金の瞳と鉄の剣 第一話
説明不要の『王道』
レビュアー:ヨシマル
栄子:おう! どういうこっちゃ! 説明してみい!
ヨシマル:……申し訳、ありませんでした。
栄子:謝れば済むとでも思とるんかい!
ヨシマル:まさかプリキュアの話を広げるのが正解だったとは……。
栄子:わざわざあたしの話を遮ったよなあ自分? 納得出来る説明があるんやろなあ!
ヨシマル:まあまあ、ヨシマルが悪かったよ。始まったばかりだったし、どんな流れがいいのか探り探りだったんだから。次からは努力するよ。
栄子:ふんっ。当然やな。あのままあたしに任せとけば良かったんよ。まあ、次回くらいあたしに仕切らせてくれるんなら許してあげないこともないんやけどね。
ヨシマル:いいよ、もうそれで。あんまり前回のを引っ張ってもしょうがないし。
栄子:……前回の解説で会話形式の利点ほとんどバラされてもうたからっていじけてんねんな。
ヨシマル:まあね。心の中を覗かれた気分だよ。
栄子:あと残った利点はこうやって自分の過去のレビューを参照しやすいってことくらいやな。
ヨシマル:そうなんだよね。でもそれもあんまり使わない方がいいだろうし……。。
栄子:なんや調子狂うわあ。まあいいや、早(は)よレビュー始めよか?
ヨシマル:はあ、そうだね。
栄子:元気だしいや。今回のレビュー対象は『「金の瞳と鉄の剣」第一回』やで。
ヨシマル:うん。ついでにあらすじもお願い。
栄子:上昇思考の剣士タウと本物の魔法使いキア、二人はそれぞれの思いを胸に龍狩りに赴く。その先に何が待っているのか? 龍とはなんなのか? 王道ハイファンタジーが幕を開ける。って感じやな。
ヨシマル:今回は第一回がレビュー対象だからあらすじも短くなるな。
栄子:なんで第一回だけに限ったん?
ヨシマル:気付いたんだ。
栄子:何に?
ヨシマル:分けなかったらすぐにレビュー対象がなくなってしまう。
栄子:……。まあ、そないなとこだとは思ったけどさ。
ヨシマル:てことで第一回なんだけど、栄子はこの話どう思う?
栄子:せやなあ、男の友情って感じやな。
ヨシマル:実はそれは単純なんだけど、真実に近いとヨシマルは考えてる。
栄子:友情物語?
ヨシマル:そう。ところでこの話のジャンルってなんだと思う?
栄子:? そりゃもち『ファンタジー』やろ。
ヨシマル:その通り。惹句にそのまま『王道ファンタジー』とか『ハイファンタジー』とか書いてあるからね。でも、栄子の感想にはファンタジーってのは出てこなかったよね。栄子:そういえば、そうやなあ。
ヨシマル:それには理由があると思うんだ。感想には出てこなかったけど、ジャンルはって聞かれたら誰もがファンタジーだと答えるだろうことにもね。
栄子:どういうこと?
ヨシマル:ファンタジーって言うけれどその範囲はかなり広い。
栄子:魔法少女ものだってファンタジーやし。
ヨシマル:定義となると難しいけど魔法少女ものなんてファンタジーの典型だよね。でも「金の瞳と鉄の剣」とは大きく違うところがある。
栄子:ヒロインが女か男か!
ヨシマル:世界観が違うってことだね!
栄子:…………。
ヨシマル:多くの魔法少女作品の舞台は現実の世界、『現代ファンタジー』って範疇になる。「空の境界」なんかもこれに入るね。それに対して「金の瞳と鉄の剣」は『異世界ファンタジー』だ。実はこの二つには大きな書き分けが存在するんだ。
栄子:書き分け?
ヨシマル:どっちかを今すぐ書けって言われてどちらが書けそう?
栄子:うーん、今すぐって言われたら『現代ファンタジー』の方かなあ。
ヨシマル:個人差はあるだろうけど、多くはそうだと思う。実はそれは読む方にも言えて、手短に読みたいなら『現代ファンタジー』になる。
栄子:異世界ファンタジーって設定とか頭使いそうやし。
ヨシマル:まさにそこなんだ。異世界ファンタジーを書く場合、最も大事なところはその世界観の説明なんだ。それが『現代ファンタジー』の場合、物語に関係する部分の不思議を説明すればいい。
栄子:魔法少女はだいたい勝手に巻き込まれるしなあ。それになんか解説役みたいなんが付いてくるし。
ヨシマル:それが読者にとっても物語にとっても自然な展開になるからね。現実世界と差異があるところを随時無理なく説明できる。対して異世界ファンタジーの場合はかなり異なる。
栄子:現実と比べるってことができひんのか。
ヨシマル:うん。だからどうしても世界観説明に文章量が割かれて物語がなかなか進みにくいし、読みにくいってことにも陥りやすい。
栄子:でも、そんなに読みにくさって感じたことないんやけどな。
ヨシマル:もちろんその辺りにはかなり工夫がされてるからね。例えば主人公を現実世界から連れてきてしまうっていうのがある。
栄子:「十二国記」とか?
