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「フェノメノ」のレビュー

銀

「フェノメノ 美鶴木夜石は怖がらない」

【閲覧注意】怪談の手触り

レビュアー:zonby AdeptAdept

怖いものが好きである。
特に心霊の類には目がない。実話怪談を読み漁り、都市伝説や心霊体験がまとめられたサイトを深夜にふらふら徘徊し、夏には時期とばかりに怖い話をせがみ倒す。心霊スポット潜入や廃墟探索などは嗜まないが、体験談は美味しく頂く。心霊動画た心霊写真などは、真偽に関係なくまじまじと見入ってしまう。
惹かれてしまうのだ。
どうしようもなく引かれてしまうのだ。
壁に黒い穴が開いていたら、覗いてみたくなる。覗くのは怖くても、人差し指の一本くらい、突っ込んでみたくもなる。
何を見てしまうのか分からなくても、何に触れてしまうのか分からなくても、全部見なければ大丈夫だ。すぐに指を引っ込めればきっと大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせながら。
私は、穴を覗き―――指先を伸ばす。

「フェノメノ」に感じたのは、独特の手触りだった。
(手触り。そう、怖い本を読んでいる時に感じる気配や感覚は、触覚。皮膚感覚で表現するのが一番ふさわしいように思う)
それは例えるならこんな感じだ。
猫の背中を撫でている。ふわふわとした毛並みは気持ちよく、暖かい。しかし、ふと指先に猫の毛とは違った感触が触れた。おかしい。ふわふわとした毛の中に、ほんの一瞬だけつるりとした感触があった。おそるおそるその付近の毛を掻き分ける。頭では見ない方が良いことは分かっている。しかし手を止めることはできない。
指先が再び違和感を告げる。
血を吸って丸々と膨らんだマダニが。
……それに気づいた時の心境と、感触を想像していただけるだろうか?

この物語は普通の大学生が、異様な美少女と出逢い、怪異に巻き込まれてゆく王道の怪異譚だ。
小説として全体に一つの流れはあるが、一話ずつ完結しておりテンポよく読み進めてゆくことができるだろう。怖くなったら、そこで読むのをやめることもできる。夜に読むのが怖かったら、昼に読むこともできる。それが小説の良いところだ。
しかし残念なお知らせがある。
物語の中に丁寧に織り込まれたエピソードの数々は、残念ながら創作ではない。
インターネットで検索をかければ分かる。
遭遇する度に近づいてくる怪現象。想像の中で家中すべての窓を開け、閉めるテスト。繰り返し見る明晰夢。これらはすべて、今この瞬間にも現実の世界でまことしやかに囁かれているれっきとした怪談なのだ。
本当か嘘なのかを突き詰めることに、意味はない。
重要なのは、人から人へ伝わっているいうことそれ自体が、これら怪談の生きている証拠なのだから。
そんな生きた怪談達が一肇の手によって、文章の隙間という隙間に詰め込まれて、いる。
物語を読み進める中で、掻き分けてゆく中で、もし何かおかしな違和感を感じる箇所があれば、きっとそこに、いる。
見てしまったら
気付いてしまったら、もう遅い。
恐怖には創作と現実の境界など存在しないのだから。

さてあなたは
怖いものは、好きですか?

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2014.01.29

「フェノメノ」のレビュー

銅

オカルト「超」入門、フェノメノ

フェノメノ「超」入門

レビュアー:ticheese WarriorWarrior

 人は武器を手に入れると使ってみたくなるもの。「武器としての教養」を謡う星海社新書の一冊『オカルト「超」入門』は、星海社新書の他の書籍に比べて役に立つかというと、日常レベルではそうでもない。少なくともオカルトの知識を得ることが、仕事上で必要な人は少ないだろうし、幽霊に憑かれていたり、宇宙人に拉致されそうなんて人はほぼ皆無だと思う。

 それでも『オカルト「超」入門』で得た教養を使ってみたい。武器として奮ってみたい。特に都市伝説に詳しいわけでもなく、心霊スポットに足を運ぶほどアグレッシブでもない私は、武器を活かす先にフィクションを選んでみた。

