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読者レビュー

銅

レッドドラゴン

五人五色

レビュアー:牛島,横浜県,zonby,ユキムラ,ラム

【虚淵玄as婁震戒】

 TRPGの鉄則として、まずプレイヤーは世界観を尊ばねばならない。その点はこのRPF「レッドドラゴン」でも同じだろう。
 その中でこの男・虚淵玄は惚れ惚れするほど自由に婁震戒というキャラクターを操り、ニル・カムイの中を暗躍する。
 熟練者ゆえのそのスタイルには有志から「虚淵さんのプレイはお手本には危険すぎない?」というツッコミが入るほどである。確かに表面だけを見ればそう取られかねないだろう。セッションとはこうも自由にルールの裏側を突いていくものなのか、と。

 だがしかし。私は虚淵玄は何も間違っていないと思っている。彼のプレイは八爪会の暗殺者・婁として、FMの世界観から一切逸脱していないからだ。そうした見えない配慮、ギリギリの見極めがあり、何より世界観に完全に入り込んでいるからこそ彼のプレイはあんなにもカッコイイのだ。

 あなたが真に虚淵玄のプレイに憧れるならば――その心意気こそを己のものとしなければならない。


【奈須きのこasスアロー・クラツヴァーリ】

奈須きのこは無能か? 天然か? クズか?
もちろん違う。
では、スアロー・クラツヴァーリは?
従者のメリルにお金も生活も任せっきり。発言も天然ボケ丸出しである。
自然体で演じる虚淵玄、キャラと共に悩み戸惑う紅玉いづきとしまどりる。他の作家がキャラと一体化しつつあるなか、奈須とスアローの両極端な性格は目立って見える。
実際に第7幕では「奈須きのこはともかく、スアローは」不穏な空気に「まったく気づかない」とある。彼らの異なりようと、スアローの能天気ぶりが窺える。
まったくの別人とさえ思えるド天然スアローであるが、これから奈須はどう即興で動かしていけるのか。
またそんなスアローの言動に、奈須らしさをいかにして盛り込めるのか。
他の作家には用意されないだろう腕の見せ所である。
先の長い物語だ。しっかりと注目したい。


【紅玉いづきasエィハ(withヴァル)】

『グロじゃないです! 気持ち悪いのが可愛いんです、ここは譲りません!』
この台詞はレッドドラゴン。第一夜において、エィハが自らの片割れであり、自分と繋がった異形の魔物・ヴァルについて、熱く語った一文である。
これに両手を上げて賛同し、そこまで言い切ったエィハに感涙したのが私である。
誰が何と言おうとヴァルは可愛い!
小さく華奢なエィハとは対照的に、巨大でグロテスクに描かれているヴァル。けれど、仕草はエィハと連動していて、ことりと首をかしげたり、ぺたりと耳を動かしたりする。目の包帯のところには、花もちゃんと描かれている。
ヴァルが異形であるだけ、その仕草が堪らなく可愛く感じられる。
物語を刻むメイン六名の動向は実に見ものだ。けれどそれに加え、メインプレイヤーのいない、けれど各人の決断に運命を左右されるヴァルのような存在も、私にとってはとても興味深い物語の要素なのである。


【しまどりるas忌ブキ】

 忌ブキの妹、気になっています。まだ幼いけれど、それでも れっきとした小さな『女』。
 忌ブキと同じ出生を抱えた彼女は、如何な人生を歩んでいるのか。そして、忌ブキと再会するのはいつか。一体どんな状況下でか。
 死人が還る島を司り続けたとされる皇統種末裔の双子の片翼。
 昏い感情に囚われて赤き竜と共に一行の障害に回ってもいいし、第四勢力の傀儡に成り下がっていても素敵。
 どんな形であるにしても――未登場妹の行方と、再会時の忌ブキの態度に期待しすぎて、萌えずにはいられないのです。


【成田良悟as禍グラバ・雷鳳・グラムシュタール】

禍グラバ・雷鳳・グラムシュタール。
独立自治権を持つという不死商人。出番はまだだが、不意に明かされる設定に飛び跳ねそうになる。
不死、といえば成田のデビュー作に通じるテーマだからだ。
錬金術師たちが悪魔を呼び出して造った不死の酒を巡る群像劇「バッカーノ!」
レッドドラゴンでは、五行躰という機械の体を宝術で取り替えて生きながらえるらしい。
狂った竜を殺すというテーマを負ったレッドドラゴンに、不死はどう関わってくるのか。
三つの国の名を持つと自称しながら、どこにも属さない禍グラバ・雷鳳・グラムシュタール。それはとっても成田らしく、どこへでも羽ばたいていけそうだ。


【三田誠asフィクションマスター】

三田先生が随所に仕込む「物語の真っ当さ」がとても好きです。だからこそFMを担当されると聞いて、とても期待しました。これからも読者をわくわくさせてください!from★牛島
作家であれゲームデザイナーであれ「三田誠は三田誠だ」と、そう作品から感じさせてほしいです。from★横浜県
尚一層きわどく!更に複雑な選択肢で! プレイヤーをFMの掌でコロコロ転がし、良い意味でお互いに裏切られて欲しいです。from★zonby
三田節、毎回毎回 各プレーヤーさん達へと同じぐらいの期待を向けてます。from★ユキムラ
FMはいろいろなキャラを演じているので、大変そうだけど一番楽しいのではないかと疑っております。from★ラム

最前線で『レッドドラゴン』を読む

2012.04.23

のぞみ
ん~!なんだか、圧倒されましたわ! レッドドラゴンに、ひっかけて、騎士団の常連さん5人で、書いてきたんですのね! そんな繋がりを目の当たりにすると、心が温まりますわ!
さやわか
なるほど、5人の合作レビューということですな。これは「レッドドラゴン」という作品に対する、読者からのアンサーとして非常に熱い! 熱すぎる! と思います。敬意を表します。しかし最後だけ五人の名前が書いてありますが、キャラクターについて触れた他の文章は誰が書いているのでしょう。これだけの人数が参加して書いているということは、このレビューにとって一つのアピール、一つの意思表示、一つの売りだと思います。であれば本文の中にも、もう少しコラボレーションしたからこその"何か"が伺えるとよかったと思います。具体的にはわかりませんが、それぞれのキャラクターについての文章を書いた人が違うのなら、それを記すだけでも違ったのでしょうかね? いずれにしても5人の書き手が競合しているという感じを出せたらよかったなと思います。でも、とにかく「レッドドラゴン」という作品の破格さはもちろん、それを伝えようというレビュアーの熱意は伝わりました。ということで「銅」とします!!

本文はここまでです。