ヨシマル:そう。これをすると主人公の知識は読者と同等だから主人公に説明しながら読者にも説明できる。
栄子:説明役もいるし。魔法少女ものと違って可愛さ少なめやけど。
ヨシマル:現実世界からでなくとも、別の世界ってしてもいいし、例えば田舎ものが都会にやってきたっていう設定でも似たように話を進めることができる。
栄子:成り上がり物語多いんやな。
ヨシマル:それで「金の瞳と鉄の剣」を見てみると……
栄子:どうなん?
ヨシマル:よく分からん。
栄子:はあ?
ヨシマル:いや、上手く定義できないんだ。
栄子:タウもキアも現実世界から来たわけでもないし、田舎ものってわけでもないんやな。
ヨシマル:そうなんだけど、無理やり言うとしたら、キアが世間知らずで、タウがそれを教えようとしてはいる。
栄子:それならいいんじゃない?
ヨシマル:でも、実際言ってる内容自体は世界観の説明っていうよりも人間それ自体の説明だし、逆にキアが魔法の説明をタウにするっていう描写もあまり見られない。
栄子:両方おしゃべり違(ちゃ)うからなあ。
ヨシマル:てことで、よくよく考えると、この一話でほとんど世界観の説明をしてないんだよね。
栄子:ホンマや。
ヨシマル:これって結構珍しいことで、普通異世界ファンタジー書こうとすると一番重要視するところが世界観の構築だと思うんだ。むしろそれがしたいから異世界ファンタジーを描くのが自然だろ。
栄子:でもでも、あたしはこれ、ファンタジーって凄く感じるんやけど。
ヨシマル:世界自体はファンタジー一直線だし、惹句にしっかり『王道』ファンタジーなんて書いてあるからね。逆にそう書いてあるからこそ、読む側としては安心して『ファンタジー』だとして読める。
栄子:『超王道学園アドベンチャー』とかじゃないんや!
ヨシマル:なんの話かなー?
栄子:カワイイ魔法少女ものかと思たら……。なんてことはないんやな!
ヨシマル:だから何の話だよ!
栄子:まあまあ。で、つまりどういうことなん?。
ヨシマル:つまり『王道ファンタジー』の冠を付けることでファンタジーという枠から外れることに成功してるんだ。
栄子:外れる?
ヨシマル:先に『王道』と言っておけば、読者がそれぞれ持ってる『王道ファンタジー』に当てはめることができるからね。どんなファンタジーかっていう説明を省ける。
栄子:本来ならしなければならない説明をしなくてもよくなるんや。それが外れるってことやな。
ヨシマル:そう。そしてファンタジーから外れた先にあるのが、さっき言ってた友情物語なんだ。
栄子:世界自体でなく、タウとキアが物語の中心ってことやね。
ヨシマル:実際、第一話の中で登場人物は二人だけなんだ。龍も出てくるけど『人』じゃないしね。
栄子:男子二人やから――と想像してまうよね。
ヨシマル:イラストも高河ゆんさんだし……。ってそういうことじゃなくて、例えば「あぶない刑事」や「相棒」シリーズだったり、「ガングレイヴ」や「鋼の錬金術師」みたいに男二人主人公っていうのはその主人公本人たちに焦点を当てたヒューマンドラマになる傾向がある。
栄子:命を掛けて戦う男たちって絵になるんよ。相棒の危機に体を張って守って――
ヨシマル:……。まあ、つまり男二人っていのは二人の間での問題発生から解決までのプロセスをより濃く描くことができるんだと思うんだ。これはヨシマルの主観だけれど男二人主人公はガンアクションとかハードボイルド系の作品に多く見られる気がする。
栄子:その方が想像膨らむし。
ヨシマル:なんのだよ!
栄子:言いたいことは「金の瞳と鉄の剣」はファンタジーを装ったヒューマンドラマってことやな。
ヨシマル:そいういうこと。これ以降は二人の過去未来を含めた関係性に要注目だね。
栄子:にしても、今回も長かったな。
ヨシマル:こんだけ書けば前回「レビュアー騎士団」を「レビュー騎士団」なんて書いたことも忘れられるだろ。
栄子:自分で言っちゃったよ!
ヨシマル:しまった!
栄子:フッフッフ。どうせ来週はヨシマル一回休みやしな。
ヨシマル:なんか嫌な予感。
栄子:それでは次回魔法少女マジカル☆エイコ! をお楽しみに!
