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「ブレイク君コア」のレビュー

金

ブレイク君コア

ブレイクコア的精神

レビュアー:もるちこ

 この作品の登場人物の多くは、あまりに行動が突発的で、暴力的すぎる。要するにリアリティがまったくないように見えるのだ。そこに拒否反応を示す人も多いだろう。しかしこの支離滅裂な登場人物たちの行動にこそ、この作品の本質が現れているように思う。
 登場人物の突発的な行動については、作品のタイトルにもあるように、ブレイクコアという音楽が強く関係している。ブレイクコアがどういう音楽であるかは、作品内でヒロインが言及している。

「サンプリング元が分からないほどに細かく素材を裁断して複雑に再構築した奇形の音楽…(中略)…音楽として成立しているかも危うい、聞く人によっては雑音以外の何物でもない…(中略)…ラジオのノイズ、工事現場のボーリング音、都会の喧噪、感度を上げたマイクが拾う割れた風の音。そういう日常の奏でる音も私にとってはブレイクコアだ」(『ブレイク君コア』第一回の390段あたりから)

 この小説に出てくる登場人物で、支離滅裂な行動パターンを持つキャラクターは、みんなブレイクコアを聞いている。それはブレイクコア的精神(ぼくの造語です)の持ち主だからだ。上の引用から、ブレイクコア的精神を持つ人間の特徴として二つ挙げられるだろう。一つ目は、強い破壊衝動を持つこと(「細かく素材を裁断」)。二つ目は、日常生活にある、あらゆるものがブレイクコアになること。
 この作品の中で起こる唐突で支離滅裂な出来事は、すべて破壊衝動=暴力衝動≒性衝動が原因になっている。ブレイクコア的精神の持ち主は衝動的であるために、感情が短絡的に行動へと結びつきやすい。
 身体感覚が鋭いのも彼らの特徴だ。この作品において、身体感覚に関係する描写は、リズムが強調された文体で表現される。それは、ブレイクコア的精神が、感覚すらも音楽的なものに変換してしまうからだ。だから唐突にセックスしたり、暴力行動にでたりするのは、身体感覚の刺激を常に求め、感情の抑えがきかない彼らにとって、とても切実な問題でもあるのだ。そのために彼らは社会と迎合することができず、厭世的になってしまう。

 さて、この小説には精神と身体の入れ替わりという設定がある。ぼくが思うに、これには二通りの読み方がある。一つは恋愛もののライトノベル的な読み方。そして二つ目は文学的な(という言葉が正しいのかわかりませんが)読み方だ。
 一つ目の読み方は、まあそのまま読めば楽しめるだろう。身体と魂の問題について、恋愛感情を鍵に主人公が考えていく。これは共感しやすいところだろう。
 二つ目の読み方は、さっきも言った「ブレイクコア的精神」に着目する必要がある。そしてこの小説には、ブレイクコア的精神だけでなく、ブレイクコア的身体も存在しているのだ。
 ヒロインははじめブレイクコア的精神の持ち主だったが、身体はそうではなかった(彼女は「柔和な顔つき」の美少女である)。ところが精神と身体の入れ替わりによって、彼女の精神はブレイクコア的身体を手に入れることになる。するとどうなるか? 入れ替わり直後のヒロインの行動はあまりに唐突なものだったが、同時にきわめて象徴的なものなのだ。
 このような文学性を持ちつつも、この小説は飽くまでライトノベル的な視点で語られる。この二重性こそ著者の真の狙いであろう。
 読んでみれば分かるが、この小説はライトノベル的な設定や文体を使いながら、普通のライトノベルとはまったく違ったものとなっている。どこが違うのかは、簡単に指摘することができよう。それはキャラクターである。
 ライトノベルはツンデレやヤンデレといった、カテゴリー化されたキャラクターを使う。あるいはアニメ的にデフォルメ化されたキャラクターだ。しかしこの小説のキャラクターはカテゴリー化できない。それは原初的な感情の塊として現れるからだ。それでいて明晰な自己分析能力を持っているから、キャラクター小説には成り切れない切実さを持っているのだ。
 そこでやはり舞城王太郎からの影響が指摘できるだろう。舞城王太郎の小説も、支離滅裂行動パターンを取りながらも明晰な一人称で語られる場合が多い。
 この小説の終盤で「究極のブレイクコア」が出てくるのだが、これは舞城王太郎の『山ん中の獅見朋成雄』に出てくる「究極の食」を意識したものと思われる。「究極のブレイクコア」が果たしてどういったものだったか、ぜひ読んでほしいと思うが、一見過激さを演出するための残酷描写が連ねられているように見えるが、実際は非常に切実な問題をはらんでいるのだ。

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2013.04.16

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

きぬてんさんの絵

躍動する異空間の魅力

レビュアー:zonby AdeptAdept

「ブレイク君コア」続く「夜跳ぶジャンクガール」を彩るきぬてんさんの絵が好きだ。
さらに正確に言うと、人物を中心として背景に広がる、空間の描き方が異様に好きだ。
人物、に関して私はさほど魅力を感じていない。
人物から沸き上がるように描かれる絵ー否、異空間とでも呼ぶべき背景の方が、よほどその描かれたキャラクターを表しているように感じられる。

縦横無尽に引かれた線が形作る画面。
何かの建築物や物をモチーフにしているが、それらを描き出す線は途中でそれらを形作ることに飽きてしまった、とでも言うかのように、ひょい、と違うところに走り出す。
重力さえも、その世界では法則を失う。
天が地に。地が天に。
浮かばないはずの物が中空に浮かび、おかしな浮遊感と躍動感を生み出す。
線に限らず、色も自由奔放だ。
彩度の高いポップな色調。
様々な色が使われるが、それらは不思議と統一感を持って画面を構成している。
下地の白でさえも画面の中では意味を持ち、一つの「色」として機能しているのが分かる。
普通に考えて色のあるべき場所、という概念は意味をなさない。

緻密、という意味では美しくないだろう。
無秩序、というほど滅茶苦茶でもない。
落書きみたいな、と言うと軽くとらえているように聞こえるが、落書きで絵を描いていないことは絵を見れば分かる。
絵を見ながらこれを書いているが、正確にとらえようとすればするほど、何故だかするすると逃げられてしまうような感覚に陥ってしまう。

何故、こんなに惹かれるのだろう?
それはひとえに、自分では描くことのできない世界をきぬてんさんが描いているからだと思う。
きぬてんさんの絵は、線も色も本人にしかコントロールできない絶妙なバランス感覚のうえで成り立っている、と私は思うのだ。
白紙に色鉛筆。
さあ、自由にやっていいよ。
というのは、自由にやれるように思えて中々自由にはできないものだ。
人を描けばちゃんとデッサンをとってしまうし、紙の中に重力はないと知りつつも、雲は空に木は地面に描いてしまう。
無理にそれを覆すことはできるが、常識や知識が邪魔をする。
結果、どことなくぎこちない。悪く言えばあざとい感じになってしまうのは私も経験があるところだ。
意識的に、でも無意識に、というのは何度やったって難しい。
おそらく、であるが。
きぬてんさんは、それができる人なのだろう。
意識的に、無意識に。
卓越したバランス感覚でもって、白紙の中のルールを決め、世界を描き出す。
軽々と飛び越えているように。
魅せる。

