ここから本文です。

読者レビュー

銅

スーサイドクラッチ

えっ? これで終わり?

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 広げた風呂敷は畳まれなかった。というのが読後の率直な感想だった。

 1作目「ストーンコールド」から伏線として、存在だけはほのめかされていた逃がし屋の息子・秋斗が3作目の主人公。
 彼の家に住みついたリストカッター少女・美尋。
 お馴染み魔術師スカンク・バッツが作る合法ドラッグの実験台である榊。
 3人に共通しているのは「もう人生終わってるけど、自分で終わらせる程でもない」という緩やかな絶望だ。
 秋斗は、中学時代の同級生で行方不明になっている沙都を、諦めていたにも拘らず探すことになる。
 スポーツマンだった秋斗が、スカンクのドラッグでボロボロになった体を、再度ドラッグで強靭に鍛え上げていく過程は、力強くも悲しい。同時にそうしなくてはならない焦りと後悔も痛いほど共感できてしまうのだが。
 秋斗、美尋、榊の3人が「終わり」に向かって進んでいるのを、自分の目的のため利用しているのがスカンクで、その様子は、もはや相手を使い潰しているようにすら見える。
 シリーズ3作目にしてまさかの伝奇小説。そして物語は中途半端なまま幕を下した。
 正直「えっ? これで終わり?」と何度も読み返してしまった。
 B級ゾンビ映画が予算切れで唐突に終わっても、過程を楽しめる人にお勧め。

 本音を言えば続編希望。

2014.01.29

さくら
スカンクシリーズもB級ゾンビ映画も好きな人、って…。て、手を挙げるしかないじゃないー!物語は終わっても、生き残った者たちの緩やかな絶望は続いていそうですわね。またどこかでスカンク様に逢える事を期待します…!
さやわか
読了後にどこか拭いきれない気持ちを記したレビューなのですが、それでもキャラクターに対する共感などがあってこそ結末を惜しいという気持ちが導き出されているのがわかります。「銅」とさせていただきました。レビューとしてさらに読み応えのあるものにするにはどうしたらいいでしょうね。まさにその「満足/不満」という一点にレビューの方向性がしぼられてしまっているのをもう少しゆるめてあげるのがいいかなと思いました。今の文章の構成だと、ざっくり言えば「結末に不満」→「いろいろ思った」→「でもともかく結末は不満」という、素朴な感想が前に出たものになっている。こういう書き方はレビューとしてわりとよくあるものなのですが、冒頭と結末の、一つのことにこだわった「不満」の部分の印象が強くて、中間の「いろいろ思った」部分が弱くなってしまいがちです。書き手は単に「満足/不満」という、○×みたいなことだけが言いたくて文章を書いているわけではないはずなので、こういう印象を与えるのはもったいない。「満足/不満」の部分を一ヵ所にまとめてあげるだけでも読んだ時の印象が変わると思いますよ。

本文はここまでです。