名探偵 夢水清志郎事件ノート 亡霊は夜歩く
カップル? アベック?
レビュアー:ヨシマル
栄子:ちぇんじ!ちぇんじ!はぁときゃっち♪
ヨシマル:ちょっ。
栄子:だんす!だんす!はぁときゃっち♪
ヨシマル:まっ。
栄子:はぁときゃっち♪ぷりき――
ヨシマル:ストーーーーップ!!!!
栄子:なんやの、いきなし。
ヨシマル:それはこっちのセリフだって。いきなり何歌い初めてんの。
栄子:「ハートキャッチプリキュア」やん。知らんの?
ヨシマル:それは知ってるよ。なんで歌ってるのかって言ってんの! ここどこか知ってるでしょ。
栄子:もち! 好きなアニメを語りつくすんでしょ。任しといてや! えりか大好きやああああ!
ヨシマル:うわぁ。ノリ突っ込みもできないくらい間違ってる……。
栄子:なによ。最初なんやから少しくらいこっちのテンションに合わせてもええやん。新しいプリキュア始まるのに最終回も見れてへんのやから、ストレス溜まってるのよぅ。まったく。ちゃんと分かってるって。星海社の「さやわかレビュー騎士団」やろ。
ヨシマル:分かってるなら初めからしっかりやっといてよ。確かに、今ヨシマルたちが居るところはプリキュアの放送見れないんだけど、ここで発散しなくても。
栄子:他にどこですんのよ。ってことで、レビューはっじめっるよーーー。
ヨシマル:強引だなあ、もう。はい、じゃあ今回の対象を紹介して。
栄子:今回は箸井地図「名探偵夢水清志郎ノート 亡霊は夜歩く」(以下『亡霊』)やね。
ヨシマル:そう。はやみねかおるの児童向け小説が原作だね。
栄子:なんでこれにしたん? ヨシマル、ノベゲーめっさ好きやん。
ヨシマル:まあ、今回の連載陣見てみると確かにゲーム畑出身の人が多いけどさ。文章や原作に関わってないのは『亡霊』だけかもしれない。それについてはまた機会を改めてレビューしたいところだね。ただ今回『亡霊』を選んだのは「さやわかレビュー騎士団」っていう仕組みがきっかけだな。
栄子:仕組み?
ヨシマル:うん。こういう応募型レビュー企画って企画側が作品を絞るのが普通だと思うんだ。でも、「さやわかレビュー騎士団」っていうのは星海社っていう縛りはあるけれど、それ以外は自由だ。最初の説明にもあるように誰かのレビューをレビューしてもいいって書いてある。
栄子:それで?
ヨシマル:それが許されるってことはレビューをレビューしてそれをまたレビューして、またそれを(以下略)っていう入れ子が成立しやすいってことになる。つまりレビューが作品自体になってしまうっていう逆転構造が生まれてしまうんだ。
栄子:(……ややこい。)逆転構造になるとどうなってしまうん?
ヨシマル:知識ひけらかした後批判されると悔しい。
栄子:はぁ?
ヨシマル:ほら多少なりとも背景知ってるって思うと知ったかしちゃうでしょ。
栄子:子供か!
ヨシマル:まあ、そんなわけで今回は『亡霊』です。はい。
栄子:分かったことにしとこか……。
ヨシマル:実際そういうことなしに考えてもこの作品は興味深い作品なんだ。あらすじお願い。
栄子:はいはい。舞台は亜依・真衣・美衣三姉妹が通う虹北学園。学園祭を控えたこの学園で四つの伝説になぞらえられた不思議な現象が次々起こる。その謎を探る三つ子と名探偵夢水清志郎が迫る!って感じやな。
ヨシマル:そうだね。学園祭、不思議な伝説、そして気になる異性、と学園ミステリーの王道設定がふんだんに盛り込まれてるのが本作の特長かな。
栄子:レーチカッコイイわあ。
ヨシマル:レーチのかっこ良さはこれから描かれていくだろうね。ヨシマルは小説の原作は未読だけれど、昔NHKで放送していたドラマを見てるんだ。
栄子:ダブルブッキングの人が夢水してたやつやな。
ヨシマル:懐かしい話だなあ。「双子探偵」って名前を変えてね。夢水は和泉元彌だった。
栄子:羽野晶紀の旦那。
ヨシマル:元彌情報はもういいよ。
栄子:主婦にはウケがええのに……。
ヨシマル:主婦ウケ考えてどうする。話を戻すよ、ドラマにも同タイトルの話があったけど、内容はかなり違うみたい。だから原作が94年出版の有名作品だけど推理しながら読むっていう楽しみかたがでるから面白いね。
栄子:いつもなら解決篇まで一気に読み進めるからなあヨシマルは。
ヨシマル:それを考えるとミステリーと連載形式ってのは相性は他の小説と比べてもいいのかもしれないね。
栄子:でもこの漫画、伏線が分かりやすい気もすんねんけど。磁石が盗まれた事件とかちょっと唐突過ぎひん?