「ブレイク君コア」「夜跳ぶジャンクガール」ときて、その世界のルールにより磨きがかかったようだ。
次にどんな異空間を魅せてくれるのか、どれだけ軽々と常識を飛び越え、白紙の中で遊んでくれるのか。
私は今からどきどきしている。

最前線で『ブレイク君コア』を読む

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2012.06.08

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

『ブレイク君コア』 小泉陽一朗

穴があるからドーナツなのだとしても

レビュアー:ややせ NoviceNovice

彼/彼女と、心/身体が入れ替わっちゃった!というストーリーにおいて語られるのは、大抵、「自分のものじゃない身体への違和感」と「それを周囲にばれないようにするための努力」ではなかっただろうか。
つまり、着心地の悪い服としての身体と、容れ物に過ぎない身体に心が合わせなければならない不自由さ。
「自分」というのは、100パーセント「心」のことで、「身体」というのは格が下であるかのような、あるいは心の従属物であるかのように捉えられてきた。

それが『ブレイク君コア』ではちょっと違う。
女の子を好きになった!とアプローチしながら、どうやら事故の衝撃で好きな女の子の身体に別の人間の心が入ったらしいと知った主人公は、その別人の心が入った女の子を好きになっていく。
しかも好きになった契機は、性的ないちゃいちゃ、身体同士の出会いなのだ。
好きな女の子の心の行方を積極的に探そうとはせず、このままがいいとまで思い、最終的には好きだった女の子の不利益になるようなことまで選択してしまうのだ。

性同一性障害の人は、ほとんどの場合、心の方の性別に身体を合わせようとするらしい。
それくらい、「私」というのは「心」の方なのだ。
ただ、「身体」はあらゆる感覚の受信機でもある。あらゆる快楽も痛みも情報も、受け止めていくのは身体の方だ。
なんだかんだと思考しながら、好きだった女の子の身体に入っている心の持ち主が男かもしれないと知った主人公の取った激しい拒否の醜態は、こう言っちゃなんだが笑えてしまう。
結局、誰の、何が(心or身体)が好きなのか。
分からないまま定まらないままなのが、ひたすらおかしかった。

猟奇殺人があり、怪しげな心霊探偵が登場したりもするのだが、特にこれといった強いキャラクターは登場しない。主人公も美少女も存在が弱い。
それだけではなく、主人公に独白させている通りストーリー自体の持つ力にどこか懐疑的で、そのくせ日常回帰に執着したりもしないのだ。
レビュアーの私と主人公の彼/彼女、そして作者の体験する現実は全然違う。全然違うけれど、確固たる拠り所のない不安さは自由に繋がることを知っているし、制約だらけのこの肉体がシンプルで強大な快楽を与えてくれるものだということも知っている。
リアリティのないストーリーなのに、恐ろしいまでのリアリティがそこにはある。ばらばらに分断された心と身体の話ながら、この小説が語りかけてくるのは、(たとえ本来の自分のものではないとしても)その両方の必要性だからだ。

レビューの目的から外れるかもしれないが、あとがきまでを読んで、心と身体の関係から個人と社会の関係を類推した。
常識的に考えて、「個人」のために「社会」が合わせてくれるということはないだろう。
そう思うと、頭部だけきれいに残った死体のような、なんとも言えない寂しさが読後に残った。

最前線で『ブレイク君コア』を読む

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2012.03.09

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

仕掛けよりも描写を

レビュアー:koji NoviceNovice

真っ白のパレットに原色の絵具をバケツでぶちまけたような作品。衝撃だけはあるけれど人物の様子もクリアに見えてこなければ、場面場面の絵も鮮明に浮かび上がってこない。
あらすじそのものはとても上手く出来ているようには感じた。
冒頭、主人公は自分の自転車をボコボコに蹴っ飛ばす風変わりのヒロインと出会う。次第に仲良くなり恋愛に向かうのかなと思いきや、事故により展開がサスペンスホラーに一転していく。そして、また新たなヒロインが現れて三角関係の恋愛が見え始めて……。
「プロットポイント」、「ミッドポイント」、「プロットポイント2」を上手に満たした展開は惹き付けられるものがあった。
だけど、どうしても登場人物たちの顔が浮かんでこなかった。
「この子たちと同じクラスだったら自分とはどんな関係だっただろうか?」
そういうのが上手く想像できない。
読んでいてもどうしてそういう行動を取るのか、頭を傾げる場面がたくさんあった。
病院で武藤はいきなり主人公に性行為をし始めるけど、彼女の一体何がそんな行動に駆り立てたのか、私には理解できなかった。あんな状況でも彼氏と知れば性的な奉仕をしないといけないと思ったのだろうか? その後、説得力のある行動原理を求めて読み続けたが結局、最後まで何も説明はなかった。
これは推測するしかないのだけど、あの行動は後の三角関係を形成するのに必要だったり、主人公が武藤が男だと勘違いしてショックを受けるために必要な伏線だったのだろう。
要するに作者の都合で、武藤の意思はない。
多分、作者にとって小説はなによりも仕掛けが大事で、息もつかせないストーリーで二転三転をして読者を飽きさせないことを第一に作ったのだろう。そして、それは成功している。
だけど、それでは登場人物はただの駒に過ぎない。登場人物が生き生きしていないと読んでいても面白くない。
私たちが読んでいるのは、登場人物たちが過ごしている生活氷山の一角であり、海面の下では、退屈で膨大な量の”日常”があるはずなのにそういう所が見えてこない。食べ物は何が好きだとか、トイレに入るときはどんな本を持っていくか、とか。そういうどうでもいいけど登場人物を彩るには欠かせない細部がスッポリ抜けている。
だから、壊れた兄貴を持った武藤の葛藤や、霊能力者探偵が抱えている苦悩も、まるで伝わってこない。
私たちがある小説に説得力を感じたり、ある種のリアリティを感じるのは、プロットや観念的なテーマではなく、生活世界に他ならないのだから、こういう所で手を抜く、あるいはそういうのを軽視する作家はどうも信用したくない。

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2012.01.30

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

この小説を読んで思い出したブレイクコア楽曲レビュー

レビュアー:なきねこ NoviceNovice

 飯田いくみはこう独白した。「私はブレイクコアが好きだ」。僕はこの小説を読み終え、また初めから読み返していた。そして、この独白を再度目にしたとき、腑に落ちたのだ。そうだ! この小説は、ブレイクコアだ!
 というわけで、僕が選ぶ「この小説を読んで思い出したブレイクコア楽曲レビュー」を敢行しよう!