 星海社FICTIONSの一冊『フェノメノ』だ。

 なぜ『フェノメノ』を選んだのかというと、理由は二つある。まず第一に『フェノメノ』というのタイトルが、「(不思議な)現象」を意味する「phenomenon」から来ており、タイトルからまんまオカルトの作品だと明示しているのが分かりやすい。第二の理由はこの二冊のオカルトに対してとっているスタンスが、非常に似通っている点にある。
 『オカルト「超」入門』はオカルトの知識を学ぶことで、都市伝説や怪談話に怯えたり、怪しい宗教にハマってしまわないよう、オカルトを見極める目を読者に与えようとしている。対して『フェノメノ』ではオカルトサイト「異界ヶ淵」の管理人クリシュナさんが、サイトの常連であり物語の主人公ナギに散々オカルトとの付き合い方を説く。興味本位で首を突っ込むな。霊には霊の世界があり、迂闊に立ち入ると大変な目に遭う。オカルトは趣味として楽しみなさい。……だがナギはクリシュナさんの教えを守らず、不思議な現象に巻き込まれてしまうわけだ。

 それでは本題。実際に武器を使ってみよう。『オカルト「超」入門』によると、オカルトは発生した時代背景の影響を強く受けており、オカルトからその時代の文化を読み解くことができるとある。さっそく『フェノメノ』で考えてみた。
 『フェノメノ』の恐怖を醸成する一要素として、ナギの人間関係の希薄さが挙げられる。大学進学を機に上京したばかりの彼は、特段仲のいい友人も持たず、趣味であるオカルト仲間もオカルトサイト「異界ヶ淵」の常連ばかり。せっかくオフ会を開いて相談しようにも、話題を別の人間にとられて口火を切れない有様だった。だから実際に不思議な現象に悩まされても、頼れる人間が身近おらず、無闇にネットに書き込み顰蹙を買いまくる事態にまで落ち入る。
 また語られる都市伝説の多くはネットを介してもたらされ、信憑性のないにも関わらず、拡散性の高さから事態をより深刻なものに仕立て上げていく。ナギを助ける希望となった二人の女性、「異界ヶ淵」の管理人クリシュナさんと“みえる”少女夜石もネットを通じて知り合うのだが、夜石の方はネット上で気味の悪い都市伝説として語られる存在であり、ナギの先行きは中々明るくならない。

 1998年のホラー映画『リング』ではダビングされたビデオに貞子が憑き、2001年の『回路』ではまだ素人には接続も覚束なかったインターネットが死霊の跋扈する原因となり、2004年の『着信アリ』では普及率が8割を超えた携帯電話から死の予告がもたらされた。そして2012年『フェノメノ』ではネットが情報を交換し、人と出会い、都市伝説とそれに伴う現象が生み出される媒体となっている。確かな時代の変化がオカルトの世界にも存在しているようだ。
 ナギの人間関係が希薄だと先に述べたが、身近な友人よりもネット上の他人の方が頼りになる状況は、昨今あまり珍しくないようにも思われる。私自身もオフ会に出た経験があるし、普段はできない話をできるので非常に楽しくあった。
 オカルトで時代を解く。ただ粛々と物語を追うより、こうして改めて作品の時代を客観的に観察できるのは面白くあるし、普段の生活の中にオカルトを生み出すきっかけがあるのだと思うと怖さも増すというものだ。
 そして『オカルト「超」入門』と『フェノメノ』、どちらも2012年の本であるわけだが、オカルトに対するスタンスが似通っているのも頷ける。現代はとにかく情報の拡散が早く広い。触れようと思えばいくらでも事実でも虚偽でもオカルトな話に触れられる。それにともない危険な目に遭うこともあるかもしれない。趣味として楽しむのはいいが、決してハマりすぎるな。これも2012年の時代性なのだろう。

