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読者レビュー

銅

星海社FICTIONS新人賞編集座談会

見守りたいのと参加したいのの50:50

レビュアー:ticheese Warrior

読書が趣味って言うけれど、「読み物なら何でもいい」なんてことはない。
大抵お気に入りの著者だったり周囲の評判を聞いてだったりで、読む本は決まってくる。それを「ココの右端から並んだものぜーんぶ読みなさい」ってことになったらもう趣味じゃない。仕事だ。
読書が仕事の星海社編集部の会話に興味がある。きっと趣味読書の人間とはレベルの違った読み方をしているはずだ。星海社FICTIONS新人賞座談会を読む理由はそんなものだった。
読んでみると拍子抜けと驚きの50:50。
編集陣の会話は私たちが本を語るのと変わらない。
真剣で、なによりも楽しそうだった。少なくとも座談会の会話からは仕事ではなく、個人として投稿作品に向き合っているよう思える。どういった作品がおもしろいか語られる様は、私たち受け手も安心して近づけていける空気があった。その中で自分には無かった読み方の視点を探していくのはおもしろい。
これが趣味読書の立場。
ただ読んでいる方は気楽なものだ。

これを投稿者の気持ちを想像して読んでみる。
立場がニュートラルなので……辛いのと喜ばしいのの50:50。
想像するだけでMP(精神力)が削られる。
私の経験では精々レビュアー騎士団か大学時代の講評しかないので申し訳ないが、数百枚単位で書いた作品に評価をもらうのは勇気がいる。その中で少しでも褒められれば小躍りしてしまうだろうし、否定されれば首を吊りたくなる。
想うに、座談会で語られる「前回の座談会で他の作品について僕たちが言った意見もぜんぶ採り入れようとしてる」人や「ツイッターで僕らと馴れ合ってる」人は喜ばしいの割合が50をオーバーしているのかもしれない。
厳しい意見を言っているように見えて、編集陣の批評には愛が溢れているからだ。

新人賞第2回には知っている書き手も投稿していた。それを知って実際にその人の名前が挙がるとなんだか羨ましい。そして投稿者の気持ちで読んでみると、自分もなにか書いてみたくなるから不思議だ。小説の書き方なんてわからないのに。……もう一度座談会を読んで勉強してこよう。
新しい楽しみを見つけた期待感と深みにハマってしまった不安の50:50。

2011.07.14

のぞみ
この文章、読みやすかったです!
さやわか
たしかに。コンパクトによくまとまっています。ticheeseさんはずっと前からレビューを送ってくださっている方ですが、以前よりもいきなり何も知らずにこの文章を読んだ読者が自然に読めるような文体で書かれるようになっているのでは。その上でこのレビューは「銅」としました。「50:50」という書き方をうまく使いたいのはわかります。それなりにうまくいっている。しかし、そこに縛られてしまって、ちょっとしたところで文章が混乱しがちに思います。たとえば、結局のところ編集者の読み方と一般読者の読み方がどう違うのかはっきりわからない。「真剣で、なによりも楽しそう」だというのは、直前の行から判断すると一般読者の読みもそうであると書いてあるように読めるのですが、しかし一般読者は「ただ読んでいるから気楽」だとも言っているのです。ticheeseさんがどういう考え方かが、どっちとも取れるようになってしまうと、レビューとしては「論理性」に傷が付きます。文章の長さは良いと思うので、ちょっと慎重に書いてみてはどうでしょう。

本文はここまでです。