ここから本文です。

読者レビュー

銅

『iKILL』というか後藤未久

これって最早、恋だよね

レビュアー:横浜県 Adept

『iKILL』とは、全裸で死体をバラバラにした美少女・後藤未久が、140Pほど後方で、セーラー服に身を包み、トーストを口に咥えた上で、主人公と曲がり角でぶつかる作品である。それが全てである。

いや、嘘だけど。
ほんとは残虐性とメッセージ性に満ちた、ふかいふかーい作品なんだけど。

でもさ、僕はもうこのギャップ萌えにしか目がいかなくなっちゃってるんだよ。
そう、ギャップ萌えなんだよ。

僕は一度、後藤未久に恐怖している。
彼女はノコギリで死体を切り刻み、ハンマーで叩き潰し、内臓にハサミを入れ、フードプロセッサーでぐちゃぐちゃにし、あげく排水溝に流している。
それも全て、人殺しを頼むために。
殺し屋の主人公に、512万円を支払うために。

……こんな怖い女子中学生がいるか?
人を殺すために死体をバラすとか、どういうことだよそれ。
何かが矛盾しているよね。何かが破綻しているよね。
いや、破綻している最たるものは、後藤未久の精神なんだろうけどさ。
しかも最終的に、彼女は自分を虐めていたクラスメイトを殺してもいる。

だから僕は、この後藤未久の内に潜む狂気に慄いた。
なのにっ! なのにさぁっ!

そんな女の子が「どっし~ん!」って叫んだり、登校中(という想定で)僕と衝突したり、その口にはトーストが咥えられていたり、僕のことをお兄ちゃんと呼んでくれたりするとは……。
あれ、ぶつかったのも「お兄ちゃん」なのも、僕じゃなくて主人公の小田切だったっけ。
あまりに萌えすぎて倒錯しちゃったぞ。
いっそこのさい小田切よ、今すぐ僕と代わりたまえ。

それにしてもずるい。
理性を失った、ヒトとしての凶暴な本性を露わにさせておきながら、こんなにも女の子らしい様子を見せつけるとかっ。
死体から飛び散る体液と、悪臭に塗れた裸体を描いておきながら、オレンジ色のセーラー服を着せやがるとかっ。
醜い部分を先に見たせいで、可愛い所が余計に目につくんだよっ!
くっそぉ、許さない! こんな方法で僕の心をくすぐるだなんて!
絶対に許さないんだから!

……ところで一つお訊ねしたいのですが、続編の『iKILL2.0』には、後藤未久ちゃんって登場します?

2011.06.17

のぞみ
やべっ! ふいた!! 外で読んだんだよ。このレビュー。勢い良くふいちまったよ!!
さやわか
姫……なかなか威勢のいい話し方ですな……。
のぞみ
はっ( ̄□ ̄;)!! なんて言葉遣い! 取り乱してしまいましたわ。「いっそこのさい小田切よ、今すぐ僕と代わりたまえ。」って一文がすごく気に入りましたわ! 私にはホラー小説のように感じた『iKILL』に萌え要素があったなんて驚きでしたわ!
さやわか
このレビューは『iKILL』という作品の不気味なだけでない、ポップな感じをよく表していると思いますよ。まあポップだから不気味ということもあるのですが……。しかし、後藤未久に対する思いは伝わってきました。「銅」といたしましょう。このレビューはわりと完成しているので、これ以上もっと面白くするには、と言われると難しいかなとも思うのですが、少なくとも横浜県さんはこの文体で「書けている」というか、使いこなせている。それは評価に値することだなと思いました。

本文はここまでです。