「Bakkenversper」 by. Robag Wruhme
http://www.youtube.com/watch?v=D0WURrablZg
 青臭くロマンチックなストリングスから始まるこの曲。でも、ただのおとなしい曲だと思って甘く見てはいけない。ロマンスが最高潮に満ちたところから一気に始まる暴力的で激しいビート。しかしそれは、ただ凶暴なだけではない。その根底には、やはり青臭く、しかし切実なストリングスが流れ続ける。
 確かにこのビートには、論理は感じられないかもしれない。整合的なリズムは感じられないかもしれない。しかし、自らの快楽にどこまでも正直な、誰にも流されず自分の感情を愛した人間が紡ぐ切実な音がそこにはある。


「Banal Universe」 by. DEV/NULL
http://www.youtube.com/watch?v=AX_cduH-CwE
 めくるめく変わる曲展開。ほんの3秒前まで殴打殴打殴打だけの単純展開だったはず。でも今は、独特の美しさがある不協和音が鳴り響いている。これはいったい何の楽器だ。わからない。わからないけれど、なんとなく美しい。そんなときでも相変わらず殴打のビートは続く。そんな曲だ。
 かと思いきや、突然止まる殴打。そこで鳴り響く美しいシンセストリングス。とんでもない落差。その美しさに浸るまもなく、また始まる殴打殴打殴打。情緒不安定に変わる曲展開。
 そして殴打のまま曲は突然終わる。呆気にとられる。美しさに浸ることができなかった? いや、それは違う。だって、シンセストリングスのような美しさだけが、美しさの形ではないだろう。殴打と不協和音、そして情緒不安定な曲展開。これらがこの曲の魅力であり美しさだ。

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2011.12.20

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

「ブレイク君コア」「星の海にむけての夜想曲」

震災以降の小説としての評価。「ばらばら」となった私たちの物語。

レビュアー:USB農民 AdeptAdept

 東日本大震災が起きて、私たちの日常の感覚は大きく(あるいは少しだけ)変わったように思う。
 放射能という見えないものについて考える時間が増えた。
 いつか再び来るであろう大地震のことを想像する機会も増えた。
 今の日常は(もうずっと前から「終わりなき日常」と呼ばれていたそれは)、ある日唐突に終わってしまうかもしれないんだ、という目をそらすことの難しい実感も生まれた。
 人によって、感じ方には極端な差異があると思う。
 けれど、人によらず、共通していることはある気がする。

 私たちの日常の感覚は少しだけ(あるいは大きく)変わってしまった。
 そして私たちのこれからの未来も、震災前と震災後では、変わってしまった。
 私たちは、この国で暮らしていくことの危険と不安について、考えないわけにはいかなくなった。
 でも、その感覚を明確に表す言葉は、まだとても少なく弱い。
 この言葉の不足感だけは、人によらず、共通していると思う。

 映画や小説などの物語は、時に私たちに新しい言葉やイメージを授けてくれる。
 小松左京の『日本沈没』が、日本の経済成長の裏にあった社会不安を描いたように。
 村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』が、自意識や内面の問題を鋭く戯画化したように。
 庵野秀明の『エヴァンゲリオン』が、閉塞した時代の空気をロボットアニメで表現したように。
 上記のような作品は、物語を楽しむこととは別に、受け手に様々なことを考えさせる力を持っている。
 だから、小説を読むことで、自分が今いる現実について考えるきっかけを掴もうとするのは、それほど突飛なことではない。

 だから、私は次の二つの小説、佐藤友哉「星の海にむけての夜想曲」、小泉陽一郎「ブレイク君コア」を読んで、震災以降について考えたことをレビューとして書こうと思う。
 結論から先に述べれば、震災以降の小説という観点から、私は「星の海にむけての夜想曲」よりも「ブレイク君コア」のほうが優れていると考える。
 なぜか。
 それをこれから説明する。


「思想地図β」という雑誌で「震災以降」という特集を組んでいたのを読んだ。
 巻頭言には、次のようなことが書かれていた。

『震災でぼくたちはばらばらになってしまった。』

『ぼくたちは平等ではない。年収三億と年収三○○万は平等ではないし、東京都民と福島県民は平等ではないし、平成生まれと団塊世代は平等ではないし、独身者と子育て世帯も平等ではない。同じ災害をまえにしても、それぞれの立場によって被害の深さと対応力はまったく異なり、そしてこの国にはもはや、それを埋めることのできる力のある政府は存在しないし、これからも一○年二○年は復活しそうにない。
 震災でぼくたちは、自分たちがばらばらであること、そしてこれからもずっとばらばらであろうことを知ってしまった。
「みな同じ」でないことを知ってしまった。』

 震災以降、友人たちと話していても、このような気分を感じることは多い。
 特に、危機感が人によって大きく違う。誰かが深刻に不安になっている事柄(たとえば、放射線のこと)でも、別の誰かにとっては必要以上に深刻になっても仕方ないことだったりする。
 東北の被災地の話を聞いても、県によって、街によって被害の程度や、失ったもの(住んでいた町を失った人もいれば、仕事のための船を失った人もいる)も異なっているそうだ。失ったものが違うということは、必要とするものも違う。それは物質的な意味をもちろん含むけれど、その体験を受け入れるための言葉が違うことも意味している。言葉、つまり物語だ。
 東京近郊に住む私のような人間と、東北に住む人たちとでは、必要としている物語は異なっている。
 当たり前のように思われるかもしれないけれど、この『「みな同じ」でないこと』重大に受け止めるべき事実だ。「がんばれ日本、がんばれ東北」というコピーは、東京の人間と、東北の人間に対して、決して同じようには響かない。みんなの体験が「ばらばら」だから、みんなに届く言葉をこれから作りだそうとすることは、とても難しい。
 それでも、震災の喪失や、そこからの復興を物語化しようとするなら、どのような可能性が考えられるだろうか。

「星の海にむけての夜想曲」は、明らかに東日本大震災と、福島原発事故を意識した作品だ。
 この作品のメッセージは、端的で力強い。すなわち、「もし、あなたが世界に絶望を観ているとしても、その時、別の誰かは、きっと同じ世界を見て希望を見ている」ということ。
 喪失と再起を真っ直ぐに語っていて、私はこの作品を読んでいて少し感動した。
 しかし同時に、前述の震災以降の「ばらばら」の世界観では、この作品に欠点を感じたことも事実だ。
 それは、この作品では、登場人物たちが同じ絶望=物語を共有しているということだ。だからこそ喪失からの再起を真っ直ぐに語ることも可能となっているので、一概に欠点だともいえないのだけど、しかし「ばらばら」となった世界観を描いていないことも、また確かだ。
 私が「星の海にむけての夜想曲」より「ブレイク君コア」を評価すると書いたのは、そういった観点による。
 では、肝心の「ブレイク君コア」はどうなのか。