 『オカルト「超」入門』を武器として使ってみる。確かな手応えがあり収穫だった。しかし『フェノメノ』が時代性を追ってばかりの作品であっては面白みも減じよう。物語の第三話は東京に疲れたナギが実家の藤枝に帰省する話だ。暖かい家族や頼りになる親友たちがいて、見渡せばどこも見知った光景で縁故のある人ばかり。ぬるま湯に浸かるように安心しきったナギであるのだが、安全な場所に着いたと思ったタイミングが一番危ないのはホラー作品の伝統である。読者が期待している怖さは過不足なく充実している。
 そして何より人間関係の希薄さなど知らんとばかりに、オカルトに憑かれたナギを叱責し、助けしてくれるクリシュナさんは、まぎれもなく女神であるとしみじみと思った。ナギよ、悪いことは言わないから夜石よりクリシュナさんにしておきなさい。な?

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2013.07.08

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノcase:01 「願いの叶う家」

幽霊の正体見たり枯れ尾花

レビュアー:Panzerkeil AdeptAdept

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉がある。幽霊を怖がっていると、何でもないものが怪異なものに見えてしまうという事だが、もし、幽霊が実在していたらどうだろう?精神的に弱い人間は、幽霊の正体を枯れ尾花に無理矢理してしまう必要が生じるかもしれない。
大学に入学し、下宿として安い一軒家を見つけた主人公。高名な建築家が仕事場として建てたという、まるで綾辻行人の館シリーズを思わせる変わった山荘風の建物はミステリーホラーの舞台としてぴったりだ。
そこで生じた主人公を追いつめる怪奇現象、彼はしばしば出入りしているインターネットのオカルト板の住人に助けを求めるが、彼の前に現れた二人の少女によって、幽霊か、それとも枯れ尾花かという岐路に立たされる。
ただ、枯れ尾花説にはかなり無理があるように思われる、果たして家の作りが人の精神をあれだけ追い込む事が可能だろうか?このまま枯れ尾花で終わるのかと危惧したが、そうはならなかったものの、枯れ尾花説にもう少し説得力があれば、最期のどんでん返しがもっと生きたのにと思う。この点は少々残念である。
ただし、二人の少女ともうひとり(彼女は少女とは言えないか)の個性というか奇矯な様は結構ですね。これから先が実に楽しみです。
リアルでは心霊現象なんて、私は信じていませんが、幽霊かそれとも枯れ尾花かという選択に近い事はあります。自分は職業柄、山の中を一人で歩く事が結構あるのですが、結構出くわすのです、色々な死体や骨に。
もっとも、大半は野生動物のものですが、首都圏からさほど離れていない天狗伝説のある、観光地としても有名な某山は自殺の名所でもあり、数年歩いていると一度は生の遺体を拝めると言います。幸いにして、自分はまだ経験はありませんが、暗い沢で花や線香が置かれているのを観るのは気持ちの良いものではありません。
私は生物学もかじったので、時々、ちょっと考え込んだりする事もあるのですが、これは人の骨じゃ無い!鹿だ!と自分に言い聞かせます。枯れ尾花であると自分に言い聞かせるのです。まあ、真実は意識の下です。
 枯れ尾花で満足ぜずに一歩踏み出してしまった主人公は果たして、どうなるのでしょうか?まあ、これは先を読むしか無いですね。

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2013.06.11

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノ

その先にあるのは、【見るなの禁止】が微笑む世界。

レビュアー:飛龍とまと AdeptAdept

 見てはいけない、振り向いてはいけない、開けてはいけない。
 そう禁じられると逆に、見たい、振り向きたい、開けたいと強く望む心理が働いてしまう。
 このような心理的欲求のことを、【カリギュラ効果】と呼ぶ。
 パンドラの箱、オルフェウスとエウリュディケーの物語、黄泉の国のイザナミとイザナギ、鶴の恩返し、浦島太郎……禁止事項をあえて破り、自らを悲劇に陥れた例は計り知れない。それが人間に収まらず神話上の神々でさえ例に挙がるのだから恐ろしいことこの上ない。
 禁止事項を破ることにより起きた悲劇、恐怖の出来事。
 それらは【見るなのタブー】、または【見るなの禁止】と呼ばれている。

