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読者レビュー

銅

エレGY

1人の友として

レビュアー:横浜県 Adept

 恋愛小説の楽しみ方には2つあるんだ。まずは主人公たちに感情移入し、彼らの恋を追体験する「主観的」な読み方。
 初めて『エレGY』に出会ったのは講談社BOXで、当時はジスカルドやエレGYの恋心に寄り添うべく必死だった。でも上手くいかなかった。僕はジスカルドのように、リアルとネットで2つの顔を使い分けてはいない。そのギャップに悩む必要もない。加えてエレGYのように、エキセントリックな少女に出会ったこともない。彼らの恋路は、僕にとって軽く想像しうる範疇を超えていた。だから感情移入なんて、表面的にしかできやしなかった。
 でも不思議なことに、僕は『エレGY』という作品をひどく気に入った。どうしてだろう。その納得できる答えが見つかるには、星海社文庫での再販を待たねばならなかった。その帯にはこうある。
「この恋、きっと応援したくなる」
 僕は気づかされた。この『エレGY』には、先に挙げた読み方なんて、決して似合わないんだって。主人公たちの恋愛を、まるで友達のように応援する「客観的」な読み方こそが、この作品にはピッタリなんだって。
 いうなれば、作中のききたんやnikoの立場になるってこと。(2人は主人公のことをよく知る友人である)ジスカルドの気持ちを分かってはあげられる。彼とエレGYの恋が、成就するようにと祈ってはいる。けれど背中を押すことしかできない。彼と代わってはやれない。
 最初はこれじゃダメだと思ってた。とことん感情移入して、ジスカルドの苦悩を、恋慕の情を、感じとってやらないといけないんだって。
 でも、本当は逆だった。それこそが、『エレGY』の魅力だったんだ。本のページを捲りながら、ジスカルドの恋を陰から応援する。そして彼と一緒に泣いて、笑ってみせる。感情移入なんて、そのためには十分条件でしかないんだ。ジスカルドの隣で、その雄姿を見つめること。それだけで僕らは、2人の恋を祝福してやれるんだ。幸せな気持ちに、きっとなれるんだ。

2011.06.01

のぞみ
「この恋、きっと応援したくなる」の通り、応援しちゃったんですね!!
さやわか
そう! このレビューはそこが一番いいです。主人公に感情移入することよりも応援する気持ちで本を読んだという部分が、書き手がこの作品をどう扱ったかよくわかっていいと思います。
のぞみ
客観的な、読み方が合うと思うことを発見した喜びと、恋を見守るっていう楽しさが、伝わってきて良いと思います。
さやわか
「主観的」「客観的」という話はちょっとぎこちなくもあります。しかし、その話が最終的に導くところはなるほどと思う。たぶんですが、これは「主観的」「客観的」のところではなくて「応援」の部分から広げて作った文章ではないでしょうかね。論理的な枠組みを結論から作り出そうとしている感じがあります。違ったらすみませんが……。ともあれ、この調子で練っていけばいいのではないでしょうか! 今回は「銅」で。

本文はここまでです。