「ブレイク君コア」は、震災以前に書かれた小説であり、震災以降の物語として読むことに違和感を覚える人もいるかもしれない。けれど、作者自身があとがきで震災について触れていることからも窺える通り、この物語は震災と無縁ではない。
 舞台が福島であることは、これこそ全くの偶然で、本来なら震災と結びつけるには弱すぎる要素なのだが、その「全くの偶然」こそが、重要であったりもする。
 今回の地震では、津波による被害がとても大きかった。逃げ遅れて津波に呑まれた人も大勢いる。地震発生から避難開始までの平均時間は、生存者が19分、亡くなった方は21分だという。ほんの2分の差というのは、決定的なようで、けれどやはり、生死を分ける条件としてはあまりに僅かな差だ。家を出るのがたまたま少し遅かった、あるいはたまたま少し早かったというその僅かな差は、大きな災害の前で、人の生死が偶然に決定されてしまうこを意味している。
 そしてまた、「ブレイク君コア」の二人のヒロインは、決定的な必然性もなしに、偶然的な確率で事件に巻き込まれてしまう。(作中で二人のヒロインが巻き込まれた理由は説明されるが、しかしその条件は、二人以外にも該当する人間が大勢いると思われる。それを踏まえると、やはり二人は偶然に事件に巻き込まれたと考えるのが妥当だろう)

 私たちの身にふりかかる災難は、必然性をもたない。
 ある日突然、理由もなくそれはやってくる。
「ブレイク君コア」の世界は、その感覚がベースにある。
 そして同時に、その事実は「ばらばら」となった世界をも意味する。
 必然的な理由を持って巻き込まれた場合(ラノベ的な物語では、たとえばそれは世界の危機であったり、家族の話であったりする)、そこには同じように必然的な理由をもった別の誰かと物語を共有することができる。
 しかし、事件に巻き込まれた人物たちが、みな偶然に巻き込まれたのだとしたら、そこに共有すべき物語は発生せず、彼ら彼女らはただ自分の個人的な危機と物語を抱えるしかない。
「星の海にむけての夜想曲」になくて、「ブレイク君コア」にある要素がこれにあたる。震災以降の「言葉=物語」を考えるための想像力は、偶然に関わり合うことになった人々が、「ばらばら」なまま何事かを成す物語として、「ブレイク君コア」で表現されている。

「ブレイク君コア」では、登場人物たちは皆が皆、自分のために行動している。自分の身の安全のために。自分の感情のために。それは他者と容易に共有することのできない物語であり、物語の終盤が示すように、他者と共有できない物語は、個人のなかで静かにその終わりを告げて行く。「事件=全体の状況」とは別ベクトルで個人の物語は進み、終わるが、しかし状況と個人はゆるやかに、あるいは激しく、関わりを持ち続けている。
 それらは別々の物語でありながら、決して無関係ではないし、無関係でいてはいけないのだと思う。

 この、状況と個人の関わりについては、今後さらに深く掘り下げられていくのではないかと予想する。
 なぜなら、その表現こそが、震災以降「ばらばら」になって、『「みな同じ」でないことを知ってしまった』私たちが持つべき「言葉=物語」の鍵となるに違いないのだから。

 そこから生まれる新しい物語に、私は出会いたい。

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2011.09.30

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

みてる?

レビュアー:大和 NoviceNovice

 僕が『ブレイク君コア』を読み終わった時、ふと頭に思い浮かんだのは『マリア様がみてる』という作品のことだった。なんて言うと、首をかしげる人も多いかもしれない。方や殺人あり恋愛ありの青春小説。方や由緒正しいお嬢様たちが織り成す少女小説。両者は見るからに全然違う作品だからだ。でも、ある一点において、両者は非常に近いことを描いているように僕は思った。

 『ブレイク君コア』では「人格の入れ替わり」を中心とした物語が展開されていく。ミステリー要素やどこかスラップスティックじみた猟奇的要素もあるが、軸となっているのは主人公とヒロインのラブストーリーだ。主人公はヒロインに恋をするのだが、ヒロインの肉体では「人格の入れ替わり」が起こっていた。つまり主人公が恋をした少女の肉体には、別人の魂が入っていたのだ。そして困ったことに、主人公としてはその「入れ替わった状態」こそが理想だった。倫理的には入れ替わりを解消させることが正しいと思いながらも、入れ替わった状態を維持したいという欲望の方が強く、それを実現させるため主人公は行動する。

 しかしこの作品において、主人公の欲望は必ずしも肯定されない。主人公の思惑を裏切るように物語は進んで行き、エンディングを迎える。

 そこで描かれているのは「他者を受け入れる」ということだと僕は思った。主人公の前に現れる少女は、必ずしも理想通りの相手ではない。しかし多くの場合、恋愛とは、出会いとは、そういうものなのではないかと思う。例えば僕らが誰かを好きになった時、その人がまるで自分の理想をそのまま体現した存在であるかのように思えてしまうことがある。だが大抵それは幻想や勘違いだったりするものだ。そこに僕らが見出しているのは相手の実像ではなく、むしろ自身の願望だと言える。そうやって恋焦がれている状態はそれなりに心地よいものだけど、けれどそこに他者の存在は無い。ただ自分の願望と戯れているだけだ。相手の実像、実態と向き合えているとは言えない。

 そして『ブレイク君コア』のエンディングは、そんな都合のいい思い込みに甘えたりはしない。願望に別れを告げ、等身大の相手と向き合うことを肯定してくれる。そこでは「人と人が関係を作る」ということをとても慎重に、大切に扱ってくれていて、とても美しいエンディングだと思う。

 僕が『マリア様がみてる』という作品を思い出したのは、まさにその点に関してだった。あの作品もまた、人と人が関係を作るということを丁寧に描き続けているからだ。例えば第一巻では主人公・祐巳が一方的に憧れていた上級生であった祥子と関わりを持ち、遠くから見るだけでは知る由も無かった祥子の性格や事情に触れ、しかしそのことがより二人の距離を近づけることになる。以降の巻においても、登場人物たちは思い込みやすれ違いを繰り返しながら、それらを少しずつ修正して、様々な形で関係を築いていく――『ブレイク君コア』と『マリア様がみてる』は全然違う作品だけど、でもそこにある美しさや尊さはとても近いものであるように僕は感じた。

 加えて言うならば、そうやって描き出されている部分が、印象的なガジェットによって見落とされがちな点も似ているように思った。例えば『ブレイク君コア』であれば人格の入れ替わりや「血みどろ」とも言われるミステリー要素や「青春」という惹句が、『マリア様がみてる』であれば「リリアン女学園」や「姉妹制度」といったいかにも少女同士の百合を感じさせる道具立てばかりが話題になることによって、物語がある種シンプルに描き出している部分に目が行かなくなりがちなのではないか。勿論、そういったガジェットは作品とは切り離せない重要な要素だ。それらを注意深く見つめることで初めて分かることもあるだろう。しかしそういった装いの先にあるものを見つめ、受け取ろうとすることも、また同じくらい重要なのではないかと思う。

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2011.09.08

「ブレイク君コア」のレビュー

銀

ブレイク君コア

新人賞らしい疾走感ある傑作!