 田舎から上京してきた、オカルトに強い興味を持つ大学生・山田凪人。
 この物語で彼は【カリギュラ効果】を呼び起こす欠片が散りばめられた漆黒の世界に深々と足を踏み入れることとなってしまう。
 奇妙な雰囲気と人間離れした美しさを持った少女・美鶴木夜石との邂逅を果たした、その日から。

 生き物はそれぞれ進化を遂げた。
 数を増やすことに重点を置いた生物、耐久力を求めた生物、ひたすら長く生きることを望んだ生物――
 そして我々人間は、おそらく知ることを望んだ。今までは見ることの出来なかった世界を見たい、そんな強い願望があったのかもしれない。そうしていつの間にか我々は、自らの知的欲求を満たさなければ気が済まない生き物へと進化を遂げていた。
 果たして、それは正しかったのだろうか。見えなかった世界を見ることが、そんなに素敵なことだったのだろうか。知らぬままにへらへらと笑っていた方が幸せだったのではないか。
 そんなことを今更言及したところで、後悔しか残らない。何故知ってしまったのだろうと頭を抱えて泣き叫んでも、手遅れだ。知ってしまった世界を心の奥底に抱え込んで嘆き続けるしかない。
 彼のように。

「本当に聞きたいの?」

 美鶴木夜石の言葉一つ一つには、奇妙で恐ろしくも甘美な、一度手に取ったら中々手放せない中毒性を携えた魅力がある。だが、その聞く者を強く惹き付ける「何か」の正体は、紛れもなく【カリギュラ効果】の起因となる恐るべき鍵に違いないのだ。
 警告に見せかけて、彼女は我々を誘い込もうとしている。彼女にしか見ることの出来ない、暗く歪み、腐って赤黒く染まった、この世でない者が織りなす風景を。

「ようこそ、こちら側の世界へ」

 見てはいけない世界を、その黒い瞳に焼き付けて。
 彼女は静かに嗤うのだ。
 愚かにも、彼岸と此世の境界線へ足を踏み出した彼と、我々を。

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2013.05.29

「フェノメノ」のレビュー

銀

『フェノメノ』ビジュアルノベル配布イベント

配布イベント体験記

レビュアー:Gaim

安倍吉俊さんの美少女イラストに惹かれ辿り着いた先はゆるい雰囲気のホラーだった。
主人公の考えの無さ加減に少々イラつきながらも、キャラの魅力と身の回りで起こる超常現象の原因を追究する一種のミステリーのような内容に虜になって読み薦めたのが『フェノメノ』である。
そのビジュアルノベルがNitro+さんから秋葉原で配布されるというので詳細が決まる前から楽しみにしていた。
以降、配布イベントに参加した個人の体験記であり、イベントレビューである。
決して『フェノメノ』本体のレビューではない。

9:38 秋葉原駅到着
20分前なら間に合うだろうという目論見の元、COMIC ZINさんに向かうべく秋葉原の地に降り立った。
電気街口を出ると雨は小降りだった。家を出た時には玄関出た瞬間に回れ右をしてしまいそうになるくらいに土砂降っていた。
少し安心して傘をさす必要もなく、都市開発Xという謎の名前が付く建物側からOMIC ZINさんへ向かった。
まだそんなに列は長くないだろうから店の目の前にたどりつく道がよいというベリースイーツな考えだった。しかし、お店の前の横断歩道までたどり着くと道の反対側にはすでに列が形成されていた。
終わりの見えない列に焦りが生じる。信号が変わるまでの時間も惜しかった。
周りを見ると信号待ちの全員が敵のように見える。負けるものか、と信号が青に変わると同時に競歩のスピードで飛び出した…
などということはなく、焦りはあったものの列に並ぶ勇者達を観察しながら最後尾へとゆっくり歩いた。

