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読者レビュー

銅

きぬてんさんの絵

躍動する異空間の魅力

レビュアー:zonby Adept

「ブレイク君コア」続く「夜跳ぶジャンクガール」を彩るきぬてんさんの絵が好きだ。
さらに正確に言うと、人物を中心として背景に広がる、空間の描き方が異様に好きだ。
人物、に関して私はさほど魅力を感じていない。
人物から沸き上がるように描かれる絵ー否、異空間とでも呼ぶべき背景の方が、よほどその描かれたキャラクターを表しているように感じられる。

縦横無尽に引かれた線が形作る画面。
何かの建築物や物をモチーフにしているが、それらを描き出す線は途中でそれらを形作ることに飽きてしまった、とでも言うかのように、ひょい、と違うところに走り出す。
重力さえも、その世界では法則を失う。
天が地に。地が天に。
浮かばないはずの物が中空に浮かび、おかしな浮遊感と躍動感を生み出す。
線に限らず、色も自由奔放だ。
彩度の高いポップな色調。
様々な色が使われるが、それらは不思議と統一感を持って画面を構成している。
下地の白でさえも画面の中では意味を持ち、一つの「色」として機能しているのが分かる。
普通に考えて色のあるべき場所、という概念は意味をなさない。

緻密、という意味では美しくないだろう。
無秩序、というほど滅茶苦茶でもない。
落書きみたいな、と言うと軽くとらえているように聞こえるが、落書きで絵を描いていないことは絵を見れば分かる。
絵を見ながらこれを書いているが、正確にとらえようとすればするほど、何故だかするすると逃げられてしまうような感覚に陥ってしまう。

何故、こんなに惹かれるのだろう?
それはひとえに、自分では描くことのできない世界をきぬてんさんが描いているからだと思う。
きぬてんさんの絵は、線も色も本人にしかコントロールできない絶妙なバランス感覚のうえで成り立っている、と私は思うのだ。
白紙に色鉛筆。
さあ、自由にやっていいよ。
というのは、自由にやれるように思えて中々自由にはできないものだ。
人を描けばちゃんとデッサンをとってしまうし、紙の中に重力はないと知りつつも、雲は空に木は地面に描いてしまう。
無理にそれを覆すことはできるが、常識や知識が邪魔をする。
結果、どことなくぎこちない。悪く言えばあざとい感じになってしまうのは私も経験があるところだ。
意識的に、でも無意識に、というのは何度やったって難しい。
おそらく、であるが。
きぬてんさんは、それができる人なのだろう。
意識的に、無意識に。
卓越したバランス感覚でもって、白紙の中のルールを決め、世界を描き出す。
軽々と飛び越えているように。
魅せる。

「ブレイク君コア」「夜跳ぶジャンクガール」ときて、その世界のルールにより磨きがかかったようだ。
次にどんな異空間を魅せてくれるのか、どれだけ軽々と常識を飛び越え、白紙の中で遊んでくれるのか。
私は今からどきどきしている。

最前線で『ブレイク君コア』を読む

2012.06.08

のぞみ
ずっと見ていても、飽きないものってありますわよね~。不思議な魅力!!
さやわか
たしかに、きぬてんさんの絵は不思議な奥行きがあるというか、じっと見ていると引き込まれるものがありますな~。
のぞみ
そんな気持ちを細かく書いていて、愛の形がうかがえましたわ~。
さやわか
ですな! 絵のレビューを書くというのは実はけっこう難しいのですが、zonbyさんはなかなか書ける力を持っているように思います。きぬてんさんの絵の何に魅力を感じたのか伝わりますな。ただ、ちょっと惜しい点もあって、これが特に『ブレイク君コア』『夜跳ぶジャンクガール』という作品に付けられた絵についての話にはなっていない、ということがあるかなと思います。作品の内容に関係があるともちろんベストですが、そうでなくても、たとえばあの絵のどこを見てこう語っているかがわかる、というような記述はあまりないですよね。つまりこれはきぬてんさんというイラストレーターの総合的な魅力を伝える文章にはなっていますが、具体的に「この絵がこうなっていて、それがいい」という話になると、よりレビューとしては読み応えのあるものになったのではないかなと思います。どうでしょうか? 今回は「銅」ということにさせていただきました!

本文はここまでです。