レビュアー:USB農民 AdeptAdept

この本を手に取った理由は、この作品が第一回星海社FICTIONS新人賞受賞作であるからだ。
だから、期待していたのは新人賞受賞作らしい、この作者にしかない魅力だ。物語なりアイディアなり、これまでに見たことのない何かを期待せざるをえない。

果たして、この作品にはその魅力があった。
しかし、それは物語でもアイディアでもなかった。
それは青春の狂騒的スピードを感じさせる、登場人物の感情の変化と、それを描写する勢いある語り口だった。

主人公・入山優太の語りは、大雑把で、論理的な精密性はあまり感じられない。
しかし、作中で事件が進展するたびに、彼は「過去」の自分の感情よりも、「今」の自分の感情を優先させる。そうやって、停滞せずに前へ前へと進んでいく。
「好きな人」が「好きだった人」になってしまったことに戸惑いつつも、「今、好きな人」に対する気持ちこそ一番大事なのだと信じる。
ここに私は青春を感じた。

青春時代に、誰かを好きになった後で、他の人を好きになることは誰にでもあると思う。それは何も特別なことではない。
ただ、入山優太は、その感情が一日とか数時間とか、異様な速度で変化していく。
入山優太の青春は、その速度こそが特別だった。
青春の過ぎていく速度が速ければ速いほど、一瞬一瞬の感情が失われていくのも速い。だが、彼は自分の過去の感情が失われていくことを、感情の変化を恐れない。「今」ここにいる自分の感情こそを、常に大切にしようとする。
その語り手の意識こそ、この作品特有の勢いを生みだす原動力となっている。

この勢い、疾走感は、今までの青春小説にありそうでなかった、新しい語り口だと思う。
だから私は、この小説を評価するし、この小説が好きだ。

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2011.08.17

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

加速させられる心

レビュアー:くまくま

 一目ぼれした女の子が目の前でトラックにはねられる。しかも目覚めた女の子は別人格に変わっていた。でもその別人格にひかれている自分がいる。彼の気持ちの移り変わりは、激しく、そして早い。
 こんな奇妙な現象に巻き込まれなければ、入山優太は飯田いくみと段々仲良くなり、告白したらどうなっていたかは分からないが、ゆっくりと時間をかけて気持ちを整理していくことが出来ただろう。しかし、彼らが遭遇した出来事のつながりは、超高速の心の流れを生み出すことになってしまった。

、もし入山優太がこの心のビートに乗り切れなかったとしたら、彼はただの傍観者のまま、自分の知らない所で事件に決着がついてしまい、淡い気持ちも行き場をなくしたまま漂うことになっただろう。
 だが、実際に彼はビートに乗った。すごいスピードで移り変わっていく自分の気持ちに折り合いをつけ、自分が望む解決をその決断で選び取った。だからこの物語のビートを刻んだのは、飯田いくみでも武藤でもなく、やはり入山優太なのだと思う。

