サクラコ・アトミカ
正義*悪
レビュアー:yagi_pon
この物語は、ヒーローとヒロインが、悪役を倒す物語なんだ。
でさ、こういう正義vs悪の物語を自分なりに楽しめるかどうか見極める一つの要素があるんだ。
それは、悪役が魅力的かどうか。
なんでかって?
自分が思うに、こういうタイプの物語っていうのは、悪役がいないと始まりすらしないんだ。この物語でも、悪役がいなければそもそもヒーローとヒロインは出会ってすらいないわけで。そう思うと急に、悪役が重要に見えてこないかな?
物語をまとめるのは正義なんだけど、物語を動かすのは往々にして悪役なんだと思う。
だからさ、ついついこの物語でも悪役を見ちゃうんだ。
正義vs悪の物語の主役はあくまで正義なんだけど、物語を動かすのも、物語を作るのも、往々にして悪役なんじゃないかなって思うんだ。
そういうわけで、ついつい悪役に目が行っちゃうし、悪役が魅力的じゃないとこういう作品は魅力的に感じられないんだよね。
そうそう、で本作の悪役なのですが、さてどういう人なのか。あとでいろいろと使える部分なので、まるまる引用しちゃうよ。
「願いが全部その場で叶っちゃうなんて、ひどい罰よ。もう、生きててもなーんも面白くない。あたしだって努力してなにかを達成したいのに努力する前に叶っちゃう。いっつも最低な気分」
「その力を善いことに使うと、いい気持ちになるかもしれません」
「してるじゃない。めちゃくちゃ善いことしてる。このクソ世界を焼き尽くしてあげるのよ、あたしが、責任を持って、ひとり残らず分子レベルに解体してあげる」
―『サクラコ*アトミカ』p226より
これは、悪役とヒーローの会話なんだ。
どちらが悪か、どちらが正義かは言わずもがなだと思うけどさ。
読めばわかるかもしれないけど、この悪役、ものすっごいチートなんだ。だって願えばその場でなんでも叶っちゃうんだよ。ドラゴンボールの神龍を従えてるようなもんでしょ?
けどさ、考えてもみてよ。なんでも叶えてくれる神龍が常にいたら、それはそれは最高の世界になるかもしれないけれど、そんなのがいつまでも続いたらきっとつまらなくなると思うんだ。
悪役からしたら、なんでも叶う世界は最高の世界なはずなんだけど、そんな世界をつまらないと言うんだ。あれだよね、悪役にしてはすごく真っ当だ。
テンプレートな悪役なら、「ついにこの力を手に入れたぞ、ワッハハハ」くらいは言ってほしいんだけど、どうやらそういうタイプではないらしい。
ココがこの悪役の魅力だと思うんだよね。
もちろん、この物語の魅力だと言ってもいい。
作中では変態扱いされてしまう悪役だけれども、テンプレートな悪役にはなりきれていないんだ。そこがいいよね。
きっと誰でも、なんでも叶う力を手に入れたら、最初は楽しいけどきっとつまらなくなるでしょ?なにか叶わないことがあるから、叶ったときがうれしいわけで、すべてが叶ったとしたらいつしか、うれしいとか楽しいとかそういう感情はどんどん無くなっていくと思うんだ。そしてそうなったら、最終的には狂っちゃうよね。
そう考えると、すごく真っ当に狂ってると思わない?この悪役。
この普通さが、この悪役の魅力なんだよ。
持っている能力は、全然普通じゃないんだけどね。
SFで、ファンタジーで、バトルしてて、
ヒロインは世界一の美少女と言われ、
ヒーローは羽が生えた世界最強の騎士で、
そんな何一つ普通なんてないその世界で、
ただ一つ普通っぽいのは、この悪役なんだよね。
ラムさん的に言えば、「正常に狂った」人なんだよね。
だからさ、世界をぶっ壊そうとするこの悪役の気持ちもわからないでもない。
そんでもって、そんなことを考えているとこの物語が急に悲しい物語に思えてくるんだ。
悪役という立場によって倒されてしまうからなおさらね。
悪役に一番感情移入できるっていうのも変な話だけど、そこがいい。
この物語は、愛と勇気に満ちた物語なんだ。
けれどもその裏にあるのは、何もかもを手に入れたとこによってなにもかもを失ってしまった悲しみに満ちた物語なんだ。
この物語は、ハッピーエンドだ。
けれども自分は、その幸せを幸せと感じさせてくれるためにかつてあった悲しみに、もう少しだけ浸っていよう。そのあとの幸せをかみしめるためにね。
悪があるから、正義がいるんだ。
悲しみがあるから、幸せがあるんだ。
でさ、こういう正義vs悪の物語を自分なりに楽しめるかどうか見極める一つの要素があるんだ。
それは、悪役が魅力的かどうか。
なんでかって?
