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読者レビュー

銅

ドッペルゲンガーの恋人

純粋に愛

レビュアー:ticheese Warrior

 恋人『木原慧』は死んだ。だから「木原慧」は生まれた。世界で唯一、オリジナルの記憶を受け継いだクローンとして。周りの人たちは死んだ『木原慧』が帰ってきたと喜ぶけれど、そんなことはありえない。ふたりは違うではないか。彼女の体はオリジナルより年若い。彼女とオリジナルには一卵性の双子程度の誤差がある。そして彼女は『木原慧』の死を経験していない。どれも理由はクローンだから。たとえふたりが99.999%同じだと言われても、残り0.001%の溝が埋められない。
 遺伝子レベルで同じ人間との溝が埋まらないのに、「木原慧」と主人公『土師悠司』との溝はもっと埋まらない。ただ違う人間だっていうことだけじゃない。クローン研究者の彼とではクローン、その家族、将来の展望と、あらゆるものに対する価値感が違う。特に「木原慧」が1番悩んでいることで価値観が違うのが手に負えない。

 人が解り合うって本当に難しい。家族とだって恋人とだってオリジナルとだって難しい。でも難しいからこそ、『土師悠司』と「木原慧」が解り合おうとする努力は美しい。幾多の問題が待ち受けているだろう。見苦しい所も見せるだろう。結果傷つくことも傷つけるもあるだろう。それでも愛を胸に立ち向かうその姿は、私の目に美しく写る。『ドッペルゲンガーの恋人』は美しいラブストーリー。解ってもらえるか不安だけど、私の胸にも愛があるからきっと大丈夫。

2011.09.08

のぞみ
ticheeseさんはドッペルゲンガー会ってみたいですか? 私は、ちょっぴり会ってみたいですわ~。もう一人の自分ってだけでも、わくわくしますもの!
さやわか
ドッペルゲンガーって、会うと死ぬっていう伝説もありますけどね……。
のぞみ
…………。
さやわか
……………………。
のぞみ
……短く、すっきりとまとまっているように感じましたわぁ~。
さやわか
う、うむむ、そうですな~。意識して短く、読みやすくまとめるようにしていて、よい心がけだと思います。それだけに難しくもあるのですが、果敢に挑むことは評価されるべきです。今回、二段落目の三行目から三段落目の冒頭にかけてはすごく文意が取りにくかったです。僕が書いたわけではないのに、そのことがとてもくやしいですね。だからあえて逐語的に言うと、例えば「クローン研究者の彼とでは」とありますが、言葉を端折っているため「彼」と比較されているのがすぐ前に出てきた「木原慧」だということが、伝わりにくくなっています。「クローンである彼女と研究者の彼とでは」と書くだけでわかることなのですが。しかも次の行であえて「「木原慧」が1番悩んでいること」と「木原慧」に特殊な書き方を選んだために、さらに文章の前後関係がわかりにくくなっています。それから次の段落、「家族とだって恋人とだってオリジナルとだって難しい」とありますが、「恋人」と「オリジナル」を区別して書くことの理由は、この文章の中からだと伝わりにくいので、読者としてはやや混乱します。おわかりでしょうか? ひとまず「銅」とさせていただきたいと思います!

本文はここまでです。