金の瞳と鉄の剣
ファンタジーとしての『金の瞳と鉄の剣』の魅力ってなんだ?
レビュアー:yagi_pon
『金の瞳と鉄の剣』のレビューでよく言われているのは、
これはファンタジーの世界の話であること以上に、
タウとキアという二人の人間の話だということ。
それはすごく納得できる。
けれども少し残念でもある。
たしかに男二人のヒューマンドラマなんだけれど、
そこばっかりが注目されているから、
ファンタジーとしては二流だと言われているような気さえしてしまう。
じゃあ、
ファンタジーとしての『金の瞳と鉄の剣』の魅力ってなんだろうか。
一番に浮かんだのは、龍という怪物を表現しているこの文章だった。
「眼下のタウを凝っと見据えるその視線こそ、何よりも雄弁に『アレ』がただの猛獣ではないことを物語っている。獣は人間を睨んだりしない。さもなくばそれは獣以上の『何か』だ。」(p33より引用)
この表現によって自分は、物語の第一章にして早くも心を掴まれた。
そこにある「絵」としての龍を描写するだけではなくて、
そこにいる人間と対峙している龍が描かれていると思う。
翼や顎、鉤爪の描写はあるにはあるのだけれども、
そんな描写を吹き飛ばすくらいに、
読者に龍という怪物の存在感を訴えてくるこの表現、すごく好きだ。
人間に重きをおいた物語であると同時に、
人間の視点や人間の存在に重きをおいた表現をする物語なのだと思った。
これより少し前の、
「怪物はね、ヒトでは倒せないから怪物なんだ。……もしも怪物を超えてしまったら、そいつはもうヒトではない。その向こう側の何かになってしまう」(p25より引用)
とか、
皮肉の利いた
「僕を利用しているのは村の連中なんだから、彼らこそが”魔法使い”と呼ばれるべきなんじゃないかな。さしずめ僕は”魔法”そのもの、ってところか」(p229より引用)
なんかも好きだ。
ファンタジーの世界を、詳細な描写ではなくて、
妙にリアルな表現や視点で描いている。
自分はそれが、この物語の魅力だと思うな。
自分を惹きつけたのは、男二人のストーリーではなくて、ファンタジーじゃなかったら見ることのできないものだから。
自分で言っておいて撤回するのもなんだけど、絶対二流なんかではない。
結局のところ、
タウとキアのヒューマンドラマ的な物語の魅力も、
ファンタジーの世界を人間的な表現や視点で描く物語の魅力も、
その中心にあるのが人間っていうのは変わらないんだけどね。
幸いにして、まったく終わりの見えない物語だ。
ストーリーが気になるというより、
この世界に浸っていたいというより、
この人が表現するファンタジーの世界をもっと見てみたい。
自分にとって『金の瞳と鉄の剣』は、そんな物語だ。
これはファンタジーの世界の話であること以上に、
タウとキアという二人の人間の話だということ。
それはすごく納得できる。
けれども少し残念でもある。
たしかに男二人のヒューマンドラマなんだけれど、
そこばっかりが注目されているから、
ファンタジーとしては二流だと言われているような気さえしてしまう。
じゃあ、
ファンタジーとしての『金の瞳と鉄の剣』の魅力ってなんだろうか。
一番に浮かんだのは、龍という怪物を表現しているこの文章だった。
「眼下のタウを凝っと見据えるその視線こそ、何よりも雄弁に『アレ』がただの猛獣ではないことを物語っている。獣は人間を睨んだりしない。さもなくばそれは獣以上の『何か』だ。」(p33より引用)
この表現によって自分は、物語の第一章にして早くも心を掴まれた。
そこにある「絵」としての龍を描写するだけではなくて、
そこにいる人間と対峙している龍が描かれていると思う。
翼や顎、鉤爪の描写はあるにはあるのだけれども、
そんな描写を吹き飛ばすくらいに、
読者に龍という怪物の存在感を訴えてくるこの表現、すごく好きだ。
人間に重きをおいた物語であると同時に、
人間の視点や人間の存在に重きをおいた表現をする物語なのだと思った。
これより少し前の、
「怪物はね、ヒトでは倒せないから怪物なんだ。……もしも怪物を超えてしまったら、そいつはもうヒトではない。その向こう側の何かになってしまう」(p25より引用)
とか、
皮肉の利いた
「僕を利用しているのは村の連中なんだから、彼らこそが”魔法使い”と呼ばれるべきなんじゃないかな。さしずめ僕は”魔法”そのもの、ってところか」(p229より引用)
なんかも好きだ。
ファンタジーの世界を、詳細な描写ではなくて、
妙にリアルな表現や視点で描いている。
自分はそれが、この物語の魅力だと思うな。
自分を惹きつけたのは、男二人のストーリーではなくて、ファンタジーじゃなかったら見ることのできないものだから。
自分で言っておいて撤回するのもなんだけど、絶対二流なんかではない。
結局のところ、
タウとキアのヒューマンドラマ的な物語の魅力も、
ファンタジーの世界を人間的な表現や視点で描く物語の魅力も、
その中心にあるのが人間っていうのは変わらないんだけどね。
幸いにして、まったく終わりの見えない物語だ。
ストーリーが気になるというより、
この世界に浸っていたいというより、
この人が表現するファンタジーの世界をもっと見てみたい。
自分にとって『金の瞳と鉄の剣』は、そんな物語だ。