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読者レビュー

銅

メイ・デイ

勘違い

レビュアー:ジョッキ生 Knight

ラストでそうくるか、と唸ってしまった。いやーそうくるか。

母親に捨てられ、父親と共に過ごすも、食べ物もろくに与えられないような生活を送る少女の物語は、彼女がその状況から解放され、幸せになることで終わるだと思っていた。

でも、違った。

そもそも、彼女が抱く父親への想いを、俺を含め、作中の大人達みんな勘違いしていたんだな。

思い込みというか、よく聞く、虐待されてる子はそれでも疑いなく親元を離れない的な話が頭の中にあって、彼女も例外なくそれなんだろうと思っていたんだ。

だから後半、彼女が父親への想いを語るたび、その想い深さを知って、ちょっと恥ずかしくなっちゃった。表面的なことだけを見て、何を分かった気でいたんだろう。最後の少女の言葉を聞いて唖然としていたのは、作中の大人達だけじゃなく、俺も一緒だ。

この物語は、不幸な少女の話なんかじゃなかったんだなー。見事に騙されたぜ。

2014.05.20

さくら
全部の段落に「騙された!違った!」ってことが書かれてますわね。その勘違いはどんな気持ちにさせたのでしょうか? 私も読んで気になる作品だったので、勘違いのその先の感情をもっと具体的に聞いてみたいですわ.♪
さやわか
うむ。このレビューはなかなかトリッキーですな。姫もおっしゃっているように、ラストでほとんどネタバレギリギリのことを書いておきながら、本の核心には触れない。だから、未読の読者は余計にこの作品に何が書いてあるのか、知りたくなる。レビューというのは読者を作品に向かわせるものですから、この書き方はうまいと思います!ただし、このやり方には一長一短あるような気がしました。姫も述べられていますが、読者としてはジョッキ生さんがどんな感想を持ったかもっと知りたい気もする。でも詳しく書こうとすると、本の核心に触れてしまう。「もっとこの人の感想が知りたい」という読者の気持ちをいかにして満足させるかがけっこう難しいところでしょうな。ともあれ今回は「銅」にいたしました!

本文はここまでです。