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レビュアー「キノケン」のレビュー

銅

欲情の文法

前代未聞

レビュアー:キノケン Novice

いったい何なんだ、この本は。
もちろん、良い意味で言っています。
「官能小説」という、サブカル的文学の手法や作者の考えを柱に構成された本文の中に、官能小説作家ならではの深い人間考察がちりばめられて・・・。男性と女性の「快楽への追及」などへの考察がこれほどまでに赤裸々に語られた書物を、僕は読んだことがありませんでした。
「官能小説作家」が著者の新書ということが、この本のもっとも面白い部分だと思っています。
多くの人が、官能小説や、それを生み出す作家の本を読んだことがないように思います。自分とは、まったく違った世界、そこに生きる人。その世界の、その人たちの価値観に触れる機会は、普通に生きるだけではほとんどないと思います。
そんな機会を与えてくれる本著を、面白くないと言えるでしょうか。

歳をとって、自分の考えが凝り固まってしまう前に、少しでも多くの価値観を自分に取り込む。
ちょっとレジに持っていくのは恥ずかしいかもしれませんが(笑)、たったそれだけで自分の価値観に変化が生まれる可能性が生じる。


そんな面白い体験を、あなたもこの本でしてみたくはないですか?

ジセダイで『欲情の文法』を読む

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2012.05.18

銅

君の歳にあの偉人は何を語ったか

たった一言。

レビュアー:キノケン Novice

今まで多くの偉人の伝記や語録・自伝などを読む機会がありましたが、偉人の名言が「どういう場面で」「何歳のときに」言ったのかという新しいまとめ方が、自分の人生や経験、目標に照らし合わせて読むために非常に役立ちました。
偉人の輝かしい瞬間だけではなく、そこに至るまでの苦しい道程の中で言った一言にもスポットが当たっていることも、非常に面白く感じました。どんなに大きな名声を得た人でも、それに至るまでに結果以上の努力をしている。そんな当たり前かもしれないけれど、多くの人が忘れてしまっていることに気づかされました。
僕の一番のお気に入りは、20歳の野口英世の一言。のちにお札の絵にまでなった人が自分と同い年の時にはプライドを捨ててまでも行動を起こしている。この人に比べると、今の自分はどうなのか。根拠もない自負心やプライドに縛られて、なにも出来てはいないのではないか。
改めて、自分の現在を見つめなおす機会をもらいました。


このレビューを読んでいるあなたも、ぜひこの本の中からお気に入りのワンフレーズを見つけ出してほしい。
その一言が、たった一言が、あなたの人生を大きく変えるきっかけになるのかもしれないのだから。

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2012.05.18

銅

じじいリテラシー

思わず笑み・・・

レビュアー:キノケン Novice

星海社のHPを見ていて、前々から気になっていた作品でした。
まず、テーマの斬新さ。社会に出るうえでかならず接することになる「上司」という種族の人間を、大まかに分類したうえでその特徴や対処策を提言・・・。いや、ページをめくる度に「こんな人、いるいる」「なるほど、確かにこの接し方は効果がありそうだな・・・」と、非常に興味深く読むことが出来ました。
人間関係を構築する上での指南書の面もある一方で、日常の「あるあるネタ」本としてのエンターテイメント性も持ち合わせており、誰しもが楽しめる一冊だと思います。
生を受けて二十年しか経っていない僕が読んでも共感できるということは、今職場での人間関係に不安がある方々には、もっと効果的なのではないでしょうか。
「本当にあの上司は・・・」と宴の場で愚痴をこぼす前に、ぜひその飲み代でこの本を買ってほしい。

きっと、翌日から「嫌味な上司」が、「かわいらしいひとりの人間」になっていること間違いなし。

ジセダイで『じじいリテラシー』を読む

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2012.05.18

銅

マージナル・オペレーション

画面の向こう側に。

レビュアー:キノケン Novice

僕たちが普通に生活する中で、本物の「現実」に接する機会はどのくらいあるのだろうか。
テレビやパソコンに映る映像にリアリティーはなく、ただ「画面に映ってる映像」として捉えてしまっている自分がいる。
でも、その画面の向こう側には、そこに映し出される場所で生活をしている人々の「現実」がある。そんなことを気にかけて生活している人は、いったいどのくらいいるのだろうか。
主人公「アラタ」も、最初は画面を画面としかーーただ、ボタンを押すことは、ボタンを押すこととしかーー思わない人間だっただろう。
でも、傭兵稼業をこなしていくうちに、自分がモニターで見ていた点や、押していたボタンが段々に「現実」とリンクしていることを知っていく。
その過程でのアラタの描写が非常に生々しく、当たり前のことに気づかない現代人らしい葛藤が描かれているように思う。

ただのフィクション小説としてだって、非常に面白い。

でも、そんな物語が描き出している「現実」の問題についても僕たちは考えていいのかもしれない。

最前線で『マージナル・オペレーション』を読む

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2012.04.23


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