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読者レビュー

銅

iKILL

「悪」というモノ

レビュアー:ひかけ Novice

個人的にこの話はキライだ。というか女の子がひどい目にあう描写があるとほんと読みたくなくなる。
Fate/Zero読んでるときもソラウとか葵とか桜とかの描写見てたら目を背けたくなったし、星海社関連じゃないけど「るろうに剣心」に出てくる巴とかもきつかった。
ようするに女性にはひどい目にあってもらいたくない。もちろん容姿とか性格とか家柄とかそんなものは抜きにして。
正直好感度上げようとしすぎみたいに思われるかもしれないなこれ。いや、でも本当に心から思ってる。

このお話の主人公は「殺人」を仕事とする小田切明。そしてターゲットがHN(ハンドルネーム)瑠璃という「女性」である。依頼を受けた小田切明は瑠璃を殺さねばならない。そして瑠璃を殺した。
そして私は最後まで読み終えひとりごとを呟いた。

「小田切明ってこれ…言峰綺礼っぽくね?」

そう、Fateでおなじみの彼だ。言峰綺礼だ。なんとなくだけどそう思わせることのできる部分はある。
例えば計画の周到さと遊び心だ。綺礼は自身の高い身体能力と共に知性も兼ね備えている。Fate/Zeroでもそれは至るところで見受けられる。高い身体能力は言うまでもないが、様々な局面で柔軟な対応をし、切嗣の存在を見抜いている彼を知性がないと否定することはできない。そんな彼が計画の周到さとともに遊び心を魅せた場面がある。雁夜と時臣と葵のみつどもえのシーンだ。

綺礼は時臣を殺した後、とある計画を思いついた。それはとても綿密で遊び心という衝動に駆られたものだった。
死んだ時臣と時臣に恨みを抱いていた雁夜とを会わせ、その場に時臣の妻である葵を置くという計画。しかも自分の興味のためだけに。恨んでいた相手がいない虚無感を抱く雁夜、そこに葵がやってくる。息をしていない夫である時臣を見、夫を殺した犯人を雁夜だと決めつける葵。そして葵は雁夜は好きな人などいたことがないんだと雁夜に告げる。葵を好いてきた雁夜にとってこれほどまでにないダメージだっただろう。そして雁夜は葵の首を絞める。葵が自分の知っている葵ではないと絶望して。姿形は似ているけれど葵ではないものとして。
そんな一連の出来事によって起こる嬌声を聞きながらワインを飲む綺礼。

小田切明も似たようなことをしている。綿密な計画によって瑠璃を殺した小田切。そして瑠璃を殺してからの一連の出来事は遊び心によるものだ。
死んだ瑠璃の映像を流し、その上で小田切は瑠璃として瑠璃の小さなコミュニティとの会話を楽しんでいる。そして死んだ瑠璃の真似をして楽しんだりもしている。最後は涙を流しながら笑ったとも言っている。

Fateを読んでいた時と同じような悪寒が私を襲った。「小田切明ってこれ…言峰綺礼っぽくね?((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」みたいな状態だったのだ実は。
Fateでは凛の父である時臣の形見だと言って綺礼が凛にナイフを手渡すシーンとかもある。そのナイフは綺礼が時臣を殺したものであるが。それを告げられず、父の形見として受け取り涙する凛。そしてほくそ笑む綺礼。

「悪」として存在するiKILLの小田切とFateの言峰。この2者の視点を知った今、どうにかして読み解こうと必死である。何かないか、何かないか…と。最前線にあるiKILLのあらすじにはこうある。


他人の欲望を糧に暮らすネットアイドル。復讐のために死体を切り刻む女子中学生。忌まわしき過去を百円硬貨で清算するビジネスマン。
ウェブに渦巻く無数の“悪意”を源にして静かに稼働を始める処刑システム「i-KILL」ネット……。
謎の管理人・小田切明の終わりなき “仕事”の果てに待ち受けるのは、“救い”か、それとも……。あなたにかつてない戦慄を呼び覚ます「iKILL」シリーズ第一弾!!

私はまだiKILLを今出ている分すべて読んだわけではない。だからこそ、これから「謎の管理人・小田切明の終わりなき “仕事”の果てに待ち受けるのは、“救い”か、それとも……。」というところを読み解かねばならないならない。そんな義務を自分に課しているという近況報告でした。

2011.09.08

のぞみ
「Fate/Zero」へのたとえが多いように感じました~。「Fate/Zero」はアニメ化も決まり有名な作品だとは思いますが、たまに、分からない方もいらっしゃるかもしれませんわね!(>д<)
さやわか
おおっ! 姫の厳しい一言! レア!
のぞみ
でも、説明もきちんとしているので、大丈夫なのかもしれませんが……どうなのでしょうか、団長。
さやわか
うむ、僕も別作品と比較するのが悪いことだとは思いません。というか、むしろレビュアー騎士団はなぜか他作品との比較が変に少ない。それはそれで健全でないです。ただ姫の言うとおり、別作品の名を出すことでわかりにくくなってはいけない。別作品について語るなら、それについての説明も万全に引き受けるつもりでないとまずいでしょうな。「よく知られている別作品の名を出せば当然読み手はそれを知っている」という考え方は御法度です。しかし、ひかけさんがよいのは自分に完全には扱いきれないことを書こうという意志があることですね。それがすごくいいと思います。レビュータイトルに表れていますよね。ひかけさんは「悪」という大きな問題を扱おうとしているんです。どんな文章でも、扱える範囲で書くよりも、手に余ること、自分でも何だか分かっていないことを書こうとすることは絶対に必要なことですし、それに挑む時、文章は不思議な美しさを帯びます。ただし! 扱いきれないことを扱っているということだけに頼ってしまうと、ただの背伸びになってしまうのも事実ですな。やはり、面倒でもそれはひかけさん自身の言葉を作っていく作業でなくてはなりません。よかったら地道にがんばってみてください。ということで「銅」とします!

本文はここまでです。