ヨシマル:そこはページ数とかの都合もあるだろうけれど……。もともと原作が小学生を対象に書かれてるってのが大きいだろうね。実際ヨシマルの通ってた小学校にも置かれてた覚えがある。
栄子:それもずいぶん昔の話になってまうなあ。
ヨシマル:うぅ。悲しき哉。でも、今回のレビューの論点はまさにそこなんだ。
栄子:やっとレビューの中身が出てきたんかいな。
ヨシマル:誰のせいでこんなにかかってると思ってんだ。
栄子:♪
ヨシマル:まったく。で、重要なのはこの話の原作が書かれたのが既に20年近く前ってことだ。
栄子:Gガンの頃やな。
ヨシマル:その覚え方もどうかと思うんだ。でも実際ヨシマルもGガンをリアルタイムで見てた世代じゃないからそれだけでも時代を感じてしまう。
栄子:いや、そこ見栄はらんでも。そこそこ直撃やん。
ヨシマル:うるさいよ、そこ! 実際ヨシマルはWから見始めたんだから間違ってはないの。それだけ時代が経ってるってこと。
栄子:確かにワープロなんかまったく見んくなったし。
ヨシマル:パソコンにもフロッピードライブ標準装備じゃなくなってからずいぶん経つし、2話で脅迫文が書かれた文章を読むのにわざわざプリントアウトしてる所にも違和感を感じてしまう。
栄子:そうやな。箸井地図さんの絵も最近の絵っていうより児童書って雰囲気の絵柄やし。
ヨシマル:それがこの作品の雰囲気を醸し出してるのは確かだけどね。箸井地図さん自身それは狙って描いてるんじゃないかと思う。
栄子:「探偵儀式」と絵柄だいぶ違(ちゃ)うし……。
ヨシマル:それにワープロとかとフロッピーとかガジェットだけじゃなく、物語全体がノスタルジックに仕立てられてる。
栄子:中学校時代でも思い出すん?
ヨシマル:確かに物語の舞台は中学校なんだけど、ヨシマルが感じるのは小学生の頃の感覚なんだ。
栄子:なんでなん?
ヨシマル:原作者がこの話を書いたとき現役小学校教師だったってのと関係はあるのだろうけれど、なんというか、レトロフューチャーに近いものを感じるんだ。
栄子:れとろふゅーちゃー?
ヨシマル:昔の人が考えた未来像ってとこかな。懐古的未来像とも呼ばれてる。つまり、この物語の舞台設定が小学生から見た理想の中学校って感じなんだよね。
栄子:まあ、中学校の学園祭でこんな大規模なことやるとこなんて滅多になさそやしなあ。
ヨシマル:多分に理想化された学園生活なんだよね。作中に登場するような校則に楯突く優等生なんかはむしろはやみねかおる本人を射影してるともとれる。
栄子:どーせ、あたしの中学時代にはレーチも憧れの先輩もいなかったわよ!
ヨシマル:いきなり叫ぶなって。もともとが小学生向けなんだから。彼らが楽しめるように、成長するのが楽しみになように舞台を整えてある。その辺りがレトロフューチャーと同じなんだ。
栄子:なーる。でも星海社で読んでんの小学生より上の世代が多いんやない?
ヨシマル:それもまたレトロフューチャーなんだ。
栄子:?
ヨシマル:実は現在でもレトロフューチャーを舞台にした作品は生み出され続けてる。レトロフューチャーを生み出した人達にとってそれはこれから迎えるかもしれない未来として描いてるんだけど、現代から見たら昔の人が思い浮かべた存在し得ない世界として理想化されてる。
栄子:……。
ヨシマル:まあ、簡単に言えばこんな中学生活だったら良かったなぁって思えるってことだね。特に小学生の時リアルタイムで読んでた人はぐっとくるんじゃないかな。
栄子:はやみねかおるさん好きって人確かに少し上の世代の人が多い気するわ。
ヨシマル:今20代後半のイメージかな。
栄子:あたしたちの設定は20代前半やな。
ヨシマル:……ギリギリだけどね。でも実際ヨシマル達の世代からすると少し違和感を覚えてしまうセリフ回しなんかもときどきあるんだ。
栄子:「カップルで座ってた」とかやな。
ヨシマル:うん。微妙な表現ではあるんだけど、この文脈で使うのにヨシマルは抵抗があるんだ。
栄子:カップルって他人に使うイメージやもんな。使うのもちょっと気恥ずかしい感じやし……。
ヨシマル:それがすんなり受け止められるのはリアルタイムに過ごしてきた世代かまだそういった言葉を使ってないかのどちらかになるだろうね。そういう意味でも対象年齢は子供と大人なんだ。
栄子:子供から大人まで違(ちゃ)うねんな。
ヨシマル:もちろん今の高校生や大学生が読んでも面白いのは大前提なんだけど、特にその二つの世代が持つ印象は強いと思う。
栄子:つまり年少組はこれから来るかもしれない未来を見て、年長者はあったかもしれない過去を見るってことやね。
ヨシマル:今星海社で夢水シリーズを扱ってるのも、そのあたりのことを考えてるんだと思う。
栄子:20代後半の人が主な読者ってこと?
ヨシマル:そう、最前線の連載陣を見てもそのあたりを読者層って考えてる節はあるしね。
栄子:そんな所まで考えてるんやねえ。編集さんの趣味やと思ってた。
ヨシマル:もちろんすべてヨシマルの想像だから本当のところは分からないけどね。完全に趣味かもしれないし、全然違う思惑があるのかもしれない。でもそういう発想でラインナップを見るのも楽しみの一つだよ。
栄子:読み手にも背景があんねんな。二つの世代がターゲットやったなんて。あ、分かった!!
ヨシマル:どうした、いきなり。
栄子:おんなしような作品見つけてん。
ヨシマル:同じような作品?
栄子:そや。
ヨシマル:小学生といい大人向け?
栄子:なんや引っかかる言い方やなあ。けどその通り。表向きは子供向け、しかしその実大人向けの作品。しかも巷で大人気。
ヨシマル:たいそうなキャッチコピーだな。なんなのそれは?
栄子:それは――
ヨシマル:それは?
栄子:プリキュアやーーーーー!!!
ヨシマル:な、なんだってー!
栄子:『名探偵夢水清志郎』シリーズはミステリー界のプリキュアやったんや!
ヨシマル:結局落ちもプリキュアかいっ!