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「人生勝たなきゃ意味が無い」のレビュー

銅

人生勝たなきゃ意味が無い

負ける努力をしない

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン WarriorWarrior

 中学生のときも高校のときも、麻雀にハマっている知り合いはたくさんいた。彼らは暗号のような牌の名前や、役の名前を楽しそうに語っていた。
 麻雀の漫画は読んだことがあって、ルールは分からないのに面白かったことは覚えているが、同時に物凄く大変そうだとわかり、やろうとは思わなかった。自分がやって勝てるゲームではないことだけは分かった。
 いやもう、ほんとこういうの弱い(笑)。
 麻雀のプロがいるということすら知らなかったが、どんな世界なのかは興味があった。
 この本はプロ雀士・佐々木寿人の自伝でもある。
 麻雀を本気でやることになったきっかけが、大学3年のときに親が学費を支払い忘れたためだという。感心したのは、そのことを「親のせい」にしなかったことだ。すべて「親まかせ」だったことを恥じて、大学を中退、もともと熱中していた麻雀の世界に足を踏み入れることになる。
 彼の麻雀は攻撃型だ。攻めて攻めて勝つスタイル。文章にもその攻めの姿勢が貫かれている。
「圧力(プレッシャー)を利用して飛躍せよ」「ブレない、オリない、ひよらない」「1日8局、月240局、年2800局をすべて勝ちたいと真剣に取り組み目標としている」
 マイナス思考の自分とは正反対なプラス思考の持ち主なのだが、背中をぐいぐい押してくる言葉にかなりの力を貰えた。
 勝ち負けのはっきりした世界にさらされ続けるプロの人たちは、強固なブレない芯のようなものがないと立ち行かないのだ。
 負ける要素を私生活に至るまで、バッサリと切り捨てていく姿は問答無用にカッコいい。見習いたい所はたくさんあった。「負けない努力」には届かないかもしれないが取りあえず「負ける努力をしない」ことから始めようと思う。
 負けたことを誰かのせいにしないで、きちんと受け止め次を勝つための糧にして切り替える「早さ」が大切なのだと分かった。
 麻雀が全く分からなくても読めるか? となると少しハードルが高いかもしれないが、麻雀をやったことがある人ならスラスラ読めるに違いない。
 麻雀が好きで、マイナス思考に陥りやすい人に読んで欲しい一冊。

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2013.07.08

「人生勝たなきゃ意味が無い」のレビュー

銅

佐々木寿人『人生勝たなきゃ意味が無い』

麻雀が強くなった気分(錯覚)

レビュアー:USB農民 AdeptAdept

 麻雀。
 牌を巡って4人が技術と度胸と運を競い合う知的遊戯である。
 しかし、このゲームの勝利において、運の占めるウェイトはそれほど高くない。技術と度胸=精神力こそが勝敗の明暗を分けることは、麻雀を長く続ければ続ける程、はっきりと実感できる。

 ーーこんな文体のまま続けていくと、まるで私が麻雀に詳しいと誤解されそうなので、この辺でくだけた調子に切り替えておこう。麻雀は好きだが、あくまで下手の横好きの領域をでていないのが実状だ。
『アカギ』を読んだ後は、自分も麻雀が強くなったような気分になり、『オバカミーコ』を読んだ後も、自分が強くなったように錯覚した。『ムダヅモ無き改革』は、これはさすがにそんな錯覚をする余地はなかった。(注:どれも麻雀漫画)

 星海社ラジオ騎士団で、高井舞香さんとさやわかさんと緑萌さんの三人のトークでこの本が紹介されていて、興味をもった私は早速その本を読んでみた。結果、私は自分が麻雀が強くなったような気分になった。(注:錯覚です)

 麻雀が強くなった気分になる作品には、2つの共通点がある。一つは、作中で勝つための麻雀理論が語られていること。もう一つは、その麻雀理論を実践し、勝利する人物が描かれていることだ。
『アカギ』に登場するアカギは、常人とは別次元の人生哲学を持ち、ギャンブルにもその哲学=理論を用いて勝ちを積み上げる。『オバカミーコ』は、麻雀理論の解説と、勝負の場での実践が毎回の定型となっている。『ムダヅモ無き改革』は麻雀理論が出てこない(だから麻雀が強くなる錯覚は起こらない)

『人生勝たなきゃ意味がない』にも、麻雀理論が登場し、その実践者として著者である佐々木寿人がいる。ここで面白いのは、『オバカミーコ』は客観的な戦法を解説することが多いのに対して、『アカギ』や『人生勝たなきゃ意味がない』は、主観的な人生哲学が麻雀理論の大きなウェイトを占めていることだ。
 普通、理論とは客観的な方が人を説得しやすい。にも関わらず、アカギや佐々木さんの理論は、驚くほど説得力がある。なぜか。それは、彼らが実際に勝っているからだ。主観的な人生哲学でも、実際に勝利に貢献しているなら、それは紛れもなく、勝つための理論だ。
 自分の人生哲学の有用性を他人に認めさせる方法は、その実践でしかあり得ない。
 タイトルには、そんな意味も含まれているのだと思う。

 ……ところで、「麻雀が強くなった気分」になった後は、誰かと麻雀が打ちたくなる。強くなった気分が錯覚だとしても、そうやって気分を高めて打つ麻雀が楽しいのは純然たる事実で、だから私はこの手の本が好きだ。
「麻雀が強くなった気分」にさせる本は、麻雀で勝ちたい気持ちと、麻雀を楽しみたい気持ちの両方を刺激してくれる。

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2013.07.08


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