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読者レビュー

銅

spica

私が「spica」を好きな理由

レビュアー:ラム Adept

 『spica』は、終わった後も続く恋の話だ。
恋人に浮気されて別れても、呼び出されたら嬉しくて応じてしまう。好きだから。
もう彼女でもなんでもないのに、恋人同士だった時とおなじような日々が続く。でも、同じでなんかない。キスもできない。もう、恋人じゃないんだから。
 浮気をされて別れても嫌いになれない、主人公・水井くんが言うところの「未練が爆発した状態」での苦しい恋心。読んでいるだけで私も苦しくなる。

 水井くんには親友がいる。
ヨリを戻した次の日にまた浮気相手と会っていた彼女に絶望して、水井くんは無意識に千野くんに電話をかける。
「死のうと思うんだ」
言うつもりのなかった言葉を全部吐き出して最後にさようならと言うと、千野くんは「待って」と叫んだ。
その声はとても大きくて、鋭くて、水井くんは電話を切るのを留まる。
千野くんは仕事場にいて、大きな声は目立っただろうに、抜け出すのも大変だろうになりふりかまわない。
命がかかっているのだから当然だろうか。でも自分には同じことができる気がしないのだ。

 浮気されても好きでい続けるなんて、死にたくなるほど好きだなんて、そんな気持ちも、好きでいるのが苦しくても、姿を見るだけで心に光が灯るなんて、あまり実感はないのだけど。

 『spica』には恋だけでない愛の感情が詰まっていて、私の中にない気持ちも想起させてくれる。
『spica』の「好き」を読んでいると、こんなに真摯な「愛」があるんだって、とても幸せになれるんだ。

2014.01.29

さくら
振り回される辛くてすっぱい恋愛に対する憧れの気持ちが伝わりましたわ。タイトルが“私が「Spica」を好きな理由”という事でしたので、中盤の水井くんの親友がレビューに登場したのでなにかエピソードがあるのかと期待しました。もっと聞きたかったですわ。
さやわか
お、たしかに! 千野くんが「待って」と叫んだというエピソードは、このレビューの全体に関わっているようでありながら、でも実はそうでもない、という形になっているようですね。わかりやすく言えばこのレビューは二つ目のブロックをとばして読んでも、意味が成り立ってしまう。つまり千野くんの話がレビュー全体と結びついていないわけですな。桜姫……するどい! ではこの千野くんのエピソードをどう全体と関連づけたらよいか? ということになりますが、2つほどパターンが考えられると思います。ひとつは、千野くんが叫んでしまうこと自体が「真摯な『愛』のひとつなのだ」という論旨にしてしまうこと。『spica』に「恋だけでない愛の感情が詰まって」いるのであれば、「親友との友愛」も描かれているという説明を入れればいいのだと思います。もうひとつは千野くんが思わず大声を出してしまうほどに、永井くんの愛情は深かったのだ、という説明を入れる方法。どちらでもかまわないのですが、どっちかにはしておいたほうが、千野くんのエピソードがレビュー全体と関連しているということがわかりやすくなると思いますぞ!ということで今回は「銅」といたします!

本文はここまでです。