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2011.08.17

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

青春について本気出して考えてみた

レビュアー:ヨシマル NoviceNovice

栄子:また君に~♪ 恋してる♪ いままでよ~りも深~うかく♪
ヨシマル:うわっ、今度は何歌ってるの?
栄子:坂本冬美が歌ってヒットした『また君に恋してる』やんか。
ヨシマル:いや、それは知ってるよ。
栄子:ブレイク君恋!
ヨシマル:ダジャレか!
栄子:次の『不都合な真実』の公開は広島の造船の街やで。
ヨシマル:?
栄子:呉行くアル・ゴア!
ヨシマル:もう、意味分かんないよ。
栄子:アンタ! 自分もシャーマンだからって本気で占ってないんでしょ!
ヨシマル:は?
栄子:フレイが卑弥呼か!
ヨシマル:そんなボケ誰が分かるんだよ!
栄子:そのくらい突っ込んでえな。こっちは久しぶりで溜まってるんやから。
ヨシマル:知らないよ。しかもボケが無理やり過ぎるんだよ。
栄子:それ行け! 栄子や!
ヨシマル:もう全く原型ないじゃないか!!!!
栄子:まったく。久々のレビューなのに相変わらず変なボケばっかりして。突っ込むこっちの身にもなってくれよ。今回が『ブレイク君コア』のレビューだからって適当なボケで許して貰えると思ったら大間違いなのに。そろそろあらすじ紹介行くよ。ってあれ? 栄子が喋ってることになってる。あれあたしの体が目の前に……。――まさか、さっきの突っ込みのせいで栄子とヨシマルの心と体が入れ替わってしまっ――
ヨシマル:てないよ! 文章だけなんだからボケなのか本当なのか分かりづらいんだよ。
栄子:うぅ。少しくらい乗ってくれてもええやんか。
ヨシマル:いや、本当に一回でも乗っかってしまうと訳が分からなくなってしまうから。第三者から見た説明がないと入れ替わりが起こったかなんて分からないし、だいたい会話だけなんだから入れ替わっても問題ないでしょ。
栄子:いやいや、問題大有りやろ。なんかこう大事な何かが。
ヨシマル:細かいことは気にしない。もう六百文字以上浪費してるんだから。じゃあ、あらためてあらすじ紹介お願い。
栄子:はいはい。主人公/語り部の入山はある日の下校中偶然目撃した自転車を蹴り続ける少女・飯田に恋をする。なんとか飯田と仲良くなって一緒に下校するようになったけれど、突然飯田が車に撥ねられてしまって――。ていう話やね。
ヨシマル:冒頭はそんなストーリーだね。ただ、飯田が車に撥ねられてからの展開が全く予想できなくて印象強いから、このあらすじではあまりあらすじ紹介にはなってないのが実際なんだよね。
栄子:最後まで二転三転しながらテンポ良く進むやんな。
ヨシマル:そうだね。切れ目なく話が進むから一気に読んでしまった人も多いんじゃないかな。
栄子:季節は書いてへんけど、夏ってことなんかな。イラストじゃ夏服着てるし。
ヨシマル:確か明記はなかったとは思うけど、梅雨だろうね。雨降って地固まる。青春のもやもや感から出発して爽快なラストを迎える本書っぽい季節だと思うよ。
栄子:まさに青春って話やからなあ。高校生が恋してエロくてグロくて……。
ヨシマル:そういった要素をごちゃまぜにして一つの物語になってるところがタイトルにも反映されてる訳だし、青春ってものに対してかなり自覚的な印象を覚えたんだ。
栄子:青春なあ。言(ゆ)うても普通は特別大事件に遭ったりしないんちゃうかなあ。
ヨシマル:そりゃ、高校生全員が何かしらの事件に巻き込まれてたら日本は大変なことになってしまうよ。でもまあ、小さな事でも感傷的な気分になってしまうことはあるしね。
栄子:ヨシマルもそんな時期があったん?
ヨシマル:まあね。もう古い話になるけど。それで改めてそのときの気分になって読んでみたら、昔に感じていた停滞感を思い出したんだ。
栄子:停滞感?
ヨシマル:うん。青春って停滞の時期だとヨシマルは思ってるんだ。さっきも言ったけど青春時代、特に高校生の時分に特別な経験ができる人なんて限られているし、それで劇的な変化が起こる人なんて滅多にいないよね。
栄子:まあ、せやなあ。
ヨシマル:それで本書なんだけど、入山にしても飯田にしても物語が始まったときと終わったときを比べてみてどれだけ変わったかってことになるとそんなに変化はないと思うんだ。
栄子:そうなん? いろいろ変わっていった部分てあると思うねんけど。
ヨシマル:もちろん、飯田がムツミと友達になったり、入山とムツミが両思いになったりと変化してる部分はあるけれど、それって特別な事件に巻き込まれたからこそ起きたことなんかではなくて、普通に高校生活送ってたらいつかは巡り会える類のことだと思うんだ。
栄子:うーん。でもこの事故が起こってなかったらムツミとは出会えてなかったんよね。
ヨシマル:そうなんだけど、ムツミと出会っていなかったら、ムツミの場所は丁度入山と飯田が入っていたんじゃないかな。
栄子:なんにもなかったら、入山と飯田が付き合ってたってこと?
ヨシマル:そうだね。中盤の展開をまとめて飛ばして考えてみるといいかもしれない。入山は恋をして、恋に向かって突き進んでる。飯田は自分のことを分かってくれるかもしれない人を探し続けている。ムツミは兄のことで引け目を感じながら、だれかと普通に恋愛もしてるだろうし、墓無は単に仕事をしてただけ。ムツムは結局アレだし。
栄子:関係する人が変わっても生き方の根本は変わらないってことなんかな。
ヨシマル:そういうこと。結局入山と飯田たちが大きな事件を乗り越えたことになるかは分からないけれど、大きな経験した上でのエピローグになってるはずなんだ。けれども、そこには大きな経験にこそ由来するものってない気がするんだよね。
栄子:あたしは色々あって入山も飯田も新しい出会いができて成長していったんやなって思ったけど?
ヨシマル:実際その通りではあると思ってるよ。でも、そうして発生するような成長は特別な何かによってだけもたらされるものだけではなくて、もっと日常的なことでも充分に代替可能なんだと思えてしかたがないんだ。
栄子:んーと、だからどういうことなん?
ヨシマル:そこで最初に言ってた停滞感って話になるんだけど、平ったく言えば飯田がトラックに轢かれてから起こる事件なんて彼ら彼女らにとって無意味な時間だったんじゃないかってこと。
栄子:む、無意味!?
ヨシマル:うん。例え飯田がトラックに轢かれなくてもエピローグのような展開にはきっとなっていただろうし、誰の人生にもあまり影響しないものだったんじゃないかなって思えるんだ。だから進んでいるように見てて実は全く進んでない停滞感なんだ。
栄子:うーん。分かったような分からんような……。停滞感なんて読んでて感じなかったし、むしろ爽快感みたいなん感じたよ。
ヨシマル:文章自体は垢抜けてないけど、読みやすいしスピード感もしっかり出てるから、読んでて気持ちの良いものだし、爽快感はヨシマルも感じたよ。
栄子:せやったら――
ヨシマル:だからこそなんだよね。この停滞感は青春の象徴の一つなんだよ。たぶん著者はこんな停滞感なんて全く考えてなんかいないだろうし、こんなふうに捉えるのも単なるひねくれ思考でしかないのかもしれないけれど、そこには確実に青春して停滞してる高校生が描かれてるんだ。
栄子:知らず知らずのうちに青春に停滞を覚えてるんやな。
ヨシマル:でも、その停滞っていうのは決して否定されるようなものではないと思うし、停滞しているからこそ疾走感とか勢いっていうものが際立ってくるんだと思うんだ。
栄子:共存してるんやね。
ヨシマル:そこが興味深いところなんだよね。疾走感を感じるにせよ、停滞感を覚えるにせよ、本書が青春の話であることには変わりはないし、どんな人が読んでも青春の日々に思いを馳せることができるんじゃないかな。
栄子:なるほどやなあ。青春にも色々な見方があるんやなあ。それにしてもヨシマルって――
ヨシマル:ん?
栄子:青春時代になんか辛いことあったん?
ヨシマル:え?
栄子:青春って単語に拘ってるし、なんか考えひねくれてるし。辛いことあったんなら相談のろか?
ヨシマル:そんなんじゃないって。
栄子:みんな初めはそう言うんやって。きっと辛いことがあったんやろ。恥ずかしがることないて、お姉さんに任せなさい。
ヨシマル:だから違うって。
栄子:はっ。まさか高校生にもなって先生に「お母さん!」なんて言ってまったん?
ヨシマル:違うわ!

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2011.08.17

「ブレイク君コア」のレビュー

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

青春の流れるスピードは速い

レビュアー:USB農民 AdeptAdept

人を好きになる前となった後で、自分が本質的に変わってしまったような感覚を
経験したことないですか?
「好きな人」が「好きだった人」になり、新たに出会った人が「好きな人」にな
った時、以前の自分とは別の自分に変化していく気持ちを知りませんか?
青春の流れるスピードは速く、感情は刻一刻と変化していきます。この小説はそ
ういう感情について書かれています。
形がなくて、うつろいやすい、でも大切な、青春の感情についての物語です。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

おれがあいつであいつがおれでを横から見守る主人公

レビュアー:ラム AdeptAdept

 ミステリアスな彼女が好き。
 でもフレンドリーな人格と入れ変わったらそっちを好きになった。
それって結局顔が好きってことなんじゃないん?
僕が好きなのはどっちの彼女、なんて迷ってる暇があったらもっと相手の気持ち
考えなさいよ。優しくしてあげてよ。
好きなだけでいいとでも思ってるのか。
逆の立場で考えて。思いやりを出し惜しまないで。
高校生って若いな…
男って子供だな
でも、だからこそ恋のために自分の命もかけられる。若いっていいね!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