自分が思うに、こういうタイプの物語っていうのは、悪役がいないと始まりすらしないんだ。この物語でも、悪役がいなければそもそもヒーローとヒロインは出会ってすらいないわけで。そう思うと急に、悪役が重要に見えてこないかな?
物語をまとめるのは正義なんだけど、物語を動かすのは往々にして悪役なんだと思う。
だからさ、ついついこの物語でも悪役を見ちゃうんだ。
正義vs悪の物語の主役はあくまで正義なんだけど、物語を動かすのも、物語を作るのも、往々にして悪役なんじゃないかなって思うんだ。
そういうわけで、ついつい悪役に目が行っちゃうし、悪役が魅力的じゃないとこういう作品は魅力的に感じられないんだよね。
そうそう、で本作の悪役なのですが、さてどういう人なのか。あとでいろいろと使える部分なので、まるまる引用しちゃうよ。
「願いが全部その場で叶っちゃうなんて、ひどい罰よ。もう、生きててもなーんも面白くない。あたしだって努力してなにかを達成したいのに努力する前に叶っちゃう。いっつも最低な気分」
「その力を善いことに使うと、いい気持ちになるかもしれません」
「してるじゃない。めちゃくちゃ善いことしてる。このクソ世界を焼き尽くしてあげるのよ、あたしが、責任を持って、ひとり残らず分子レベルに解体してあげる」
―『サクラコ*アトミカ』p226より
これは、悪役とヒーローの会話なんだ。
どちらが悪か、どちらが正義かは言わずもがなだと思うけどさ。
読めばわかるかもしれないけど、この悪役、ものすっごいチートなんだ。だって願えばその場でなんでも叶っちゃうんだよ。ドラゴンボールの神龍を従えてるようなもんでしょ?
けどさ、考えてもみてよ。なんでも叶えてくれる神龍が常にいたら、それはそれは最高の世界になるかもしれないけれど、そんなのがいつまでも続いたらきっとつまらなくなると思うんだ。
悪役からしたら、なんでも叶う世界は最高の世界なはずなんだけど、そんな世界をつまらないと言うんだ。あれだよね、悪役にしてはすごく真っ当だ。
テンプレートな悪役なら、「ついにこの力を手に入れたぞ、ワッハハハ」くらいは言ってほしいんだけど、どうやらそういうタイプではないらしい。
ココがこの悪役の魅力だと思うんだよね。
もちろん、この物語の魅力だと言ってもいい。
作中では変態扱いされてしまう悪役だけれども、テンプレートな悪役にはなりきれていないんだ。そこがいいよね。
きっと誰でも、なんでも叶う力を手に入れたら、最初は楽しいけどきっとつまらなくなるでしょ?なにか叶わないことがあるから、叶ったときがうれしいわけで、すべてが叶ったとしたらいつしか、うれしいとか楽しいとかそういう感情はどんどん無くなっていくと思うんだ。そしてそうなったら、最終的には狂っちゃうよね。
そう考えると、すごく真っ当に狂ってると思わない?この悪役。
この普通さが、この悪役の魅力なんだよ。
持っている能力は、全然普通じゃないんだけどね。
SFで、ファンタジーで、バトルしてて、
ヒロインは世界一の美少女と言われ、
ヒーローは羽が生えた世界最強の騎士で、
そんな何一つ普通なんてないその世界で、
ただ一つ普通っぽいのは、この悪役なんだよね。
ラムさん的に言えば、「正常に狂った」人なんだよね。
だからさ、世界をぶっ壊そうとするこの悪役の気持ちもわからないでもない。
そんでもって、そんなことを考えているとこの物語が急に悲しい物語に思えてくるんだ。
悪役という立場によって倒されてしまうからなおさらね。
悪役に一番感情移入できるっていうのも変な話だけど、そこがいい。
この物語は、愛と勇気に満ちた物語なんだ。
けれどもその裏にあるのは、何もかもを手に入れたとこによってなにもかもを失ってしまった悲しみに満ちた物語なんだ。
この物語は、ハッピーエンドだ。
けれども自分は、その幸せを幸せと感じさせてくれるためにかつてあった悲しみに、もう少しだけ浸っていよう。そのあとの幸せをかみしめるためにね。
悪があるから、正義がいるんだ。
悲しみがあるから、幸せがあるんだ。