恥じない男になることを一人誓います。ただ、彼の言葉と笑顔だけを支えとして。
それはひょっとしたら、それは一時の思い込みかもしれません。あるいはどこかで死後「王の軍勢」に召し抱えられることを望んでいるのかもしれません。
しかし、それでもウェイバーの決意は美しい。イスカンダルと過ごすうちに彼が手に入れたものは、まさしくどんな聖杯よりも価値あるものです。
ドラえもんから離れたのび太よろしく、ウェイバーもまたイスカンダルから自立します。その姿は実はイスカンダルに憧れたすべての読者の範となるものです。
イスカンダルという規格外の男に憧れた――だったら、私もただ憧れている場合ではありません。己の道を進むのみです。
信じる道を突き進むことの爽快さを、私は彼らに教わりました。憧れるだけだったそうした生き方は「偉大な、選ばれた英雄」だけに許されたものではないと、他ならぬウェイバーが教えてくれたのです。
イスカンダルは最後まで心行くままに生き、ウェイバーはその姿を魂に焼き付け前を向いた。
では読者は? もっと言えば私は?
とるべき道はすでに彼らが示してくれました。あとは突き進むだけです。
すべての冒険者に言いたい。
ただ気の向くまま、血の滾るまま、存分に駆け抜けろ!