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「君の歳にあの偉人は何を語ったか」のレビュー

銀

君の歳にあの偉人は何を語ったか

私の歳が偉人の歳と重なるとき

レビュアー:ラム AdeptAdept

この本の目次には、何歳でそう言ったのは誰か書いてある。
17歳のチャップリンから始まり、95歳の安藤百福。
27歳だけが3つあった。
君の年にこう言った、というだけに、27歳にもなるとそれぞれの道に進んでいてエピソードに事足りるというか、いわゆるアラサーは「人生の転機」なのだと思う。
著者も伝えたいことがたくさんあるのだろうなとも思った。

この本を手に取ったとき、私はまさに27歳で、人生に行き詰っていた。
仕事は楽しいけど職場の人間関係が、給料が、なんてよくある話なんだとは思う。
上司とソリが合わなくて毎日辞めたいと思っていたけど、実際人数が足りてなかったことと仲の良い同僚も多く行動できずにいた。
だから「それでは会社を辞めます。今日限り辞めます」と言った27歳の稲盛和夫に興味を惹かれた。
のちの京セラ創始者は、どんなにつらい環境でも負けずに頑張って仕事に打ち込み、仲間もできて充実していた。そして、新しい上司が嫌な奴というだけで、周りがどれだけ引き留めても辞めたというエピソードに、私はとても救われた。
そんな理由で辞めてもいいんだ!
でも私まだここまで頑張ってないなって思ってもうちょっとだけ頑張れた。
いつでも辞めれると思うと心は晴れた。
そして、前向きに辞職できた。

私は、私が27歳で27歳の稲盛和夫の言葉に出会えたことを幸運に思う。
このときじゃなかったら、絶対この言葉に感銘を受けたりしなかった。
人によって、年齢によって、胸に刺さる言葉は本当に違うものだろう。

私は31歳のナイチンゲールの言葉を、34歳の正岡子規の言葉をその年齢でまた読み直したいと願っている。

その先も、覚えておきたい言葉は、どこにあるかわからないから。

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2014.05.20

「君の歳にあの偉人は何を語ったか」のレビュー

銅

真山知幸『君の歳にあの偉人は何を語ったか』

今を生きる我々へのメッセージ

レビュアー:USB農民 AdeptAdept

 この本は名言集の部類に入る書籍だが、世に大量にある名言集とは差別化が図られている。
 それは編集の視点だ。

 ただ偉人の名言を並べるのではなく、著者なりの視点を経由して、この本は編集されている。その言葉を語った偉人の年齢を切り口にして、名言を解釈し、現代に生活する我々に届くような言葉に言い換えている。偉人の名言と、著者が書き足した言葉とを並べて読むことで、名言にこめられたメッセージはより豊かになっている。

 ただ、偉人の言葉にあえてメッセージを付加する行為に、当惑する読者もいると思う。しかしそもそも、この本は偉人の言葉を覚えたり、偉人が何を考えていたかを研究するための本ではない。
 この本の主題は、「偉人の言葉から、現代の我々は何を学びとることができるか?」という問題提起にある。
 アインシュタインや、チャップリンや、太宰治の残した言葉は、自分の人生にとってどういう意味を持つのか?
 それを考えながら、この本を読んでみてほしい。

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2012.05.18

「君の歳にあの偉人は何を語ったか」のレビュー

銅

君の歳にあの偉人は何を語ったか

たった一言。

レビュアー:キノケン NoviceNovice

今まで多くの偉人の伝記や語録・自伝などを読む機会がありましたが、偉人の名言が「どういう場面で」「何歳のときに」言ったのかという新しいまとめ方が、自分の人生や経験、目標に照らし合わせて読むために非常に役立ちました。
偉人の輝かしい瞬間だけではなく、そこに至るまでの苦しい道程の中で言った一言にもスポットが当たっていることも、非常に面白く感じました。どんなに大きな名声を得た人でも、それに至るまでに結果以上の努力をしている。そんな当たり前かもしれないけれど、多くの人が忘れてしまっていることに気づかされました。
僕の一番のお気に入りは、20歳の野口英世の一言。のちにお札の絵にまでなった人が自分と同い年の時にはプライドを捨ててまでも行動を起こしている。この人に比べると、今の自分はどうなのか。根拠もない自負心やプライドに縛られて、なにも出来てはいないのではないか。
改めて、自分の現在を見つめなおす機会をもらいました。


このレビューを読んでいるあなたも、ぜひこの本の中からお気に入りのワンフレーズを見つけ出してほしい。
その一言が、たった一言が、あなたの人生を大きく変えるきっかけになるのかもしれないのだから。