9:45頃 列最後尾到着
最後尾にはスタッフの方が配布予定のビジュアルノベル版を持って立っていた。
最後尾かどうかを口頭で確認して、並ばせて頂いた。
どうでもいいのだが、スタッフ目立たなさ過ぎ(笑)
普通に濃い目のジャンパー来て立っていて、一瞬列の人と見分けがつかなかったでござる。多分あの人は回りに溶け込むのがうまい、忍者でござるな。
列は二列で形成されていた。並んでいる勇者達の年齢層は幅広いに感じた。まぁさすがに杖ついたおじい様はいなかったが。
話し声も聞こえてきたりして、友達で誘い合わせて来ている人も少なくないようだった。ちなみに自分の待ち位置は某ゲームセンターの前辺り。大通りに面して並ぶ列のちょうどラストだった。
後から来た人はゲームセンターを折れて路地の方に並んでいた。

10:00頃 列移動直前
列が動き出すより前に列脇のお店が開店していく。
シャッターが開いて、ゲームセンターの呼び込みが始まる。
若干うるさいが、テンションはあがっていく。
この列が動き出す前の高揚感は結構好きだ。どっかのイベントでは列が動き出すというアナウンスに歓声とかあがってた気がする。
気持ちは十二分に分かって頂けると思う。

10:00過ぎ 列移動開始
何の前触れもなく列が動き始めた。
しかもちょっと慌ててしまうくらいの早さで消化されていく。
スタッフ手馴れすぎで、列が減って自分の番が来るわくわく感はあまりなかった。整理券配布に期待をしても仕方ないかと思いながら受け取って列を離れた。
整理券を確認する。No.40。悪くない数字だ。一応、キリ番風だし。
"12時から2時"の間に配布とか書いてあった。
ふむ。12時にちょうどに戻る必要はないという事だろうか。
そんな事を考えながらまだ人もまばらな秋葉原の町に繰り出した。

11:55頃 配布列到着
持ち歩くには重いな、と若干文句を垂れつつフェノメノの本版も購入して、フィギュア見たり、お昼を食べたり、ゲーセンで遊んだりしていたら時間になっていた。
某ゲームセンターから出るとすでに列が形成されていたので、焦って並ぶ。よく考えたら整理券持ってるし、焦る必要はゼロだった。
あいにく小降りながらも雨がまた降り出していた。
某ゲームセンターでは緑の人とか黄の人とかが踊るゲームのPVが流れていた。誰もその状況を狙ったわけではないが、待ち時間には嬉しい。

12:00過ぎ 配布列
時間を過ぎても列は動かなかった。どうしたんだろうと思っているとスタッフが配布の遅れをアナウンスして回ってきた。到着が遅れているのだとか。
よく見ると朝とは違い列を見て話している人たちがいる。
たかがフリーゲームの配布とは思っていなかっただろうな。
携帯ショップの店員さんがメガホンで宣伝しながら「うるさくて申し訳ないけど」的なことを言っていた。誰か迷惑そうにしていたのだろうか。列の方が特殊状況なんだからお店に迷惑かけたらアカンでしょうが…。
そんなこんなを考えていると列が動き出した。
相変わらず驚くほど早い…。配布、事務的過ぎないか?
配布は二列で、担当は夜石コスの女性とジョイまっくすさんだった。
どうでもいいのだが、ジョイまっくすさん夜石より目立ち過ぎ(笑)
夜石さんは美人さんでしたね。
全員が抱いたであろう最大の不安の"完コス"は残念ながら(?)達成されなかった。
匂いを確認できるほど近くへは顔寄せてないので確定ではないですけどね!
それにしても最後の最後で引きが悪い…。
二列配布の二択で並んだのはジョイまっくすさんの配布列だった…。
あまりにも配布があっさりだったせいかCOMIC ZINさんの軒先には夜石さんを(もしくはジョイまっくすさんを?)見ている人が溜まっていた。
配布位置のせいで夜石さんの写真はうまく撮れなさそうだったので、写真がどこかにアップされる期待と共に撮影は断念して戦場を後にしたのだった。