ヨシマル:……申し訳、ありませんでした。
栄子:謝れば済むとでも思とるんかい!
ヨシマル:まさかプリキュアの話を広げるのが正解だったとは……。
栄子:わざわざあたしの話を遮ったよなあ自分? 納得出来る説明があるんやろなあ!
ヨシマル:まあまあ、ヨシマルが悪かったよ。始まったばかりだったし、どんな流れがいいのか探り探りだったんだから。次からは努力するよ。
栄子:ふんっ。当然やな。あのままあたしに任せとけば良かったんよ。まあ、次回くらいあたしに仕切らせてくれるんなら許してあげないこともないんやけどね。
ヨシマル:いいよ、もうそれで。あんまり前回のを引っ張ってもしょうがないし。
栄子:……前回の解説で会話形式の利点ほとんどバラされてもうたからっていじけてんねんな。
ヨシマル:まあね。心の中を覗かれた気分だよ。
栄子:あと残った利点はこうやって自分の過去のレビューを参照しやすいってことくらいやな。
ヨシマル:そうなんだよね。でもそれもあんまり使わない方がいいだろうし……。。
栄子:なんや調子狂うわあ。まあいいや、早(は)よレビュー始めよか?
ヨシマル:はあ、そうだね。
栄子:元気だしいや。今回のレビュー対象は『「金の瞳と鉄の剣」第一回』やで。
ヨシマル:うん。ついでにあらすじもお願い。
栄子:上昇思考の剣士タウと本物の魔法使いキア、二人はそれぞれの思いを胸に龍狩りに赴く。その先に何が待っているのか? 龍とはなんなのか? 王道ハイファンタジーが幕を開ける。って感じやな。
ヨシマル:今回は第一回がレビュー対象だからあらすじも短くなるな。
栄子:なんで第一回だけに限ったん?
ヨシマル:気付いたんだ。
栄子:何に?
ヨシマル:分けなかったらすぐにレビュー対象がなくなってしまう。
栄子:……。まあ、そないなとこだとは思ったけどさ。
ヨシマル:てことで第一回なんだけど、栄子はこの話どう思う?
栄子:せやなあ、男の友情って感じやな。
ヨシマル:実はそれは単純なんだけど、真実に近いとヨシマルは考えてる。
栄子:友情物語?
ヨシマル:そう。ところでこの話のジャンルってなんだと思う?
栄子:? そりゃもち『ファンタジー』やろ。
ヨシマル:その通り。惹句にそのまま『王道ファンタジー』とか『ハイファンタジー』とか書いてあるからね。でも、栄子の感想にはファンタジーってのは出てこなかったよね。栄子:そういえば、そうやなあ。
ヨシマル:それには理由があると思うんだ。感想には出てこなかったけど、ジャンルはって聞かれたら誰もがファンタジーだと答えるだろうことにもね。
栄子:どういうこと?
ヨシマル:ファンタジーって言うけれどその範囲はかなり広い。
栄子:魔法少女ものだってファンタジーやし。
ヨシマル:定義となると難しいけど魔法少女ものなんてファンタジーの典型だよね。でも「金の瞳と鉄の剣」とは大きく違うところがある。
栄子:ヒロインが女か男か!
ヨシマル:世界観が違うってことだね!
栄子:…………。
ヨシマル:多くの魔法少女作品の舞台は現実の世界、『現代ファンタジー』って範疇になる。「空の境界」なんかもこれに入るね。それに対して「金の瞳と鉄の剣」は『異世界ファンタジー』だ。実はこの二つには大きな書き分けが存在するんだ。
栄子:書き分け?
ヨシマル:どっちかを今すぐ書けって言われてどちらが書けそう?
栄子:うーん、今すぐって言われたら『現代ファンタジー』の方かなあ。
ヨシマル:個人差はあるだろうけど、多くはそうだと思う。実はそれは読む方にも言えて、手短に読みたいなら『現代ファンタジー』になる。
栄子:異世界ファンタジーって設定とか頭使いそうやし。
ヨシマル:まさにそこなんだ。異世界ファンタジーを書く場合、最も大事なところはその世界観の説明なんだ。それが『現代ファンタジー』の場合、物語に関係する部分の不思議を説明すればいい。
栄子:魔法少女はだいたい勝手に巻き込まれるしなあ。それになんか解説役みたいなんが付いてくるし。
ヨシマル:それが読者にとっても物語にとっても自然な展開になるからね。現実世界と差異があるところを随時無理なく説明できる。対して異世界ファンタジーの場合はかなり異なる。
栄子:現実と比べるってことができひんのか。
ヨシマル:うん。だからどうしても世界観説明に文章量が割かれて物語がなかなか進みにくいし、読みにくいってことにも陥りやすい。
栄子:でも、そんなに読みにくさって感じたことないんやけどな。
ヨシマル:もちろんその辺りにはかなり工夫がされてるからね。例えば主人公を現実世界から連れてきてしまうっていうのがある。
栄子:「十二国記」とか?
