ここから本文です。

読者レビュー

鉄

空の境界 the Garden of sinners

時差式コミカライズ

レビュアー:ラム Adept

小説がコミカライズする場合、アニメ化と同時期になることが多い。
しかし「空の境界」はまず、コミックをすっ飛ばして先に全7章+αのアニメ映画化して有名になった。
それでも、わざわざ映画館にまで足を運んだのは、ほとんどが原作ファンだろう。

ではコミックはどうか? 原作ファンはもちろん、小説に苦手意識のある人でもコミックなら読みやすいに違いない。
新伝綺と銘打たれたこの作品は、作者である奈須きのこさんの独特な文章表現や世界観はもちろん、いつも和服で過ごしている両儀式と黒で統一された黒桐幹也ほか、つまりキャラクター小説としても魅力的である。
視覚的に愛でるのに何の問題があろうか。


とっても主観で言えば式の背中が予想外にエロかった。


それだけで読む価値はあるとちょっと思う。
Web環境があれば、誰でも読める、映画館で見た式と幹也を思い起こさせる空気感。
2章にはWebコミックならではのギミックもあるが、その空気感の再現力にきっと映画も気になりだすだろう。
これぞメディアミックス。
さぁて、ブルーレイで全章鑑賞しようか、原点回帰でまた小説を読もうか?

最初に「空の境界」が世に出たのは1998年。
2011年現在もたくさんの人が関わって新しいものが作られる、それだけ愛されている「空の境界」を、あなたも好きになってみませんか?

2011.03.01

のぞみ
自分がその作品の魅力に思うところを、遠回しな言い方せずに、率直に書いてらっしゃるのが、素敵だと思います!
さやわか
ですな! 「とっても主観で言えば式の背中が予想外にエロかった」というところが好きで! この文章のそこが気に入って! このレビューを「鉄」とします!
のぞみ
あはははは! そんな理由で、いいんですか!
さやわか
いいのです! ラムさんはかなりいろんなことに配慮して、この作品をプッシュしたのだと思うのですが、レビューとしてはやや話が断片的で、読者が内容を補完しながら読まなければならない部分が多い。しかし、「とっても主観で言えば式の背中が予想外にエロかった」という部分だけは、ラムさんのストレートな愛情があります。逆に言えば、このレビューはそこを掘り下げるだけでもいい。式の背中がいかに予想外にエロかったかを書くだけでも、レビューというのは成り立ちます。そんなのでいいのかよ! と思うかもしれませんが、それを愛情深く、論理的に、発展的に書けたら、レビューとしてだけでなく、この世のあらゆる文章の中で最強のものだと僕は思います。
のぞみ
「あなたも好きになってみませんか?」と誘っているのは、何だか面白いなって思います。
さやわか
こういう勧誘するような書き方は、バリエーションはいろいろありますが僕もやります。レビューとしても「読者に作品を薦める」という意図が明確に出て潔いのですが、しかし、やや野暮ったくなる場合もあるので注意が必要なところです。かといって、どういう時に使えばいいかという指標がはっきりあるわけでもないですけれど。レビューを書く媒体に合わせるのが一番いいんですが……そうですなあ、レビュアー騎士団各位におかれましては、好みのタイミングで使うくらいでいいんじゃないかな、と思いますな!

本文はここまでです。