ラブストーリーは壊れない

レビュアー:ticheese WarriorWarrior

「人格の交代劇」とか「血みどろ」とか惹かれるキーワードがいくつあったって、何より大事なことがある。それは「入山優太が飯田いくみに恋をした」ということ。入山優太は恋をした。一度飯田いくみに恋をして、再度人格の入れ替わった彼女に恋をする。顔が好みで、体にも興味がある。そして何より彼女の新たな人格が愛おしい。結果的に誰が不幸になろうとも、彼女と恋愛がしたいと願う入山優太の恋心が『ブレイク君コア』の原動力。不純でもいいじゃないか。最高の容姿と最高の人格を合わせ持った彼女を選ぶ入山優太の恋を私は応援する。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

駆けろ、答えを求めて

レビュアー:横浜県 AdeptAdept

入山優太は悩める若人だ
“人格”の交代劇に振り回されてしまう
彼が好きなのは、身体の持ち主・飯田さん? 魂の持ち主・武藤さん?
でも恋に恋する若者は、自分の気持ちと向き合えない
そもそも僕の気持ちって何だよ?
つい自問自答しちゃう
けど青春なんてそんなもの
どこにあるかも分からない答えを、若者たちは必死で探す
泥臭くて、なにより青い
ゆえにそこで得るものは、かえって清く美しい
青春を駆ける入山優太
彼にはその輝きを、本物の恋心を、掴みとることができるのだろうか?

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

君を壊したい

レビュアー:ラム AdeptAdept

主人公が告白しようと思ったらヒロインはトラックにはねられた。
事故から目覚めると別のカラダと入れ替わっていたヒロイン。
なのに、その別人になったヒロインのカラダこそを主人公は好きだという。
ブレイクコアが好きで中性的な顔立ち。
それがヒロインの入ったカラダの、本来の持ち主。
ムツム、僕は君の事がもっと知りたい。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

破壊

レビュアー:ひかけ NoviceNovice

「破壊」
それはどんな意味を持つのだろう。
辞書には「物がこわれること」とある。
物がこわれるだけで破壊と言うのなら、その壊す主体がなんであっても構わない
ということだ。それが人であっても、自然の力であっても。
これは壊す事を主体とする少女とその姿に心奪われた少年との青春の1ページ。
非現実的な現象によりその青臭さの残るページは「破壊」され再構築されてゆく

小泉陽一朗の描く青春ラブストーリーをご堪能あれ!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

Let’s Break Your Core, You Too !!

レビュアー:織部

Let’s Break Your Core, You Too !!
Author 小泉陽一朗 × Illustration きぬてん
現実に対する諦観。自己を含む世界への虚無感。
非日常なんて言葉の存在が戯言と感じられるような、まるで動かない日常の閉塞

青春はそんなものだって? 
違ってないけど、違うさ。
みんなまとめてブレイクコアしちまえ。
きっかけ一つに素材は無数。
彼女と彼と彼と彼女を、肉体と魂と記憶と関係を――
裁って解(バラ)して繋げてリ・ストラクション。
抑えきれない(主に撲殺への)この衝動!
《愛するあの子は、ヒトゴロシでした》
加速する青春の最前線が今ここにある。
第1回星海社FICTIONS新人賞受賞作品
    『ブレイク君コア』
So Let’s Break Your Core, You Too !!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

新しく描かれる“人格”の交代劇

レビュアー:横浜県 AdeptAdept

“人格”が入れかわる物語。
誰の? 主人公の? まぁ、普通ならそうだよね。
「自分の精神が、他人の身体に入ってしまった!」
そんな苦悩を抱えた2人を描く作品とか、よくあるよね。
でも『ブレイク君コア』はちがう。
「主人公が恋する女の子」の“人格”が、他人と入れかわってしまうんだ。
主人公はあくまで第三者。
でも彼にだって、外野なりの苦しみはある。
彼は好きな女の子を取り戻せるの? そもそも取り戻すべきなの?
あーもう悩ましい!
これは“人格”が入れかわる物語。
そして巻き込まれた少年の、苦闘と成長の物語だ!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

ねえ、キミの考えを聞かせて?

レビュアー:くまくま

「ねえ、私のどこが好き?」と聞かれて「う~ん、見た目?」と答えたら、すご
く怒られそう。でも、外見のない中身は存在するのかな?あなたが好きなわたし
は、いったいどこに宿っているの?
「罪を憎んで人を憎まず」と言うけれど、結局、罰は肉体にしか与えられない。
精神に罪があるならば、それに対する罰は、どの様に与えればいいの?
一目ぼれから人格入れ替わりに至る一連の事件を目撃する中で、ぼくはそんなこ
とを考えさせられた。
これは、心と体がバラバラになって組み合わさり、それぞれが恋を、そして死の
旋律を奏でる物語だ。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

最前線に遅れるな!

レビュアー:大和 NoviceNovice

星海社ができて早一年、ついに新人賞受賞作が登場した。レーベルにとって新人は未来を担い、占う存在だ。彼らの活躍によってレーベルは支えられる。彼らの輝きが次代の新人を集める。そして星海社が満を持して放ったのは、小泉陽一郎ときぬてんという新人同士のタッグだった。星海社はいつも時代を先取りするような試みで僕らを驚かせてきた。その星海社が未来を託した二人の新人。何が飛び出てくるか全くの未知数だ。ワクワクしないか?ドキドキしないか?今もブレイク君コアは新たな時代を切り開き続けている。時代の最前線に遅れるな!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

青春という置き土産

レビュアー:ひかけ NoviceNovice

青い春と書いて「青春」
それは誰もが経験することである。もしくは、今から経験する者もいるかもしれない。
でも、青春ってどこまでが青春なんだろ。
正直わからない。でもこれだけは確実に言える。この物語は「青春」の物語であると。
高校生。男と女の関係。そしてそれらを結びつける出来事。この青春真っ只中の時期に起こるあり得ない現象とそれに踊らされる登場人物たち。流れるような作者の物語には1秒たりとも目が離せない。しかとその目に焼き付けろ!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

舐めてるとやられるぜ

レビュアー:ticheese WarriorWarrior

あれ? どっちだよ!? やられた!!
コレらが『ブレイク君コア』読書時に、声を大にして叫びたかった私の思いの丈だ。いわゆる「俺がお前で、お前が俺で」の物語で、めまぐるしく移り変わったのは人格だけじゃない。主人公が恋する気持ちも移り変わり、その恋模様を読んでいく私の推測も次々と上書きされた。第1回星海社FICTIONS新人賞受賞作家『小泉陽一郎』。新人だと思って甘く見ていると、手痛くも気持ちのいいカウンターを見舞ってくれる。小手先の予測は通用しない。新人賞は「新しい」才能を見せてくれる賞なんだから。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

お腹痛い

レビュアー:ヨシマル NoviceNovice

例えばヒロインの飯田は言います。
「あーお腹痛い。面白いね君。なんだっけ、入山君? おもしろいわよ。お茶? なんてする場所ないじゃない。ジャスコでも行く? あーお腹痛い、涙出てきた」