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2013.04.16

「フェノメノ」のレビュー

銅

一肇『フェノメノ』

猫を殺すもの

レビュアー:キョウ

『(中略)深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ』
とはフリードリヒ・ニーチェの言葉だ。見ることは見られることでもある、というのは、何気ない動作である見ることに伴う覚悟の程と普段目にしない世界が在るのだということを私たちに気付かせてくれる。

本書は、有り体に言えばオカルトホラーだ。主人公は怖いもの見たさで動くその実臆病な大学生、ヒロインは怖いもの見たさで動く電波系高校生美少女。

人は、知らないことに恐怖を覚える。しかし、人はまた知らないことにこそ興味を覚える。そう。その身を走る震えが、まだ見ぬ知に触れた喜びなのか、本能が告げる警告なのかの判断も付かぬほどに。

舞台は現代日本。オカルト掲示板『異界ヶ淵』の噂に惹きつけられたニンゲンは、誘蛾灯に引き寄せられるように軽々と此岸と彼岸の境界線を越える。

"願いの叶う家"、"願いの叶う病院"、"襖の向こう"

欲した願いは滞留し、濁り、いつしか悪臭を放つ。三章から成る物語はその醸造過程において魅力的なほどの香りを放つ。吐き気を催すほどに。

最初は切なる想いの結果。
最初は良かれと思っての配慮。
救いは、あったのかも、しれない。

一肇『フェノメノ』星海社、2012年初版刊行。
本書を読んでどうなろうとも、どうぞ自己責任でお願い致します。

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2013.04.16

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノ

論理の彼岸で

レビュアー:6rin NoviceNovice

この物語は心霊現象に興味がある大学生・山田凪人が怪異に遭遇するホラーである。
理解を超えた現象に人は恐怖を感じる。凪人が出会う怪異もまた常人の理解を超えている。そこには恐ろしい幽霊や亡霊の類が潜んでいる。だが、凪人には怪異の脅威から救ってくれる人たちがいる。凪人がオフ会に度々参加しているオカルトサイト「異界ヶ淵」の管理人・クリシュナや、「異界ヶ淵」に出入りする夜石といった面々である。
彼女たちが怪異を調査、分析し、怪異の原因や対処法を解き明かす。ロジックに回収された怪異には依然として恐怖は残るが、その神秘性は薄まる。そう、この物語において神秘性が強調されるのは怪異ではなく、別にあるのだ。

凪人は怖いものを見たい、知りたい、という感情に身を任せ、危険があるのを知りつつ怪異の領域に踏み込む。怖いもの見たさは理屈を超えて、人を突き動かすのだ。しかし、理屈を超えるのは、怖いもの見たさだけではない。可哀そうな少年の思いが綴られた、呪われたノートを処分しなくてはならない場面で、少年の思いを見捨てられない凪人は処分を拒む。夜石は、対処する方法を持たずに呪われたノートを所持する凪人の、論理性を欠いた判断に惹かれる。人の心には、ロジックを超えた底知れなさ、神秘性があり、それが魅力的なのだ。

人間の心こそ怪異より神秘的である。この視座に立って、物語が書かれている。では、この物語が怖くないのか、神秘性の薄まった怪異が怖くないのかと言えば、そんなことはない。圧倒的に怖い。先を読むのが憚れるくらいに怖い。物語と同じことがこの身に降りかかったら、僕はショック死すると思う。
それでも怖いもの見たさから、僕はネットに公開されている分を全部、読み切ってしまった。
だが、後悔はしていない。怖いもの見たさが満たされたから。怖い、以上に面白かったから!

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2012.05.18

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノ

全ては「解釈次第」

レビュアー:独眼龍弐世 NoviceNovice

このお話はあやふやです。悪い意味としてのあやふやではなく、読者の解釈次第ということです。「いる」かもしれないし、「いない」かもしれない。本当に読者の解釈次第なのです。こういった解釈次第というのは色々とあって例えば都市伝説なんかもそうですが、他にもかごめかごめや童歌なんかも解釈次第ではゾッとする内容になります。ハッキリとした答えがないので非常にあやふやで余計によく分らない恐怖心がかき立てられます。これでどちらかハッキリした答えがあるとその型に嵌ってしまい面白さが半減してしまう可能性が有るのではないかと思います。ですが、フェノメノは読者次第なので読者同士で「いる」か「いない」かを話すのも楽しみの一つなのでは?

