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読者レビュー

銅

空の境界 the Garden of sinners

式と愉快な仲間達

レビュアー:ヨシマル Novice

栄栄子:テクマクマヤコン♪ テクマクマヤコン♪
透谷:魔法少女になーれ♪ じゃねーよ!
栄子:パラリル♪ パラリル♪ ドリリンパ♪
透谷:だから! 魔法少女になーれ♪ じゃねーつってんだろ!
栄子:ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ♪
透谷:魔法少女ですらねえ!!
栄子:スターライトブレって、あれ? 透谷? ヨシマルは?
透谷:あー、あいつはなんか忙しいみたいだから俺が呼ばれた。
栄子:忙しいって……。何やってるんだか。 まあ、いいんやけど。
透谷:つーわけで、さっさとレビュー始めるぞ。
栄子:やーん、透谷のせっかちぃ。
透谷:うっせえ。わざわざ来てやってるんだから感謝しろ。
栄子:もう、ひとりの方が気が楽やわあ。
透谷:俺も好きで来てるんじゃねーよ。ったく、今回は「空の境界」だろ。
栄子:そうや。「空の境界 1/『俯瞰風景』」、原作・奈須きのこ、作画・天空すふぃあ。
透谷:あらすじは知っての通りだな。
栄子:なげやりやっ! でも、特に今回はあらすじ説明しづらいんよな。
透谷:いきなり説明なく物語が進んでいくしな。
栄子:特別登場人物紹介的な箇所もないし、不親切設計ではあんねんな。まあ、そこがこの話の味でもあるんやけど。
透谷:だな。読者は取り敢えず俯瞰しとけってスタンスでいいんだろ。
栄子:…………。一応言っとくけど、全然上手(うま)ないよ。
透谷:ほっとけ!
栄子:んで、レビューなんやけど――
透谷:ああ、俺から喋っていいか?
栄子:何や?
透谷:いや、さっきも言ったんだけど、この「俯瞰風景」は「空の境界」の冒頭の話なのに登場人物紹介もないから、誰が主要人物なのか全然分からないまま、話が進んでいくんだよな。
栄子:そうやな。式が主人公っぽいってのは分かるんやけど、幹也の立ち位置がよう分からなかったりするし。
透谷:そうなんだよ。一話を読んだ限りじゃ幹也=読者目線、ていうつもりだったのに、二話の一ページ目で退場してしまうだろ。
栄子:ウイングガンダムかっ! ってツッコみたくなるよな!
透谷:ならねーよ!
栄子:それに、犯人もお前誰だよ!? って感じやしな。
透谷:そうなんだ。主要登場人物は式、幹也、橙子の三人なのは分かるんだけど、それぞれがバラバラなんだ。
栄子:三人で共通目的あるような描写は全然ないしね。
透谷:でも、それぞれがバラバラだから、物語が発散しそうかというと、全然そんなことなくて、焦点としてはちゃんと絞られてる。関係性を形作ってはないけど、なぞってはいる。なんでなのかがよく分からんけど。
栄子:あー、言いたいことは分かるわ。つまり、あれや、君ら友達いないんやろってことやな。
透谷:はあ?
栄子:さらには君ら魔法少女やんって話やな。
透谷:意味分かんねーよ!
栄子:それは君がオールドタイプだからさ。
透谷:時なんて見えなくて充分だよ!
栄子:重力に引かれた君に説明してやろう。
透谷:教えて欲しくねえ……。
栄子:式が魔法少女っていうのはオッケー?
透谷:そこは百歩譲って理解したことにしとくか。
栄子:そんなに構えんくても、特殊能力=魔法少女って理解でええのんよ。
透谷:そういうことな。
栄子:魔法は理想の具現化やからね。魔法少女は現実主義なんよ。だから友達が少ない。
透谷:友達が少ないは関係ないだろ。
栄子:それが関係大ありなのよん。
透谷:ちょくちょく気持ち悪いなその喋り方。
栄子:――おっほん。さっきも透谷が言うたけど、式にしても戦う理由が全く描かれてなんよね。「俯瞰風景」内から読み取れるのは幹也を助けたいって願望だけかな。
透谷:それで良んじゃねーか?
栄子:うん。良いんよ、それで。それが普通だし、普通の魔法少女やない?
透谷:魔法少女に大きな目的はないってことか?
栄子:もちろん全部じゃないんやけど、魔法っていう特異な能力を持ってるにも関わらず町内コミュニティくらいでの諍いで物語が終始収まるのは魔法少女だからって面はあるやん?
透谷:まあ、地球を守るような話はあんまりないのかな。
栄子:「リリカルなのは」なんかはもろ「世界」守ってるんやけどね。基本魔法少女が単体で守れるのは町内の平和くらいなもんなんよ。これは力的な意味じゃなくて、個人が認識できるのがその範囲って事なんやと思う。
透谷:「世界」守ろうと思ったら大きな組織が不可欠になるのか。
栄子:傾向がある程度やけどね。んで「空の境界」はどうか言うたら、多分主要登場人物みんな友達少なそうやろ?
透谷:まあ、多そうには思えないな。
栄子:そこまで深く意図したことやないだろうけど、結果としてそうなってる。だから彼女達は無関係な人達のためには戦わなくていいんや。
透谷:コミュニティが小さいってことか?
栄子:そうやな。町内って言うたけど、舞台設定から町内コミュニティはなさそうってのは伝わるやん。
透谷:都会的な街だからな。
栄子:さらに友達コミュニティまで小さければ、彼女達の「世界」はかなり狭まってるんよ。
透谷:「世界」が小さいから、守るものも少なくて済むってことだな。
栄子:物語が発散しないのもそのせいやな。自分らの世界を守りたいってのが魔法少女が戦う理由なんやから、自分に見合った「世界」を構築しとかなきゃ達成できひんのよ。彼女達はできる範囲でできることをやってる。「俯瞰風景」じゃ、それが幹也を守ることやったんや。
透谷:さっきから彼女達って言ってるけど、魔法少女は式じゃないのか?
栄子:あれ? 言うてなかったっけ? イメージとしては式、幹也、橙子の三人でひとつの魔法少女なんよ。
透谷:あ?
栄子:うーん、魔法少女にはマスコットと、導いてくれる系キャラが必須やん? もともと『魔法少女モノ』ではないわけやから当然なんやけど、役割分けは明確にはできひんよ。でも、近い役割は幹也、橙子それぞれが引き受けてはいんねんな。でも境界が曖昧で――
透谷:あーなんとなく言いたいことは分かった。要はソーシャルネットワーク的な関係だって言いたいんだろ。
栄子:どゆこと?
透谷:ソーシャルネットワークの魔法少女クラスタだったってことだな。確立された目的別に集まったわけでもなく、もっと緩やかなコミュニティ。
栄子:組織として集まってるわけやなくて、なんとなしに集まってるって感じ?
透谷:ああ。集まることが目的みたいなもんだな。集まってから目的は自然発生的に生まれる。魔法少女クラスタでいうなら「世界」の安全ってことになるな。
栄子:あたしが言いたかったことはそれや! 緩やかなコミュニティ。
透谷:この場合だと人数が増えたところで守るべき対象は少なく抑えられるし。
栄子:全員友達いないからな!
透谷:簡単に言うとそういうことだな。橙子は魔法使いでありそうな描写はあるけど、今回はあんまり実働してない。幹也も読者視点でありながらすぐ退場、式は主役っぽい活躍をしてるけど終始気怠そうにしてる。
栄子:式は幹也とイチャイチャすることしか考えてなさそうやな!
透谷:それ真実だな。見ててイラっとする。
栄子:あたしが相手してあげよっか?
透谷:黙れ! そして消えろ!
栄子:やーん、透谷ひどい。傷つくやんかあ。
透谷:真面目に消えろ。まったく。結局無目的なコミュニティである三人は何かを達成するためには動かないんだろうな。物語が動くためには誰かに積極的な行動を起こさせる外的要因が必要で、その外的要因が何なのか、どうして外的要因成り得たのかっていうのがこれからの本題になっていくんだろ。
栄子:そういうことやな。っていうか、今回あたしの仕切り回のはずだったのに、なんで透谷が締めてるのさ?
透谷:栄子が適当なこと言ってたからだろ。俺が代わりにまとめてやったんだから感謝しろよ。
栄子:なにおー! あたしがやっても上手く行っとるわー! 
透谷:どうだか?
栄子:なんやとお! もう怒った! リリカル~トカレフ~
透谷:おまっまさか!?
栄子:プリンセス脇固め!
透谷:ぐはっ!
栄子:プリンセスチョークスリーパー!
透谷:ギブギブ!
栄子:プリンセス腕ひしぎ逆十字!
透谷:…………。
栄子:――勝った。正義は勝つ!
透谷:誰が正義じゃ!!

