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読者レビュー

銅

瀧本哲史『武器としての決断思考』

机上をめぐる決断思考

レビュアー:ユキムラ Adept

 月末が近づくにつれ、職場の私の机は表面積が小さくなってゆく。他の人と机のサイズが違うんちがうかと、邪推せずにはいられない程に。
これはとても由々しき問題なのである。
しなければならんと、とりあえず手近に置いた書類が、気づけば縦に伸びている。ゆわゆる、タケノコ状態というやつだ。
そこにはきっと、思考の停止がある。
やらなければいけないからと、まず側にキープして、そのキープした行為で満足してしまっているのだ。
深く考えていない。
『武器としての決断思考』は、まるでそんな私に向けて書かれたかのような本だった。

 ――机上を片すは是か非か。
脳内ディベートが行われる。

   メリット
内因性→散らかったままだと、大切な書類が見つからない!
重要性→そんなときに限って、急ぎの用事で必要だったりする。
解決性→書類を片してキッチリ整理しておけば、必要なときに必要なものが出せる!

   デメリット
発生過程→ただでさえ月末は時間が無い。片付けなんかしとるヒマがあったら別のことするわ!
深刻性→月末業務がホンマにいっぱいいっぱいなんやって!
固有性→どの辺りに何を置いたのかはそこそこ憶えてるから、(勝手に動かされない限りは)掘り起こせば探してるものは大抵見つかる。

 メリット・デメリットのみっつの条件に対して、論理的な反論を行う。要は、問題に対して至極正当なるツッコミを入れれば良いらしい。
ツッコミを入れたあとは、そのツッコミに関する考察だ。
 それぞれの事情に分解して順繰りに、ひとつの命題に対してじっくりと詰めてゆくのだ。
そうやっていくと、私はやがて回答を得られる。素晴らしい!


 ちなみに、職場の私の机は、未だ散らかったままである。
フローシートを参照にしての判定を経て、デメリットに重きが置かれ、現状維持っちゃってるワケですよ。
……か、勘違いしないでよね、べ別に片付けるのが面倒なだけとか、そんなんじゃないんだから!

ジセダイで『武器としての決断思考』を読む

2012.06.08

のぞみ
片づけるタイミングって、難しいですわよね! テスト期間中に、妙に片付けたくなったり、時間がない朝にお掃除したくなっちゃたり。どうしてなのかしら。
さやわか
あるある! 僕も「片付けないと仕事にならない!」とまで思って片付けてしまったりしますなー。
のぞみ
あ、この本を読んだら、私もどうしてそんなことになるのか、考察できるようになりますのね! 早速試してみなくっちゃ!
さやわか
姫! どうして部屋が片付けたくなるのかについて書かれた本ではないですぞ! ……まあ、というのはレビューを読んでもわかりますな。ユキムラさんはここで、自分の身近な例に則して、この本のロジックを解釈してみせている。そうすることで、読者に本の魅力を伝えているかっこうになっていますな。ただ、ラストは今の状態だと「机は結局片付いてない」ということは純粋に面白いオチというだけになっていますな。本のおかげで机が片付いたとか、あるいは本の言っていることがうまく応用できずに片付けられなかった、という結びになっていた方が、レビューとしてはよりわかりやすかったかもしれません。それがあると、この本のロジックを紹介するだけの立場から一歩踏み込んで内容を語ることができたかなと思います。ここでは「銅」にいたしましょう!

本文はここまでです。