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読者レビュー

銅

『空の境界 the Garden of sinners』2/「殺人考察(前)」第一回

白と黒の中の、青と赤

レビュアー:yagi_pon Novice

殺人考察(前)第一回を読んだ。
雪の日の二人の出会いから始まる第二章は、式の青い帯と、ビュアーの青白い背景とが相まって、静かに開幕する。そして最後は、対照的に赤黒い鮮血。始まりの演出と背景があるからこそ、終わりの赤がよく映える。こういう演出、好きだなぁ。

この作品だけを読んでもわからないが、ビュアーの背景は作品ごとに違う。そういう細かい気配りが、演出に活きてくる。そして、紙の出版物としてはなかなかないけれど、インターネットで公開しているからこそ、一部だけカラーをつけることもできる。
独自のビュアーで公開しているからこそできること、基本モノクロのコミックだからできること、デジタルだからこそできること、様々な要素が混ざり合って、新しい『空の境界』が生まれている。
コミカライズに懐疑的だった自分も、この演出には思わず唸った。原作小説と劇場版で満足していたが、コミックでしか表現できないことがあるとしたら、きっとこういうことだろう。白黒の中に飛び散った赤い血は、それくらい印象的だった。

yagi_pon
☆☆

2011.03.22

さやわか
yagi_ponさんは今回、複数のレビューを送っていただいたのですが、これが一番よかったと思いますぞ!
のぞみ
コミックの良さは、これだと思うってことを、ぴしっとかかれていると思いました。
さやわか
その通り! ほかにいただいたレビューは、第三場で他の方にも何度か言っているのと同じく、分析的な読み方がなぜ必要とされているのかわかりにくい。しかしこのレビューは、「この作品のここに自分は衝撃を受けて、それがいいと思った。それは細かく言えばこういうことだ」という筋道がちゃんとある。
のぞみ
タイトルも内容を感じさせるし。タイトルを読んだだけだと「どういうことなんだろう」って、知りたくなります。
さやわか
タイトルはけっこう皆さん、こだわって付けられていますな。文章を読み終わって、最後にタイトルに戻ってきて「なるほど」と文章を反芻するようなタイトルで、これはいいと僕は思いますぞ。
のぞみ
そして、一つの事について、簡潔にかかれていて、とてもわかりやすいなと、思いました。
さやわか
うむ。優れた作品というのは切り口がたくさんあって、一つのことに集中して短い言葉で語るのは実はけっこう難しいことです。じっくり読むと「インターネットだからできること」を「新しい『空の境界』」という作品単体に直結させるのは難しいのですが、yagi_ponさん自身が「いい」と思ったことを貫こうとするドライブ感があるからさらりと読んでしまえる。いいのではないでしょうか! 「銅」を献上いたします!

本文はここまでです。