2011.03.22

のぞみ
新キャラクター登場ですね!!
さやわか
「ヨシマル」はさっきのレビューを書いていて、こっちには「透谷」が登場しつつ、同じ『空の境界』を語っているということだと思うのですが、こういう仕掛けはいちいちヨシマルさんはうまい! 自分で作り出したルールを広げていて、面白いです。
のぞみ
いつも、漫才みたいなので、楽しく読んでいます。作品のこと以外にも「オールドタイプ」という言葉や「重力にひかれた」という言葉などが出てきますけれども…あえて言おう!! パロディーであると!!
さやわか
姫、まさかのガンオタ属性が発動っすか!?
のぞみ
ということで、色々と他の作品のたとえとか、引用が出てくるのを探すのも楽しかったです。
さやわか
そういう部分も、読者が楽しみながら読む仕掛けになっていますな。ただ! これは他の方のレビューでもしばしば言えることですが、「魔法少女」のように誰もが共通理解を持てそうな、いわば「大きな言葉」というのは、実は扱いが難しい。ヨシマルさんはそこを会話形式で強引にクリアしていて「特殊能力を持った少女=魔法少女」というダイナミックな説明しています。そのこと自体はいいのですが、その後で「単体で守れるのは町内の平和くらい」と言ってしまうので、じゃあ「特殊能力を持った少女が登場する物語は常に町内の平和くらいしか守れないのか?」という疑問がわいてしまう。しかし「大きな組織」がなければ「世界」が守れないという意味では、「少女」に限ったことではないだろう。たとえば最近の作品だと『キック・アス』なんかはそういう話と言ってもいい。つまりダイナミックな説明があったがゆえに「魔法少女」というキャッチーな言葉を出した意味まで曖昧になって、読者がその隙に気づきやすくなってしまうわけです。これをどう処理するかは大事なことです。「魔法少女」の定義をしっかりやる手もありますが、ぶっちゃけ僕はそこまでしなくていいと思います。読者が疑問を持つ余地を隠蔽するのがベストじゃないでしょうか。ということで「銅」で!

本文はここまでです。