「お腹痛い」って二度言うほどのことですか?
繰り返さなくても文意は通じます。でも飯田は二度言いました。
同じ言葉を繰り返してしまうことは現実の会話ではよくあることで、この台詞は読み言葉でなく、まるで喋り言葉のリズムのようです。

だから思ってしまうじゃないですか。
彼らの会話を聞いてみたい、舞台になったら観に行きたいと。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

受け入れる、ということ

レビュアー:大和 NoviceNovice

主人公は恋をする。だがヒロインの肉体では人格の入れ替わりが起きていて、本来とは違う魂が入っていた。主人公は「入れ替わった状態」のヒロインが理想。でもこの小説は主人公の理想を守ろうとはしない。それでいい、と僕は思う。恋をした時、僕らはしばしば、相手がまるで自分の理想そのものであるかのように思ってしまう。そんな時、大抵は願望を投影してるだけで、相手と真っすぐに向き合えていない。都合のいい願望を手放し、ありのままの相手を受け入れる。その大切さを謳うブレイク君コアのエンディングは、とても誠実で美しい。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

鉄

ブレイク君コア

物語の真価をその目で確認せよ

レビュアー:zonby AdeptAdept

君の目の前に一冊の本があるだろう。
そう、その「ブレイク君コア」と題名が入ったポップなイラストが印象的な一冊だ。いや買えとは言っていない、まずは手にとって粗筋でも読んでみてくれたまえ。
「ここが青春の最前線。」だとさ。
中々そそる惹句だろう?例え君が青春の真っただ中だろうとなかろうと、この物語は青春ってヤツを主軸に物語が展開されている訳だ。
おっと、その下にも注目してくれ。
そうだ。
この作品は、なんと第1回星海社FICTIONSの受賞作なのだよ。
面白いのかって?私に聞くな。
それは君が読んで確認することだ。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

身も蓋もないラブストーリー

レビュアー:げんきゅー

『人は人の何を好きになる?』

それは、量産される安価なラブストーリーでは、決して触れられることのない禁止区域。
この封鎖された地に、おそれを知らず踏み込むは、少しほれっぽい少年と、ココロとカラダをブレイクされた少女達。
深まる恋と謎の先にたたずむ、僕が好きになった『君』は一体誰なのか? 
青春の青臭さと身も蓋もなさをこれでもかと閉じこめた、星海社が放つ恋愛小説の新たなるスタンダード! 総員、爆音に備えろ!!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銀

ブレイク君コア

これは爽やかな青春ストーリーではない

レビュアー:akaya NoviceNovice

「二人の魂が入れ替わった」なんて使い古された状況で過去にも名作がたくさんある。しかしこれは新たにそれらに並ぶ作品。

始まりはトラックの衝突事故。本当の始まりは少女の殺人事件。偶然と必然とオカルトが綯い交ぜになって生まれたストーリー。

ありがちなテーマなのにどこにもない展開。最後の最後まで、読み終わるまでクライマックスは予想できなかった。ただ「二人の魂が入れ替わった」ことが物語の主軸だと思わされていた。

青春の甘酸っぱさよりも痛みが伴うが、それを覚悟してでも読むべき一冊。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

君がこの本を目にしちゃった、

レビュアー:matareyo

今。現在。この瞬間。君は何を想い、何を感じてる?
『ブレイク君コア』は「今この瞬間」を駆け抜ける。
恋に落ちた少年。その矢先の人格交代劇。
少年が恋をしたのは誰? 何?
確かなはずの「今」の想い。それはすぐさま過去に流れ去る。更新され続ける『今』。解体された人格、感情。本物はどこか。少年は青すぎるほどに問い続ける。バラバラにされても、むき出しでも、ツギハギでも、その先に生み出された答えがある。
今。現在。この瞬間。君は何を想い、何を感じてる?
そしてこの本を手に取り、駆け抜けた未来、その瞬間――

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

自分と向き合うラブストーリー

レビュアー:6rin NoviceNovice

自転車をボコる美少女、飯田いくみ。

邪魔するヤツは
撃つ!
撃つ!
撃つ!

赤い飛沫が踊り、灰色の鉄パイプが唸りをあげる。

彼女はとても暴力的だ。
だが、彼女にも絶対に攻撃できない人間が唯ひとりいる。
――飯田いくみ。彼女自身だ。

はたして、飯田いくみは野蛮な己にどう抗うのか?
そして、同学年の男子、入山優太との恋の行方は?

物語が終わるころ、少女は一歩、大人に近づく。
この物語は「自分と向き合うラブストーリー」なのだ。

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

ブレイク君コア

ちぐはぐ系ラブストーリー

レビュアー:zonby AdeptAdept

この物語では、好きになった女の子がいきなりトラックにはねられちゃったりする。そのうえ人格が別人と変わっちゃったりする。そんでもって殺人事件なんかに巻き込まれちゃったりもする。
しかし断言しよう。
これは紛うことなき「ラブストーリー」なのである。
ただし普通のラブストーリーと違うのは、魂と身体がちぐはぐだということだ。
容姿や身体が綺麗だから好きなのか?性格が今と違っている女の子を、同じ気持ちで好きでいられるだろうか?
そんな甘酸っぱい問題を、殺人事件という血腥さで絶妙にくるみ込んだ、これが青春の最前線!

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2011.08.04

「ブレイク君コア」のレビュー

銅

小泉陽一朗『ブレイク君コア』

Heartbreaker

レビュアー:yagi_pon NoviceNovice

期待を胸に、『ブレイク君コア』を読んでみました。
第一回を読み終わり、思ったこと。
「おっおもしろい、なにこれ!」
そして次に思ったこと。
「うわっレビュー書きづらそう」
この作品はなんというか、感覚的におもしろい。
この感覚を言葉にするのがむずかしいわけで。
のでまぁ、少し逃げ腰でレビュー書きます。

なにがおもしろいって魅力を語るとすれば
この作品のひた走る感じがすごく好き。
そんな感じかな。
スピーディーな展開で物語が突き抜けていく。
ミステリアスなポニーテール美少女との恋、
それだけでも正直すごく惹かれるのだけれど、
そんな青春の恋から一転、
目の前でポニーテール美少女が車にひかれたり、
気づけば彼女は誰かと体が入れ替わっていたり。
物語が、よくまわる。

第二回なんかは急にあんなことやこんなこと、
言葉で言うのは憚られることをやったりね、
毎回主人公とヒロインの視点が代わる代わるだったり、
物語が、本当によくまわる。

まるで、下り坂を二人乗りの自転車で駆け抜けるように、
物語は、青春の香りを漂わせながらひた走る。

それにしても、青春に自転車はよく似合う!
これからも、自転車でひた走るような物語、
体に感じる心地よいスピーディーさを期待してます。

さーてそんな、『ブレイク君コア』という物語。
私のコア(心)は順調にブレイクされつつある。
君のコア(心)もブレイクするよきっと。

今は期待して、第三回を待とう。

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2011.07.14


本文はここまでです。