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2012.04.23

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノ case:01

新しいホラー

レビュアー:キノケン NoviceNovice

今まで、数多くのホラーを読んできましたが、これは実に新しいホラーだと思います。
今までのホラーは、最初から怖い雰囲気を出そうと、重々しい文体で一貫して書かれている印象を持つことが多かったのですが、今作品では、怖い部分と、日常的な場面とのメリハリが非常によくとれていて、最後までどういうオチなのかを全く読むことができませんでした。

オチも秀逸だと思います。ネタバレはしたくないので詳細には書きませんが、「なんだよ、これでホラーなのかよ」という流れから夜石の一言でそれが逆転。「全然怖くないじゃんか」と油断していただけあって、読み終えた瞬間には全身が鳥肌立ってしまいました。

今まであまり光の当たることのなかった「ホラー」という領域に、新たな読者たちを引き込むことのできる、力のある小説だと思います。

続編を、大きな期待を胸に待っていたいと思います。

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2012.04.02

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノ

怖くなんかないんだからね

レビュアー:ジョッキ生 KnightKnight

あまり怖くなかったというと作者様に失礼だろうか?でもぶっちゃけた所そうでした、すみません。

ただこれは僕にとってはいいことなんです。何せホラー系が苦手なので・・・。今までホラー系で投げてきたゲームは数知れず(零、サイレンなど)だもんでどうかなーと尻込みしつつ読み進めていった次第です。

でもちゃんと最後まで読めましたよ!ちょっと自分を褒めたい気分です、はっはっは。すみません、調子に乗りました。急に次からハードルを上げてこないでくださいね。全力で逃げますよ、読者が一人。

というわけでこの物語のジャンルはホラーです。オカルトサイト『異界ヶ淵』に集う人々を中心にお話は展開するようで、主人公ナギ、変わり者夜石もここに参加しています。今回はナギ君が巻き込まれた怪奇現象に夜石さんが首を突っ込む形で進んでいきます。

この夜石さんがかなり変な子で黒髪ロングの美人さんなのに風呂に入ってなかったり、平気で人の家でゲロ吐いたり、不法侵入していたりと無茶苦茶。でもおい、とツッコミを入れたくなるその行動の数々に案外恐怖感が薄れたのかも知れないと後々思ったりします。

ビクビクせずに読めた功績として内容が結構頭に入ってきたのもよかったです。特にギミックの部分。建物を人に合わせるんじゃなく人が建物に合わせるように作られたために現象が発生すると説明されるところでは付喪神的なこと(物に魂が宿って災いが発生する?)が起こっているのかなと自分なりのイメージもできてやっぱりこのくらいの怖さが丁度いいなーと感じました。

怖くないホラーも楽しいですね。こんな感じが続くなら次の話も読んでみたいです。

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2012.04.02

「フェノメノ」のレビュー

銅

フェノメノ 著:一肇・安倍吉俊

美少女無双

レビュアー:ジョッキ生 KnightKnight

びっくりしたのはヒロインがいきなりゲロを吐くシーン。
そんなヒロイン見たことないよ…。
でも安倍さんの絵を見ながら想像すると、いやありか?と勘違いする自分が悔しい。美少女は何をしても美少女か?という疑問にぶち当たった。

また、このシーンの意外な効果として主人公の優しさが表れていたのが印象的。はじめは呆気にとられていたがすぐに駆け寄って背中をさすってあげる所とか、いい奴ですね。
自分の家でゲロを吐き、しかも謝りもしないのにあまり怒らない。これも美少女のなせるワザなのか…。恐ろしい。

風呂に入らず、ゲロも吐き、しかもオカルトマニア。
今の所外見以外魅力的じゃない彼女が今後どのような内面的魅力をみせてくれるのか。そんな所にも期待しています。

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2012.02.18


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