ここから本文です。

「ボカロ界のヒミツの事件譜」のレビュー

銅

ボカロ界のヒミツの事件譜

実在する虚構のボカロP

レビュアー:ラム AdeptAdept

1巻と2巻と3巻のイラストを別の方が担当すると知ったとき、ボカロ動画のようだなって思ったね。
動画ではないから、ボカロ小説なのだけど、このボカロ小説に、初音ミクは擬人化してない、ソフトとして登場するのみ。
そしてボカロPにまつわる事件がたくさん、だからボカロPもたくさん出てくるよ。ジェパンニPが実際に存在するから、他のPも存在する、そんな当たり前のことに気付けず、登場するボカロ動画を検索して見付けて動揺したよねー。
誰が描いても、どんなに違っても初音ミクは初音ミクなのに、ボカロ小説は小説家泉和良=ボカロPジェバンニPにしか書けないんじゃないかなって、そう思ったよ。

「実在する虚構のボカロP」の続きを読む

2014.06.18

「ボカロ界のヒミツの事件譜」のレビュー

金

ボカロ界のヒミツの事件譜 1

感謝

レビュアー:ジョッキ生 KnightKnight

ボカロの小説と聞いて、最近よくある楽曲の小説化かな?と思ったら、全然違ったわー。

これはボカロPが、ボカロ界隈のちょっとリアルな日常を、ミステリを交えながら、淡々と描いた小説です。過度な期待はしないでください。
そんな説明がぴったりかなー?
中身はリアル志向で結構地味。でも、このリアルな感じがボディーブローのように効いてくるんっすよ、奥さん!

話は大まかに3つ。コメントについて、動画投稿について、作詞家さんについて、です。おすすめは一個目。コメントについての話かなー。これはニコニコ動画を知ってる人なら誰の心にも響く、というか抉られる話。てか実際抉られたよー。現在も猛省中なくらい・・・。むしろだからこそコレを書いているといっても過言ではないのだ!

要約するとこんな感じ。
ボカロPであるジェバンニPは、ある日自分の最近お気に入りだったボカロPの動画に誹謗中傷のコメントが付き、その楽曲が削除されていることに気付く。さらに、そのボカロPが引退していたことも知り、そのキッカケは誹謗中傷のコメントにあったのではないかと、彼女で名探偵のエレGYちゃんと共に事の真相に迫っていく。

もうねー、誹謗中傷コメ→投稿者引退って流れはニコ動上で今までいくつあったんだろうってくらいありふれた話で、初っ端から暗い話だなーと思ったわけですよ。でもね、この話、もっと暗くなるんだ。結論をいうと、この誹謗中傷コメント、自演なんっすよね・・・。この悲しさったらない!自分の動画に、自分で中傷コメントを書いて、それに関して視聴者からコメントの一つも、ツイッターへのリプ一つない。そんな現実を知ったら創作者は、もう生きていけないっす・・・。この生生しさがほんときつかった。身につまされるとはこのことだね。作者ならではの視点という感じですげーなと感じてしまった。

だからね、思ったわけですよ。感謝しねーとなって。創作者は機械じゃないんだから、黙っていろいろ作ってくれるわけじゃないし、ましてや誹謗中傷を受ければ普通に傷つく人間なんだと。ちゃんとコミュニケーションを取っていかないと消えてしまう程、不確かな存在なんだと。この本を読んでてそんな当たり前のことに気付かされたなー。

そこで、前の文章に繋がるんっすけど、このレビューを書いてます。自分も何かしなきゃなー的な気分に後押しされて、この本読んでいろいろ感じた気持ちを、感じたままに書いてます。これが作者さんに届けばいいし、もっと別の人に届いてもいいし。とりあえず何か行動しようと思って書いてます。みんなレビュー書こうぜ!想いのたけを存分に撒き散らそうぜ!そしたらそれが創作者の力になるかもしれないぜ!そしたらみんなハッピーになれるぜ!

じゃあ、何か恥ずかしくなってきたのでここで終わるぜ!

「感謝」の続きを読む

2014.01.29

「ボカロ界のヒミツの事件譜」のレビュー

銅

ボカロ界のヒミツの事件譜1

名探偵エレGYちゃん様登場

レビュアー:鳩羽 WarriorWarrior

ボカロPでもあり、作家でもあり、ゲームクリエイターでもある主人公がボカロ界隈のちょっとした事件に遭遇し、それを彼女であるエレGYが意外な探偵能力を発揮して解決するという連作短編集。
動画につけられた中傷コメントの犯人を見つけ出そうとしたり、初心者らしいボカロPと訳の分からないやりとりをしたりと、どうでもいいと見過ごしてしまえばそれで終わりになるようなことを、エレGYがハイテンションに事件にして、解決してしまうといってもいい。
しかしこの、ボカロPとしてはジェバンニP、作家としては泉和良、ゲームクリエイターとしてはジスカルド、である主人公のなんとも言えない覇気のなさが一貫しているせいだろうか、オンライン上の事件をオフラインで追うというある種の面倒さや、複数の名前が飛び交うややこしさはない。
ペンネームやハンドルネーム、複数のアカウントを使い分けることも昨今では珍しくないけれど、すべてを把握しなくてもいいという、なんとも言えない心地よいかったるさが続く小説なのだ。
メールをしてもなかなか捕まらない人と連絡を取るのに、オンラインゲームだと確実だとか。混雑する人混みの中で見失った知人を捕まえるのに、ブログの書き込みが有効だったとか。
そんな馬鹿なと思いながらも、あるある~と思ってしまう展開が面白い。
そういえば、ミステリの愉しみの一つに、意外なミッシング・リンクを見つけだすことがある。連続殺人事件のように見えるのに、被害者同士に共通点や繋がりがない。あるいは犯人と被害者の関係が無いように見えるから、通り魔的な犯行としか思えない。けれど実はそこに両者を結ぶ糸が隠されていた! というような。
この小説には、ミッシング・リンクがありすぎる。ゲームの数、アカウントの数だけ交遊関係があり、そのフィールドが変わってしまうと途端に誰が誰やら分からなくなってしまうところまで含めて、ミッシング・リンクだらけだ。視点をオフラインだけに置く限り。
それは逆にいうと、もはや現代日本を舞台にした小説でミッシング・リンク探しが成立しないということかもしれない。
隠された事実、謎なんて本当にあるの?
気づいていなかったり、単に無視しているだけなのではなくて?
探偵役を務めるエレGY自らが、全然興味のなかったボカロを知っていくように、未知の部分に踏み込んでいく明るい好奇心は、そう言っているかのようだ。
何が未知の部分に当たるのかは、人それぞれ。ヒミツは多いほど、きっと人はチャーミングになれる。

「名探偵エレGYちゃん様登場」の続きを読む

2014.01.29


本文はここまでです。