ヨシマル:そう。これをすると主人公の知識は読者と同等だから主人公に説明しながら読者にも説明できる。
栄子:説明役もいるし。魔法少女ものと違って可愛さ少なめやけど。
ヨシマル:現実世界からでなくとも、別の世界ってしてもいいし、例えば田舎ものが都会にやってきたっていう設定でも似たように話を進めることができる。
栄子:成り上がり物語多いんやな。
ヨシマル:それで「金の瞳と鉄の剣」を見てみると……
栄子:どうなん?
ヨシマル:よく分からん。
栄子:はあ?
ヨシマル:いや、上手く定義できないんだ。
栄子:タウもキアも現実世界から来たわけでもないし、田舎ものってわけでもないんやな。
ヨシマル:そうなんだけど、無理やり言うとしたら、キアが世間知らずで、タウがそれを教えようとしてはいる。
栄子:それならいいんじゃない?
ヨシマル:でも、実際言ってる内容自体は世界観の説明っていうよりも人間それ自体の説明だし、逆にキアが魔法の説明をタウにするっていう描写もあまり見られない。
栄子:両方おしゃべり違(ちゃ)うからなあ。
ヨシマル:てことで、よくよく考えると、この一話でほとんど世界観の説明をしてないんだよね。
栄子:ホンマや。
ヨシマル:これって結構珍しいことで、普通異世界ファンタジー書こうとすると一番重要視するところが世界観の構築だと思うんだ。むしろそれがしたいから異世界ファンタジーを描くのが自然だろ。
栄子:でもでも、あたしはこれ、ファンタジーって凄く感じるんやけど。
ヨシマル:世界自体はファンタジー一直線だし、惹句にしっかり『王道』ファンタジーなんて書いてあるからね。逆にそう書いてあるからこそ、読む側としては安心して『ファンタジー』だとして読める。
栄子:『超王道学園アドベンチャー』とかじゃないんや!
ヨシマル:なんの話かなー?
栄子:カワイイ魔法少女ものかと思たら……。なんてことはないんやな!
ヨシマル:だから何の話だよ!
栄子:まあまあ。で、つまりどういうことなん?。
ヨシマル:つまり『王道ファンタジー』の冠を付けることでファンタジーという枠から外れることに成功してるんだ。
栄子:外れる?
ヨシマル:先に『王道』と言っておけば、読者がそれぞれ持ってる『王道ファンタジー』に当てはめることができるからね。どんなファンタジーかっていう説明を省ける。
栄子:本来ならしなければならない説明をしなくてもよくなるんや。それが外れるってことやな。
ヨシマル:そう。そしてファンタジーから外れた先にあるのが、さっき言ってた友情物語なんだ。
栄子:世界自体でなく、タウとキアが物語の中心ってことやね。
ヨシマル:実際、第一話の中で登場人物は二人だけなんだ。龍も出てくるけど『人』じゃないしね。
栄子:男子二人やから――と想像してまうよね。
ヨシマル:イラストも高河ゆんさんだし……。ってそういうことじゃなくて、例えば「あぶない刑事」や「相棒」シリーズだったり、「ガングレイヴ」や「鋼の錬金術師」みたいに男二人主人公っていうのはその主人公本人たちに焦点を当てたヒューマンドラマになる傾向がある。
栄子:命を掛けて戦う男たちって絵になるんよ。相棒の危機に体を張って守って――
ヨシマル:……。まあ、つまり男二人っていのは二人の間での問題発生から解決までのプロセスをより濃く描くことができるんだと思うんだ。これはヨシマルの主観だけれど男二人主人公はガンアクションとかハードボイルド系の作品に多く見られる気がする。
栄子:その方が想像膨らむし。
ヨシマル:なんのだよ!
栄子:言いたいことは「金の瞳と鉄の剣」はファンタジーを装ったヒューマンドラマってことやな。
ヨシマル:そいういうこと。これ以降は二人の過去未来を含めた関係性に要注目だね。
栄子:にしても、今回も長かったな。
ヨシマル:こんだけ書けば前回「レビュアー騎士団」を「レビュー騎士団」なんて書いたことも忘れられるだろ。
栄子:自分で言っちゃったよ!
ヨシマル:しまった!
栄子:フッフッフ。どうせ来週はヨシマル一回休みやしな。
ヨシマル:なんか嫌な予感。
栄子:それでは次回魔法少女マジカル☆エイコ! をお楽しみに!