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読者レビュー

銅

エトランゼのすべて

夢の大学デビュー

レビュアー:AZ Adept

 私は、大学デビューに失敗した側の人間だ。入学以前は、楽しいサークルにやりがいのアルバイト、それに心ときめく恋人なんて夢をふくらませていたが、それらは夢のまま終わってしまった。「チャンスをくれ!」と神に祈ったこともあったが、神はそっぽを向いたままだった。チャンスさえあれば、あとは上手くやれるはずなのに……チャンスさえあれば……と当時は悔し涙を流したものだ。ただ、今になって思うと、本当にチャンスがあれば上手くいったのだろうか?
 『エトランゼのすべて』の主人公である針塚くんは、幸運にもチャンスを得た。少々怪しげではあるが、麗しの乙女や頼れる先輩がいるサークルに入ることができたのだ。私から見たら、それだけで勝利者である。しかし、彼はそれだけで楽しい大学生活を送れるわけではなかった。大学デビューの型通り、サークルに入ってバイトも決まったが、肝心の恋人ができない。それどころか、サークル内の女性には振り回されてばかりだ。このままではいけない気がするけれど、だが、居心地のいい現状で満足してしまってもいい気がする……。いったい、どうすれば……。彼の中には、もやもやとした闇が居座り続ける。
 針塚くんは、果たして偶然ではなく自分の手でチャンスを得ることができるのか。恋人はできるのか。大学入学前の人、現役大学生には特に読んでもらいたい一冊。

2013.06.11

ゆうき
大学生の方にもですが、キラキラなキャンパスライフに憧れている私のような人にもオススメの本かもしれませんね!私は、恐らくもう通うことはないと思うので…!(泣)
さやわか
自分の経験から『エトランゼのすべて』という作品の紹介につなげる書き方は素晴らしい。文章も整っている。「大学デビューに失敗した側の人間だ」という決然とした書き方も、ちょっと引き込まれるところがあります。AZさんがどの程度、文章を書いたことがある方かはわかりませんが、少なくともこの文章はかなり丁寧に書かれているのがわかります。もしできれば、そんなAZさんが『エトランゼのすべて』という作品を読むことで何を得たのか、どんな気持ちになったのかをレビューの後半として書いてみると、もっと引き込まれる内容になったと思います。特に最後の段落は、ちょっとしたキャッチフレーズで本を宣伝するように読めてしまって、もったいないように感じました。あえて本の内容に触れないことにしたのかもしれませんが、前半で自己紹介した書き手が、本をどう読んだのかということは読者にとって知りたいことだと思いますよ! 今回は「銅」とさせていただきました。

本文はここまでです。