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2012.05.18

「君の歳にあの偉人は何を語ったか」のレビュー

銅

『君の歳にあの偉人は何を語ったか』

偉人あっての名言、筆者あっての名言集

レビュアー:横浜県 AdeptAdept

名言集の楽しみ方は人それぞれである。
言葉から元気をもらうもよし、教養の糧とするもよし。
ちなみに私は、筆者の意図に注目するのが好きだ。
変な話だが、世の中には数多くの偉人がいて、無数の名言が生まれてきた。
その中から一定数を選んで本にまとめるのだから、そこには筆者の独自性が表れる。ソクラテスら哲人を多く引用する本もあれば、実業家のスピーチを中心に取り上げる本もあるだろう。それは名言集のコンセプトにも強く影響されるはずだ。
だから文字におこされている偉人の言葉だけではなく、行間に潜む筆者のメッセージを捉えることが面白いと私は考えている。

『君の歳にあの偉人は何を語ったか』の1冊は、そんな私にとって、これ以上なく興味深い名言集であった。
本作は名言が放たれた背景と文脈に重きがおかれている。そのため偉人の当時の年齢と共に紹介されている。かつてないテーマに基づいているといっていい。
試しに27歳の頁を開いてみる。「『それでは会社を辞めます。今日限り辞めます』と稲盛和夫は27歳で言った!」と書かれてある。
これは本作の筆者が特異的な構想を持っていることを示すいい例だ。
「会社を辞めます」だなんて、そこら辺のリーマンでも言ったことのある台詞だろう。本来なら名言でもなんでもない。
それでも筆者は、この一言を読者に伝えたいと考えたわけだ。それは名言の背景や文脈を考慮しているが故である。

ちなみに名言のうしろには、稲盛和夫についての解説や、名言にまつわるエピソードが紹介されている。
そして最後にこうある。「<27歳の稲盛和夫は僕らにきっとこういうだろう> 心の持ち方を変えたとき、それが君にとっての転機となる」
この項目なんて、私にとってはたまらない。
確かに27歳の稲盛和夫は同じようなことを考えていたかもしれない。でもそんな彼の思考を推測して、この言葉を用意したのは筆者だ。
「心の持ち方を変えたとき、それが君にとっての転機となる」と「僕ら」に伝えたいのは、稲盛和夫ではなく筆者なのだ。
これほどまでに筆者のメッセージが伝わってくる名言集など、かつてあったろうか。
ただここで1つ注意すべきなのは、筆者が目立ちすぎてはいけないということだ。あくまで名言を集めたものなのだから、クローズアップされるべきは偉人である。筆者は黒衣でなくてはならない。
その点、本作は偉人と名言を研究しつくした筆者により執筆されているから安心できる。名言の解説は構成が緻密に練られており、稲盛和夫が本当に「心の持ち方を変えたとき、それが君にとっての転機となる」と僕らに語ってくれるのではないか、そう思わされるようにできている。
筆者のメッセージは、偉人というフィルターを通して読者に伝えられる仕組みになっているのだ。

それでもやはり「結局は筆者が捏造した言葉ではないか」という意見は尽きないものだろう。
しかしながら、この最後の一言には重要な役割が備わっている。
実はこれ、名言を普遍化して噛み砕いたものとなっているのだ。
逆に言うと、最後の一言を特殊化したものが名言なわけだ。
一例を挙げると、「<19歳の南方熊楠は僕らにきっとこういうだろう> 阿呆め。好きなことせんでどうする。人生は短いんじゃ」とあり、その具体例が「淫猥のこと一切、禁ず」という南方熊楠の名言になっている。彼は大好きな研究に没頭するため、「淫猥」を禁じていた。名言の解説部には「それほどまでに追求したいものがあったという証であるし、それくらいでなければ自分の目指したい場所には届かないことを悟っていたのだろう」とある。それを噛み砕いたものが「好きなことせんでどうする」という一言なのだ。
名言から教訓を導きだし、それを一般化して読者に伝えようとする筆者の意図は、実にありがたいものといえる。

さて、もうご理解いただけたのではないかと思うが、名言集のあちこちには筆者の伝えたいことが隠されている。
もちろん名言の数々を味わうことが第一だけれど、さらに筆者からのメッセージを読みとることで、より深く、有意義で楽しい読み方ができるのだ。
『君の歳にあの偉人は何を語ったか』は、特にその傾向が強い。
偉人あっての名言であり、筆者あっての名言集。それを体現した1冊である。

ジセダイで『君の歳にあの偉人は何を語ったか』を読む

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2012.04.23


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